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第二話 世界が一転してしまっていた

「今日のゲストは今最もホットな天才少年、チャールズ・ヒュー・モンローです!!」


 黒人男性の司会者、フィル・ヤングは真っ白なスーツにハート型の眼鏡をかけていた。呼び髭を生やして、奇怪な手の動きをしている。

 僕はアメリカでは人気のあるテレビ番組のゲストとして呼ばれたのだ。

 あまり人前には出たくないが、どうしても出てくれと頼まれたのだ。

 僕は椅子に座りながら、ヤングのインタビューに答えていた。


「どうもチャールズ・モンローです」


「はい、こんにちは。今日はあなたが発明した金属細胞メタルセルの話を聞きます」


「答えられる限りなら答えます」


「では直球で聞きます。あなたは金属細胞で実験の為にマウスを大量虐殺しました。その点はどう思いますか?」


 僕は大学の研究室で金属細胞の研究を続けている。実験用のマウスは何万匹と殺してきた。そのため動物愛護団体が僕に抗議してきたのだ。僕の自宅に頭のおかしい男が散弾銃を持って脅しに来たこともあった。警備員が射殺したら、その警備会社がやり玉に挙げられたけどね。もっとも狂人の相手はアメリカでは日常茶飯事だから契約に問題はない。


「僕は悪戯に殺していません。金属細胞のさらなる発展の為に必要な犠牲だと思っています」


「そこまで犠牲を払って人間は長生きすべきだと思いますか? 私は面白おかしく生きることが出来れば満足だと考えています」


「それは人それぞれです。アメリカは個人主義なので文句を言われる筋合いはありません。あなたは政府に毎日パイを投げるよう命令されても、従うことはないでしょう?」


「確かにその通りですが、全米はおろか、世界ではあなたのことをノストラゴメスの大予言に出てくる恐怖の大王本人と同一人物と呼ばれておりますが、どう思いますか?」


 ノストラゴメスの大予言は割と有名だ。ヨーロッパ出身の予言者で有名なのが『一九九九年、七の月。西の大陸に住む恐怖の大王は世界を瞬く間に炎を包むだろう。しかし、それは終わりではない。南に住む箱舟の住民が百年後に現れ、世界に秩序をもたらす始まりの日でもあるのだ』というものがある。


「今は景気が良くないですからね。景気が良い僕を攻撃して憂さを晴らしているだけでしょう。僕に暴力を振るえば容赦なく弁護士を呼びますけどね」


「だけど今地中海沖には箱舟計画が実行されようとしています。まさに南に住む箱舟の住民の事ですよね。あなたは世界を炎で燃やし尽くしたいと思いますか?」


 箱舟計画とは地中海沖にあるアルカ島を拠点とした一大プロジェクトだ。世界各国の無神論者の十八歳の若者を集め、百年間そこに住まわせるそうだ。僕も参加したかったが15歳だから無理である。もっとも血が混ざりまくった人種はアメリカ以外受け付けないだろう。純血を愛する国が忌み嫌うからだ。百年後にはアルカ王国と名乗り、アルカ人を自称するであろう。


「思いませんね。だって世界を動かすのは貧乏人ですよ。彼等がいなければ社会は成り立ちません。そんな人たちを皆殺しにするなんてアメリカの大統領だってやりませんよ。まあ南米の独裁国家なら庶民の命をゴミクズ扱いするでしょうけどね」


「そんなあなたも悪名高き独裁者たちと同じですね。さらに言えば第二次世界大戦中に人体実験を行ったマッドドクターと大差ありませんよ」


「それは言えていますね」


 僕はあっはっはと笑い飛ばした。アメリカ人は割とストレートな物言いが多い。杖技平蔵つえぎ へいぞうさんもあまりに露骨な言い方に驚いていたっけ。


 ☆


「チャールズ・モンローは悪魔の使いだ!!」


 次の日、アメリカ各地では僕の抗議デモが広がっていた。テレビの影響もあるがオルディネ教の影響も強かった。神が作り出したものに細工をした罪を訴えたのである。

 アメリカでは中絶を認めず、中絶手術をした医者を殺しに来る人間がいるくらいだ。

 もっともデモの参加者は金で雇われている者がほとんどで、別に僕を嫌っているわけではない。ただテレビの前で人数合わせをして抗議するように見せかけているだけだ。


 この動きはアメリカ全土だけでなくヨーロッパ全体でも広がった。オルディネ教の教皇も僕の行動を問題視していたそうだ。ただし低迷したオルディネ教の布教のための宣伝として扱っている。


 僕はますます人間嫌いになった。ただし平蔵さんを除いては。稼いだ金で僕は中華帝国に自分専用の別荘を作っている。完成したらアメリカから逃げ出す予定だ。ところがマスコミはこの別荘で世界各国の女を集め、ハーレムを作るんだと新聞や雑誌で盛り上げていた。失礼な奴らだな。金目当ての女なんか誰が抱くものか。


 その一方で不法入国者の支援は続けている。金を与えるだけではなく、仕事を与え、額を与えることが重要だと思っている。代表のカルロスさんは文字の読み書きを覚えたので、幹部になった。おかげで給料が上がったので喜んでいた。


 平蔵さんの研究によれば神応石スピリットストーンにはその人の人生の記憶をすべて宿している。その一方で神応石の記憶を消し、別の人間の記憶を移植できると推測していた。

 僕は製造したスーパーコンピュータで実験していた。神応石の宿した記憶を文章化できたが、個人的意見が強く、何を言いたいのかわからない。


 ビッグヘッドに使う神応石は数百粒の神応石を固めて使うという。そして食べるべきものを指定し、いかに水源を求め、排出された涙鉱石ティアミネラルをどこに集めるかを書き込んでいるそうだ。


 現在ビッグヘッドは中華帝国にあるラジシャン砂漠にある核廃棄施設で活動しているそうだ。実際は使用済み核燃料をドラム缶のまま砂漠に放置しているだけである。元は南方にあるロン一族の土地だったらしいが、伐採しすぎために砂漠になったそうだ。


「現在は十数体しかいないが、徐々に核廃棄物を浄化している。もっとも運ばれる方が何倍もあるがね。だがあと3年もあれば追いつくだろう。さすがは儂の孫だ」


 孫がいるのか。平蔵さんの孫はさぞかし有能なのだろう。

 ちなみにここは大学にある研究室の一つだ。ここには僕が作ったスーパーコンピュータが所狭しに並べられている。さらに部屋の真ん中には椅子があり、天井には理髪店にあるパーマをかける機械のような物が設置されていた。僕は平蔵さんを呼び、とある実験の為に来てもらったのだ。


「……有能なのは間違いない。しかしあまりにも天才すぎるのだ。おかげで学校では友達は一人もいなかった。仲が良い知人は毬林まりばやしくんだけだよ。今は同じ会社に勤めている。部署は違うがね」


「理解者が一人でもいるだけで違うと思いますね」


「ああ。もう一人ひ孫がいるが、この子も天才すぎて両親からも見捨てられたのだよ。二人も友達がいるから安心だけどね」


 僕の場合は平蔵さんくらいだな。あとそらとぶ! オムスビマンの作者である神五郎じん ごろうという人とも知り合いだそうだ。戦争世代ではないけど、ひもじい思いをしたらしい。勧善懲悪でエロが流行った時代では不遇の扱いだったそうだ。それでお腹を空かせた子供を助けるオムスビマンを思いついたらしい。

 今は兄弟と共に出版社を設立し、暗殺者が活躍する漫画を描いているという。母親は息子の職業を蛇蝎の如く嫌い、最後まで認めずに息を引き取ったそうだ。


「さて実験を始めよう。白紙にした神応石に僕の今の記憶を継承するんだ」


 これは僕の記憶を記録し後日別の機械に移植するというものだ。実はミルズの人口AIには神応石を集めて、一枚のプレートに加工した。それをチップに搭載したのである。

 その記憶は平蔵さんの物を使っていた。おかげでミルズの性能は格段に上がっている。


 僕は一つの神応石をセットする。そして椅子に座り先ほどの天井に設置された機械を頭に被せた。

 頭がびりびりとしたが、後遺症はない。そして画面に表示されたのは僕の記憶だ。大成功である。


「こいつを毎年集めてみよう。ミルズのような人工AIを沢山作るんだ」


 僕には夢があった。素晴らしい人工AIを作り、ゴミ溜めのような発展途上国に売りつけるんだ。そして有能な人間に金属細胞を移植しその力を長引かせる。

 断っておくが僕は共産主義ではない。富を分配するつもりはないが、あまりに貧しい国に対しては別だ。


 そう、僕は世界平和を願っているんだ。自分だけが幸せでは意味がない。誰もが平穏な暮らしができる世界を作り上げたいんだ。

 今は宗教や政治が腐っており、思うように改革はうまくいかない。世界が滅んでしまえばいいとさえ思う。ノストラゴメスの大予言みたいに世界を炎で燃やし尽くしたい気持ちはわかる。


 僕は平和を築くんだ。僕はヒーローになるんだ。僕は……。


 ☆


 なんだか身体が重い。まるでママのお腹の中に眠っていたような気分だ。頭もどんよりとして固い。意識がぼんやりしている。

 僕はゆっくりと目を開けた。光が眩しくてもう一度目を閉じる。

 僕は再び目を開けると、そこは機械が置かれた部屋だった。僕自身体中がべとべとに濡れている。指がろくに動かない。辺りを見回すと特殊なガラスケースが見えた。どうやら僕はここで眠っていたようである。


 僕はじっくりと手を見た。人間の手だがどこか毛深い。黒い毛が手の甲を覆っており、爪も鋭かった。


「やあチャーリー。ようやく目が覚めたようだね」


 そこに声がした。懐かしい声だ。その声の主はミルズだ。だが銀色の球体の身体に猫耳が付き、宙を浮かんでいる。僕の知っているミルズの姿ではなかった。


「……もしかして平蔵さん? 僕は遠い未来から来たのか?」


 僕はそう判断した。ミルズの容姿が変化したのは未来だと思ったからだ。


「その通りだ。理解が早くて助かる。今のお前さんは53年後の未来から来たのだよ」


 そう言って僕の前に鏡を見せた。僕の顔はシャムネコの顔になっていたのだ。

 フィル・ヤングはアメリカの死去した司会者のフィル・バレンタインと、ジミー・ヤングを合わせた名前です。二人とも白人です。コロナウィルスのワクチンを打たないで亡くなりました。

 司会者のやり取りは光テレビで外国のテレビ番組を参考にしました。割と露骨な言い方をしますね。

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