第108話 裸の槍騎士
『ルルイエ』と変わり果てたエルフの郷・アヴァロン。なぜ、どうしてこの場所がこんな酷い仕打ちを受けねばならなかったのか。
俺は、ヤツ等に力ずくでも問う必要があった。
とにかく。
「メサイア、パロ。緊急のパーティを結成する。メサイアは大至急で余っているポイント全部をステとスキルに振っておけ。パロは装備を見せてくれ」
今、悲しんでいる暇はない。
仲間を強化し、備えておく必要がある。
こんな状況だ。いつ襲われてもおかしくない。そもそも、こんな惨いことをする連中だ。まともじゃないのは確かだ。
軍に見つかれば、どうなるか分かったもんじゃない。
なら、今は強化を図り、迎え撃てるようにしておくべきだろう。
「ぼくの装備にゃ」
「……ふむふむ。って、なにも装備してないじゃないか! 武器もないとか丸裸も同然じゃないか……」
「ま、丸裸……そう言われると何だか恥ずかしいにゃ……。一応、円卓の服は着てるけどにゃ」
「その服はまともなのか?」
「う……。ぼくはアイテムの効果とかの情報には疎くて。……自信はないのにゃ」
まあいい、見てみるか。
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服:【+4ドゥムノニア】 DEF:100
効果:
①精錬値 + 1 毎に 完全回避 + 5。
②闇属性攻撃を半減させ、
ダメージの3%をHPとして吸収する。
③通常・特殊破壊不可。
破壊された場合、自動修復する。
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ほう。案外まともな服ではあったようだ。
しかし、これだけか……心もとないな。
「よし、分かった。これとこれ、これもやる。あとこれも」
「こここ、こんなにゃに!? すごい量だにゃー…。タダでもらっていいのにゃ?」
+15薄幸少女のヘアバンド、水属性のイヤリング、身代わりのペンダント、+4ゲッコーグローブ[抵抗]、普通のスパッツ(リースの私物)、+19追放されし精霊王のシューズ――と、渡せるだけパロに譲渡した。
ちなみに、武器はとっておきの――
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武器:【+7ヘラヴィーサ[絶]】 ATK:1700
種類:片手槍
効果:
①敵は攻撃を受けると1分間、
HPを絶対に回復できなくなる。
(全ての回復が対象)
②任意の発動で、精錬値を-1にする代わりに
3分間、ATKとDEFを1000%上昇させる。
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俺のお気に入りである武器を貸し与えた。
これはさすがに、あげられないけど。
「わわわ~…。なんだか暖かいにゃ~。ずっと下がスースーしていたから、助かるにゃ~」
「武器の感想じゃなくて、そっちかよ!! パロ、お前……マジで服だけだったのか。ノーパンだったのか。穿いていなかったのか」
「じょ、冗談にゃ……! 恥ずかしいので弄らないで欲しいにゃぁ……」
あのモジモジした様子だと、かなり疑わしいものだが。実は、穿いてなかったのだろうな……。そう思うとちょっとだけ鼻血が……。
「終わったわ~!!」
おっと、メサイアの方はステとスキル振りが終わったようだな。どれ。
「見せてみろ」
「ダメ」
「ダメってお前……いつも拒絶するな。なにを隠してやがる!」
「あのね、サトル。これはね、乙女の秘密なのよ」
「リースみたいなこと言ってんじゃねー! 俺とお前の仲じゃないか。いい加減にすべてを曝け出せ。いいな」
……が、メサイアは俺のことをジト~…とした目で、なーんか引いていらっしゃった。……おいおい、そんな引いてくれるなよ。
「イヤったらイヤ。見たらぶん殴る」
「ぶん殴るって……あのなぁ」
ここまで頑なだと、いよいよ見てみたくなるものだ。
見せてもらおうか、女神専用スキルとやらを!
俺は、油断していたメサイアの左腕を強引に掴み――
「イヤぁっ! ヘンタイ!! ヘンタイよ! 世紀の大ヘンタイよ!」
「ヘンタイ呼ばわりはよせ! 暴れるな! 足を踏みつけるな! うわっ、バカ、俺の顔を引っ掻くな! 噛みつくなああああああああ!!」
すげぇ暴れようだ。
だがもう捕らえた。あとは、ここをこうして――と。
……は?
なんだこの膨大な量のスキルツリーは……なんて数だ。多い……多すぎる。俺のスキルの数十倍はあるだろう。無茶苦茶すぎる。しかも、どれも超強力なヤツばかりだ。チートといっても過言ではない。そんな異次元レベルのようなモノがズラリ。ビッシリ、ガッチリと。
「やめて! これ以上見ないでよ……バカサトル!!」
グーで顔面を殴らた。
「ごほぉぉぉぉぉぉおおオ!!」
その衝撃で、俺はメサイアのどこかのスキルを適当に押してしまったらしく――
なんか発動してしまった。
「ふぇ?」「え?」「!?」
急に視界が断ち切られ、虹色の光が俺たちを包み……
次第に身体が引き伸ばされていく。
まるでスパゲッティのように……人体が大きく伸びていく。
グニャグニャになってしまえば、そこには――。
◆
『――――覚えていますか、サトル殿』
なんだこのやたら神々しい声は。
つーか、そんな、愛・覚えていますか的な聞き方しないでくれ。
……って、あん?
……ああ、神王か。
久しぶりだな……って、なんで今、神王の声が。
『聖剣を探すのです。いいですね、聖剣を………すみません、大好きなカップヌ~ドルが出来上がったので、ここまでです! それでは、グッドラック」
そこで神との精神的通信は途絶えた……。
なんだったの今の!?
◆
「――――ハッ」
意識を取り戻すと、誰かに膝枕されていた。
目が段々とハッキリしてくると、そいつは……
「…………リース?」
「サトルさん、あたしも貴方が大好きですよ♪」
で――ぎゅっとされて、天国になった。
……ふぅむ、よく見れば、此処は何処だ?
まるで見覚えのない、不思議な空間。家っぽいところだった。
「なあ、リース。ここって何処なんだ?」
「? いきなり、どうしたんですか? あ、もしかして寝ぼけていたんですかぁ。ここはあたしの家ですよ~。
ほら、1時間前に一緒に移動してきたじゃないですか~。この『ユニリング』で」
そう、リースは例のリングを見せた。
……確かに。
アレは、リースの所持品。
俺は……あの時、聖地・コンスタンティンに置き去りにされることなく、エルフの郷・アヴァロンにやって来たってことなのか……?
「なあ、リース。ここは『アヴァロン』なのか?」
「そうですよ~。ここは『アヴァロン』で、あたしの家で間違いありません。皆も一緒ですよ。今は各自の自由時間じゃないですか。だから、約束でこうしてまったりしているんじゃないですか~♪」
また、ぎゅっとされた。……し、幸せすぎる。
リースのこの匂い、ぬくもりは本物だ。
そっか。
今までのは『悪い夢』だったに違いない。
そうだよな、エルフの郷が滅ぶわけ…………
滅ぶ?
……とても、嫌な予感がした。
まさか……。
そういうことなのか……救世主。
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