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第16話 再生の始まり

「なんということだ。俺が国を離れている間に、そんなことが起きていたのか」


 パンダの亜人である龍虎鳳ロン フーフォンは嘆いていた。世界の海を駆け巡っている間に、幼少時から親しんでいた兄の息子、超人チャオレンが暴走した挙句、その命を孫の金剛ジンガンによって絶たれたのだ。

 

 さらに王大頭も死んで木になったという。龍京ロンキンの真ん中に巨大な木が生えていたので、それが彼の亡骸なのだ。もっとも王大頭は生き返っている。五〇年前に見た小柄な大きさになっていた。ただし顔立ちは整っている。


 しかし王大頭と話をして衝撃を受けた。虎鳳たちのことは知っているが、まるで他人事のように淡々と述べていたのだ。これにより知識はあるが経験は焼失したという事実を叩きつけられた形となった。


「だが俺たちは生きている。生きている俺たちが新しい未来を切り開くんだ!!」


 龍京は暗い雰囲気に包まれていた。それはそうだろう。国の代表である超人が国民を危機に陥れ、国の守護神である王大頭が生き返ったとはいえ殺されたのだ。

 そんな中金剛は自ら声を張り上げ、国民を叱咤したのである。


「ほう、金剛。お前はあまり政治には興味がないと思っていた。しばらく見ない間に見違えたな」


「興味がないのは本当だよ。けど負けっぱなしは胸糞悪い。俺が新しい龍京を作り上げ、もっともっと豊かにして見せるぜ!!」


「はは、本当にたくましくなったな。あの世で哥哥グァグァも喜んでいるだろう」


 虎鳳は感心していた。しかしどこから手を付ければいいのかわからない。これは自分達でじっくり考えるべきだと思っていた。


「あたしとしては箱舟の子孫たちと接触を図るのをお勧めするわ」


 声を上げたのは褐色肌の少女であった。チャールズ・モンローの金属細胞メタルセルによって生み出された超自然的な存在である。


「箱舟の子孫だって? なんでそんな奴らと関わる必要があるんだよ?」


 金剛が訪ねた。


「彼らはキノコ戦争が起きる前に強固なドームで外界の接触を断ったのよ。彼らは失われた文明の知識を持っている。彼らが五十年後に効率よく科学を広める手助けをするべきなのよ」


「手助けといってもな。そもそもなんで五十年後なんだよ?」


「箱舟は一度閉じると百年は開かないの。今年でようやく半分を越したわ。でも現状はとても危険よ、だって文化レベルが中世ヨーロッパ並みになっているから。あなたたちの仕事はまず箱舟があるスペインまでいくことね。そして人間や亜人の集落を掌握するの。将来箱舟の子孫たちを迎え入れることで円満に彼らの技術力を使えるわけね」


 少女は答えた。確かに今の龍京は技術力が低下している。しかし大頭ダトウの力があり、生活には困らない。わざわざ遠いところまで行って面倒ごとをする意味がわからない。


「……あなたはこう言いたいのね? 箱舟の子孫たちが何も知らない状況で外に出たらろくなことが起きらない。なら最初から友好的に接して波風を立たないようにしたいわけね」


 人間の娘である女巫ニュウが口をはさんだ。少女はこくんと首を縦に振る。

 現状では世界中の文明はかなり低下していた。龍京は大頭を利用したガスや水道を利用できるが、少女の言う通り中世ヨーロッパ風の低さになっている。

 そこで箱舟の子孫たちが外に出るとする。彼らは文明という武器を利用し、頭が鈍くなった人類の生き残りを家畜扱いするかもしれない。亜人はさらにひどい扱いをしてもおかしくない。


 だからこそ箱舟の子孫たちが変貌した世界を対応できるように親切にしてあげるべきなのだ。

 将来、彼らが造船技術を復活させ、手にした半世紀前の武器を使い、植民地を増やす可能性もある。それを阻止するために箱舟の子孫と手を組む必要があるのだ。

 女巫は学がない。娼婦として琴を鳴らしたり、三味線を弾いたりすることはできる。

 だが彼女には知恵がある。知識はなくとも疑問をそのままにせず、答えを導き出す力があるのだ。


「まあ、それはゆっくり考えよう。ところでお前さんの名前はなんだ? いつまでも名無しでは格好がつかないだろう」


 虎鳳が言った。確かにいつまでも少女では味気ない。彼女は首をひねり、こう答えた。


「あたしの名前はディーヴァと呼んでちょうだい。こう見ても歌を歌うのが大好きなの」


「歌姫ねぇ。まあ、それでいいや」


 こうしてディーヴァの名前が決まったのであった。


 ☆


 それから龍京は大きく動いた。まず龍京の復旧が優先される。

 その指揮に立ったのは宰相でアカギツネの亜人である小夫シャオフだ。彼は骨身を削って働いた。

 そして将軍でキンシコウの亜人である胖虎パンフも軍を率いて混乱を収めた。龍京に対して敵愾心を抱く村は数多くあり、超人の死後、反乱を起こすことが多かった。

 

 小夫は七年後に病死した。跡を継いだのは自分の血縁ではなく、胖虎の孫である賢人シェンレンである。さすがに小夫の孫娘と婚約して、一族の婿入りをしたが。

 胖虎は二年後に流れ矢が頭に刺さって死んだ。享年六五歳。生涯現役であった。

 

 金剛は大臣にされた。本人は嫌がったが代表が必要なので仕方なくその座に就いた。補佐は祖母でユキヒョウの亜人である雪花シュエファが支えてくれた。十年後に亡くなるまで孫たちを見守り続け、最期を看取られたのである。ようやく英雄インシオンの元に行けると、つぶやきながら生涯を閉じた。

 女巫と結婚し簡素ながら式も上げる。人間と結婚することで、人間たちの感情を和らげる政策だ。


 虎鳳は相変わらず海賊として活躍している。金華豚の亜人である大雄ダシオンを部下に世界各国を荒らしていた。中華帝国を鳳凰フォングァン大国と称したのも彼だ。

 虎鳳は雪花の妹であり、白い家猫の亜人である月花ユエファと結婚していた。現在は子供が生まれ、孫もいる。

 虎鳳は七十歳で敵の矢に胸を貫かれ、海に落ちてそのまま消えた。

 大雄が後を継ぎ、その三年後に病死する。月花が孫の後見人となり、海賊王国ハイダオ ワングオとして発展させたのだ。そして八一歳で孫に二代目を託し、自ら海の藻屑となった。彼女の死に場所は硬い寝床ではなく、母なる海であった。


 さてディーヴァは六頭の大頭を生み出していた。

 全員スイカのような大きさでかわいい手足がくっついている。

 名前はプリンスヘッドにパラディンヘッド、トリトンヘッドで体が白い。

 黒い方はブラックヘッドにソーサラーヘッド、マーメイドヘッドと名付けていた。


 彼らは将来人間たちを守り、人間に害する存在として成長させるのだという。

 白い方は人間たちの生活を守る。逆に黒い方は傲慢な人間たちを懲らしめるために活動させるというのだ。


「いったい何の意味があるんだ?」


 一度金剛が尋ねてみた。ディーヴァはふふんと笑う。


「対立させることに意味があるのよ。人間というのは善と悪のどちらかを決めないとお尻がむずがゆくなるでしょう? まずプリンスヘッドは成長するとキングヘッドになり、陰ながら人間を支援するの。主に知恵を提供する側ね。ブラックヘッドはウィッチヘッドに成長して傲慢な人間たちを言葉巧みに操り破滅させるの。

 パラディンヘッドはミカエルヘッドに成長すると、他から外来生物や涙鉱石を拾って人間を支えるわ。ソーサラーヘッドは傲慢な人間の村に病原菌をばらまく役目があるの。

 最後にトリトンヘッドはネプチューンヘッドに成長して、世界中の海をキレイにする役目があるわ。まあ一人では無理だから大頭船ビッグヘッドシップを利用するけどね。マーメイドヘッドはサイレスヘッドに成長し、海賊王国や大頭船以外の船を沈めるわ。こちらは自らの口で汚染された海を浄化するほど巨大化するけどね」


 ディーヴァの説明に金剛は頭が混乱してきた。なんでわざわざ面倒なことをするのか理解できない。

 そこにキレイな着物を着て王妃となった女巫が口を挟んだ。


「大頭に二面性を持たせるためね。キングヘッドは人間たちの味方だけど、ウィッチヘッドは人間の敵と区別をつける。そうすることで人々は多種多様な大頭に頭を悩ませるというわけね」


 女巫が答えるとディーヴァは満足したように微笑んだ。


「その通りよ。あと王大頭も名前を変えた方がいいわね。これから先は世界を舞台にするのだから。英語でエビルヘッドと名付けましょう」


「エビルだって? 王大頭を邪悪な存在にしたいのか?」


 さすがの金剛も王大頭を邪悪扱いされてはたまらない。

 それをディーヴァが否定する。


「確かに邪悪な存在になるでしょうね。でも歴史では名を遺すのは悪辣な人間ばかりよ。それにエビルには意味があるの。エビルのスペルはE・V・I・L。これを逆さにするとL・I・V・Eになるわ。これはライブ、生き残るという意味よ。例え彼が今回みたいに殺されても生き返る理由になるわ。死んで名前が逆さになるのだから」


 金剛はさっぱりわけがわからない。女巫は納得したようだ。


「それと私は独立するわ。ハワイに行って自分の城を作るのよ。そして海賊たちが交流する国を作るわ。名前も決めてあるの。海賊島バッドガイ アイランドよ」


 ディーヴァはそう決めるのだった。


 あと賢人は龍京からスペインまでの道をシルクロードと称して開通する計画を立てたのだ。

 シルクロードとは中央アジアを横断する古代の東西交通路の称である。

中華帝国から、タリム盆地周縁のオアシス都市を経由し、パミールを経て西アジアとを結ぶ道で、モンゴル帝国が支配するまで東西の文物の交流に大きな役割を果たしたと言われている。

シルクが中国からこの道を通って西方に運ばれたところから、ドイツの地理学者リヒトホーフェンが命名したのだ。


 王大頭改めエビルヘッドが新たにビッグヘッドを生み出し、工事を進めている。

 そして小夫の孫でカピバラの亜人である主角ズゥジャオは一足先にスペインへ渡った。

 そこでネズミの亜人たちをまとめ、亜人全書を作らせることにしたのだ。

 箱舟の子孫たちに読ませるためである。もちろん亜人たちは反発したが主角の力に勝てなかった。


 亜人たちは同じ種類の亜人同士で村を作っていた。よそ者を忌み嫌う傾向が人間以上に強かったという。

 主角は村を襲撃し、村長の子供以外はよその亜人を嫁がせること、そして死んだ村人は特使解剖することを命じたのである。

 主角は崩壊したスペインに秩序を取り戻すため、オルデン大陸と名付けた。旅立つ前に祖父からメモをもらったのである。

 実際はスペインはイベリア半島であり、別に大陸とつけろと言われたわけではないが、主角は勘違いしてオルデン大陸と命名してしまったのであった。


 第2部完。


今回で第2部は終了です。実のところテレビアニメジョジョの奇妙な冒険を意識していました。

 一部が10話で、2部が16話でまとめていたのです。

 ですが尺が足りず、どうしても駆け足になってしまいました。

 第3部はスターダストクルセイダースを意識していますが、たっぷり48話で執筆する予定です。


 オルデンサーガの設定も最初から決めていたわけではなく、完全な後付けです。

 ですがその後付けをするのが面白いのですよ。

 捜索は作者でも何が起きるかわからない。それがたまらなく楽しいのです。

 では読者の皆様、ありがとうございました。

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