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第25話 ヒュー・キッド誕生秘話

 ミルズの説明によればモンローが18歳の頃、モンロー自身が核戦争を起こしたという。モンローは核シェルターを作り、世界中から百八人の女性を集め、ハーレムを作った。ところが女たちがわがままにふるまい、好き勝手にやっていた。

 モンローはそれに腹を立て、生まれた自分の子供たちをまとめて毒ガスで殺害したのである。

 

 モンローは黙って聞いていたが、一度も反論はしなかった。彼自身、できるなら美女を集めハーレムを作りたいと思っていた。そして自分を馬鹿にする人間たちを核兵器でまとめて殺したいという妄想を抱いていた。十五歳の自分はあずかり知らぬところだが、自分自身に責任がないとは言えない。


「ところで僕を人造人間メタニカル アニマルに改造したのはあなたですか?」


 モンローの疑問はもっともだ。核シェルターを作ったモンローが十五歳当時の自分を人造人間にする理由がない。

 やるとすればミルズしかいないのだ。


「簡単だよ。私の独断だ。私が核戦争が起こる前にこっそりと独自の研究所を作らせたのだよ。君の他にも別な人造人間を作らせてもらった」


 ミルズはあっけらかんと答えた。モンローは日本の絵本、そらとぶおむすびまんのようなヒーローに作り替えようとした。だがさすがにおもすびのような身体は無理なので、モンローの好きな猫を基準に改造したのである。


「僕以外の人を人造人間にしたのか? いったい誰を……?」


「私の知り合いがほとんどだよ。孫の網厚あみあつにその先輩の毬林まりばやし親子など色々とね。ちょうど彼らが中華帝国にいたから、遺体を集めるのは簡単だったよ。だが毬林くんはちょっと問題があった。彼は核戦争で世界が滅ぶと思い込み、人を殺して回ったのだよ。今の彼はとある地域では蛇蝎の如く嫌われているね」


 なんでも毬林まりばやし満村みつむらという男は、中国にあるロン一族を襲撃した。世界はすでに終わっているし、龍一族は亜人となっていた。ちなみに大人はおらず、子供だけの集まりだったという。

 獣の身に堕ちてまで長生きはしたくないだろうと、毬林満村は勝手に思い込み、盗んだ猟銃で人を殺しまくった。無事な人間を仲間に引き入れ、食料を奪って回ったのだ。


 その男は最後、ロン英雄インシオンというノヤギの亜人を巻き込み、自爆したという。その際毬林の首が残ったので、ミルズが回収したそうだ。


「今、その男がいますよ。ほら、来てください」


 ミルズが声をかけると、そこに犬が一匹現れた。大型犬に人間の首がついている。モンローは見たことはないが、彼が毬林なのだろう。


「……なぜ、俺を蘇らせた?」


 しゃがれた声を出した。まだ目覚めてまもないのだろう。


「君は私の孫、網厚あみあつの先輩だろ? その上君の性格は理想的なのだ。聞いているよ、両親が酒酔い運転で亡くしても復讐を望まないことをね。当時のマスコミは涙一つ流さない冷血漢と攻撃していたっけ。あれは腹立たしかったな」


 ミルズの身体が震えている。機械の身体になっても怒りを覚えているのだろう。

 だが毬林は反論しなかった。


「……涙は流した。復讐を望まないのは、無意味だからだ。両親を殺した相手を殺したところで、死人は生き返らない。それに運転手は早く出所したはいいが、仕事はクビになり、家族や友人に見捨てられたという。報いは返ってきているんだ」


 そもそも日本人は人殺しを行ったものは、全員死刑にしろという風潮が強い。時代劇の見すぎか人を殺した人間が長生きすることに腹を立てるのだ。それも事件とは無関係な人間がほとんどである。

 普通は死ねだと殺せだのいう人間は嫌われる。しかし殺人犯なら何をしても許されると思い込むのだ。

 実際は前科者に対して嫌がらせや暴行をすれば、そいつはタダの犯罪者で警察に捕まる。しかしマスコミは報道しない。日本は犯罪者の天国である方が受けるからだ。


「当時のマスコミは被害者側しか報道したがらないからな。被害者のみじめな姿を見て、視聴者は自分が幸せだと実感する。大切な何かを失ったものは一生笑うな、悲しみを引きずって生きろと強要する。当時の君は様々な嫌がらせを受けていたね。奥さんが妊娠した時も暴漢が君の幸せに腹を立てて殺そうとした」


 モンローはその話を聞くと不快な顔になった。同時に毬林に対して共感を得た。

 自分も同じだ。天才的な頭脳を嫉妬され、両親には見捨てられ、マスコミは好き勝手に報道していた。

 他人に自分の理想を押し付け、それを演じないと罵詈雑言を垂れ流す。自分が核兵器を操作して世界を滅ぼした気持ちがよくわかる。


「もっとも奥さんは相手を返り打ちにしたそうだね。大した力を使わず、相手の力を利用して暴漢たちを半殺しにしたそうじゃないか。あれを知ったときは胸がすかっとしたね」


 ミルズは笑っていた。どうやら相当痛快な気分らしい。

 なんでも毬林の妻である魅羅は妊婦でありながら、暴漢たちを自滅させたという。学生時代は元不良で毎日喧嘩を繰り返していたという。毬林と結婚してからは料理やピアノなどを習いおしとやかになったが、喧嘩の腕は衰えるどころか、ますます磨かれていたそうだ。


「ちなみに君の首に犬の身体を移植したのはわけがある。君は日本では悪名が高いからね。それに中国の龍一族は君を悪魔ウモとして嫌っている。今日からズルタンと名乗り給え。童話に出てくる犬の名前だよ。君の妻と娘さんも蘇っている。早く親子の感動の再開が待ち遠しいだろう」


「違う。そうじゃないんだ。なぜ魅羅ミラ茉莉花まりかを復活させたんだ!!」


 毬林が怒鳴った。その表情は怒りに震えていた。だが妻と娘を復活させたことに怒りを覚えているようだ。


「俺が犬の姿になるのはいいんだ。生前俺は人を殺して回った。自分勝手な考えで人を苦しみから解放すると詭弁でな。俺が畜生道に堕ちるのは当然のことだ。だが妻と娘は関係ない。なんであの二人を死なせたままにしてやらなかったんだ!!」


 なんと毬林は妻子が生き返ったのに、それを抗議したのだ。モンローはそれを見て驚いた。モンローにとって家族は自分の血を吸うダニでしかない。だが他の人は違うと思っていた。


「……いや、俺の責任だな。俺の罪が魅羅と茉莉花を地獄へ足を引っ張ったのだ」


 毬林は自分がしたことを後悔していた。自分が犬になったことより、妻と娘が同じ地獄へ道連れにしたことを後悔しているのだ。


「そうそう、厄介な話がある。数いるモンローの一人が、暴走しているのだ。龍一族のロン超人チャオレンという男に強く影響してな。息子の金剛ジンガンを苦しめるために旅立ったのだ」


 なんでもそのモンローはハーレムの女を全滅させた後、自分の身体を人造人間に変えた。その後、15歳のモンローが目覚める前に出ていったそうだ。


「他にも19歳のモンローも出ていった。こちらはズルタンのクローンと合体させたから、あまり悪さはしないと思うがね」


「19歳のモンローだって? さらに俺のクローンと合体させただと? いったい何のつもりで作ったんだ?」


「神応石の研究のためさ。モンローは世界中では悪名が高い。特にヨーロッパやアメリカは最悪だ。彼を悪役にすることで世界が平和になると本気で信じているのだよ。実際に二人を左右半分にしたら神応石の影響を少ししか受けていないのだ」


 ミルズの説明に毬林は呆れていた。自分の身体が好き勝手に使われている。しかし彼自身はしょうがないと諦めていた。これは罰なのだ。自分が正義と思い上がり、人を殺しまくった罪が自分に返ってきたのだ。彼は武士の様な考えを持っていた。


「一番厄介なのはモンロー、モンロースニークと名付けようか。こいつはあまりにも卑劣なモンローだ。いやモンロー自身の心のタガが外れたモンローと呼べよう。こちらはディーヴァが対応してくれている。奴は卑劣にも金剛の恋人を人質に取った。さらに自分はある場所で待っていると言いながら、嘘をついてその場所にいないのだ。ディーヴァは金剛たちと合流し、戻らせる役目があるのだよ」


「ディーヴァとは誰だ?」


「君の娘だよ。褐色肌の嫁の身体を利用させてもらった。本人は自分だけ個性のない身体だと不満を抱いていたよ」


 毬林は落胆した。その一方で娘らしいと思っていた。彼女は学校ではやたらと目立っており、教師やクラスメイトに嫌われていた。仲がいいのは杖技平蔵のひ孫ともう一人の少女がいた。

 彼女らはただいじめに屈することはなく、法的にやり返すことが多かった。そのおかげで教師や保護者たちが社会的に抹殺されることがあった。ついたあだ名が三魔女だ。


「ところで僕の名前は何にしよう。モンローの名前を名乗るわけにはいかないよね」


「その通りだ。私としては君のミドルネームであるヒューを使おうと思う。今日から君はヒュー・キッドだ」


 ミルズが命名した。モンローは否定せず、むしろその名前が気に入ったようである。


「だが僕は正義の味方になるつもりはない。おむすびまんのようにお腹を空かせる人を救うつもりだ」


 ヒュー・キッドはそう誓うのであった。


 そもそもディーヴァの設定は当初ただの歌姫で不死になった設定だった。

 それが毬林の娘になったのは、レザレクションヒストリーで思いついたからだ。

 作中に出てきた名前は本編で明かす予定です。

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