第120話 レジェンドレアの魔剣
【 グラストンベリィ - 内部 】
ボロい教会だから、内部も廃墟と化しているのかと思った。
「なんだここ……!!」
とても神聖とは思えない……地獄のような場所だった。
この感じ、どこかで……?
俺はチラッとメサイアを見る。
――すると、メサイアは吐き気を催しかけ、苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。
「メサイア!」「姉様!」「メサイアさん!」「女神様!?」
みんなメサイアを心配した。
……やっぱりなのか。お前がそんな真っ青なツラになるだなんて、思い当たる節はひとつしかない。
ここは――
――死神の世界だ――
世界終焉の未来があるとするなら、この場所がまさにそうだろう。
すべては廃墟と化し、なにもない。
そんな異空間に浮く聖剣。
パロ曰く、ここに眠るは『聖剣・エクスカイザー』とかいうパチモンくさいヤツ。
――いや、ありゃ……『魔剣』だぞ。
エクスカリバーとして祀られていたものは、『エクスカイザー』で、魔剣だったのだ。
マジか……。
マジなのかよ……。
そりゃあ……ないぜ。
大ハズレを引いちまった。
こんなイカれた世界に繋がっているかと思ったら、聖剣ではなく魔剣。
このアヴァロンは、いや、グラストンベリィはどうなってやがる!!
「おい、パロ。どう見ても、ありゃ聖剣なんかじゃないだろ!」
「み、みたいだにゃ……。知らなかったんだにゃ! そ、そんな疑いの眼差しで見ないでほしいにゃ……本当にゃぁぁ!」
あの慌てよう。
ふむ、パロはアイテム情報に疎いとか言っていたし、本当だろう。
「じゃあ、リース。あの暗黒星雲に浮かぶレジェンドレア級のウェポンは『魔剣・エクスカイザー』のようだが……なにか心当たりは?」
「あ……あんな異物がアヴァロンにあっただなんて……。あたしにも分かりません。どういうことなんでしょう……」
リースでも分からないか。
となると、元・死神のヤツなら少しは分かるかな。いやでも、メサイアは、以前に何も知らんと断言していた。それに、今のメサイアはすっかり意気消沈していやがる。
ありゃ、ダメだなぁ。
「兄様、あの……」
「なんだ、フォル。そんなモジモジして、漏れそうなのか?」
「ち、違います! 漏らすなら兄様と二人きりの時……って、そうじゃありません。その、『警告』が出ていますよ」
「警告ぅ?」
なんの警告だ? と、俺は視界を注視する。
すると――
未知のボス発見
<< Enemy spotted:Unknown Boss >>
なんだか懐かしい、赤い文字がド派手に表示された。
えーっと、これは……うん。そのアレだね。
厄介な『レイドボス』だね……アレ?
俺は二度見した。
『未知のボス』?
「未知のボス!? なんだそりゃ!?」
ズッシーーーーーーーーーンと空から落ちてきた巨大な生物。
その衝撃は強烈で、土埃が視界を妨げていた。
なんつー…!
次第にその正体が露わになった。
スピリットドラグーン【Lv.Unknown】
<< All Status Unknown >>
「おいおい。名前以外、全部分からんのか……」
しっかし、なんという大きさ。迫力……。
あれは、この異空間を支配する怪物ということなのか!? ……あれは強い、俺の本能がそう告げていた。まずいぞ……!
くるぞ!!
「――――――」
……しかし、スピリットドラグーンは……
ポテッ……と、マヌケな音と共に、ハリボテのごとく倒れた。
「……へ?」
おい、あの恐ろしすぎる迫力はなんだったんだよ!?
つーか、あれじゃ適当に作って失敗した、ただのオブジェクトじゃないか。どうなってやがる!?
――で。
【Congratulations!!】
とまぁ、リザルトが盛大に異空間に響き渡った。
どうやら、俺たちは戦わずして勝利したらしい。
ふぅ~疲れた。
「……ふむ、フォルちょっと」
俺は、フォルのツヤツヤのモチモチの頬に手を伸ばし、優しく引っ張った。
「ひゃーーー!! にゃふぃすんふぇふみぁっ!?」
バタバタと暴れるフォル。
夢ではなさそうだな。
「なんだ、現実か」
「兄様ひどいです……! どうせなら、おっぱいを、そのイヤらしい手つきで揉んで戴けたら良かったのに!」
「なんで強調してんだよヘンタイ」
ヘンタイ聖女はさておき――この状況だ。
メサイアは、相変わらず顔面蒼白だし、今にも嘔吐しそうな勢いだ。
――まあいい、あの『魔剣・エクスカイザー』を戴くだけだ。
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