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第二十二話 機械女帝登場

「ここがフェニックスか……。随分変わり果てたな」


 フェニックスは米国アリゾナ州の州都で高原保養都市だった。かつては電子工業が盛んで、人口行政区100万以上いたという。

アリゾナ州は米国南西部の州だ。山と砂漠が多く、銅などを産出していた。グランドキャニオン国立公園がある。メキシコ領を経て、1912年、48番目の州となったのだ。


 だが今は見渡す限り緑のじゅうたんで出来ていた。みんな5メートル間隔で生えてある。

 遠くでは巨大な湖があった。フェニックスに湖なんかなかったはずだ。

 恐らくここもキノコの炎と毒によって人の住まない地になったのだろう。それをビッグヘッドのおかげで緑の大地に生まれ変わったのだ。そして湖はキノコの冬が終わったときに生まれた被爆湖アトミック レイクだな。


「ふん、こんなところにモンローエクストラとやらがいるのか……」


 僕の横にはターバンを被ったふとっちょのランプの精がいる。アラディンだ。本名は龍虎鳳ロン フーフォンで18歳の頃の人格を持っている。オリジナルは数年前に死亡したそうだ。


「そもそも中国人の俺がなんで中東の格好をせねばならんのだ? しかもアメリカなんかに来る羽目になるとは……」


「まあまあ、この国はオリジナルのあなたと縁の深いのです。縁があっても仲がいいかは別ですけどね」


 アラディンは中東を中心に活動していた。

 特にネフド砂漠があったところを改良している。サウジアラビア北部にあった砂漠だ。ベドウィンの遊牧地でもあった。

 ベドウィンはアラビア半島を中心に中近東・北アフリカの砂漠や半砂漠に住むアラブ系遊牧民だ。ラクダを中心として羊・山羊を飼育したそうである。

 現在、彼等の子孫はラクダや羊、山羊の亜人となり、肥大化したヤギウマやヤギウシを飼育していた。

 こちらも被爆湖を中心にビッグヘッドの緑地化に成功している。かつての砂漠だった地は被爆湖の恵みで森が増えたのだ。もちろん生き物は少ないので外来生物を持ち込んでいるが。


「こちらも緑は多いが、遠くを見ればかなり伐採されているな。人間は森がなければ生きていけないが、森だけでも生活は出来ん」


 アラディンがこぼした。僕もこの身体にならなければコンピュータのない生活など耐えられないだろう。


『ヒュー・キッド、アラディン。ここから東に進んでください。そこがモンローエクストラの住処で―――』


 シンドバードの報告が途中で切れた。何者かに襲撃されたのだろうか。

 僕はアラディンを抱きかかえて空を飛び。彼は空を飛べないからだ。


 ☆


 数分後、僕たちは開けた場所に降り立った。そこは大きな牧場であった。アメリカでは大規模な牧場が多いが、ここの牧場は異質であった。


 何しろ策の中には人間が家畜として飼われていたのだ。牛のように鼻輪を付けられ草を食う肥大化した男女に、金髪に覆われた羊のような人間、さらに馬のように肥大化した人間が、文字通り四つん這いになっていたのだ。


 どいつもこいつも理性がなさそうである。亜人たちを本物の動物に変えているというが、どこにいるのだろうか。


「あっはーん!! あんたらかい、このデカガラスのマイフレンドは!!」


 雷のような中年女性の声がした。それは3メートルほどのでっぷり太ったおばさんだ。

 だが赤い逆立った髪に吊り上がった眼、豚のような鼻にクジラのように大きな口。

 肌の色は灰色で人間に見えない。しかも胸は乳牛のように大きく、4つもある。セレブのように肩を剥き出しにした赤いドレスを纏っていた。

 さらに下半身はむっちり太った足が6本も生えていた。あきらかに人間ではない。


 その右手にはぐったりしたシンドバードの足を握っていた。逆さに吊るされている。


「なんだ君は!!」


「このおばさん、明らかに変だな!!」


 僕とアラディンが叫ぶ。すると小母さんはにやりと笑った。


「そうです、わたすが変なおばさんこと、機械女帝マシン エンプレスなのです!!」


 こいつが機械女帝なのか!! 機械帝国の支配者なのになんでここにいるのだろうか。


「あっはっは! あんたたちは帝国で一番偉いわたすがここにいることを疑問視しておるね? 答えは簡単、わたすは端末の一人にすぎないのですから!!」


「端末だって?」


「そうです!! 本体は帝国にあるけど、わたすのような戦闘に特化した端末を各地に配置しておるのですよ!!」


 なるほどね。本体は帝国にいて、遠隔操作した端末を派遣しているわけか。


「あなたはディーヴァこと、毬林茉莉花まりばやし まりかの同級生ですよね。僕たちは彼女と同じ人造人間メタニカル アニマルなのです。僕らが戦う理由はないと思いますが」


「関係あるかい、そんなもの!!」


 機械女帝は斬って捨てた。


「確かに茉莉花、ディーヴァとは同級生だがね。わたすはこちらの牧場主、モンローエクストラと契約しているのさ!! それにわたすの友達はディーヴァであってお前らではない!! 義理人情でこのわたすが動くと思っとるんかい、どうなんだい!!」


 こいつは驚いた。日本人は全体主義で義理人情に厚いと思っていた。だが彼女はアメリカ人特有の個人主義者である。そもそもキノコ戦争で死なずに生き残ったのだ。僕らと同じ精神構造であることは予測できたはずである。


「わたすはエクストラと契約を結んでおるんです!! よってこの敵対するあんたたちは排除すべき敵なのです!! なので死ね!!」


 すると機械女帝は口を大きく開けると、おえっとバルカン砲を吐き出した。一体どう身体に仕舞っていたのだろうか。

 機械女帝はバルカン砲を僕らに向けた。一度に数百発の弾丸が飛び交う。木箱や木樽は瞬時で木っ端みじんだ。シンドバードは脚を掴まれたままである。


「ふん、この程度の玉で俺を砕くことは出来ん!!」


 アラディンは両腕に力を込める。するとターバンから数千匹のダニが這い出てきた。

 ダニはアラディンの両腕にくっつくと、ぷくっと身体が大きくなる。血を吸っているのだ。

 アラディンは寄生虫を操る力を持つ。ダニは外部寄生虫といい、体表面に寄生しているのだ。

 たっぷりアラディンの血を吸ったダニは黒くパチンコ玉のように膨らんだ。

 

 そして力を込めると、両腕は膨らむ。右手の拳を握り、まっすぐ上に向けた。すると野球のボールを投げるように、右腕を振るった。

 血を吸ったダニは離れ、機械女帝の身体に当たる。まるでショットガンだ。血を吸ったダニは鉄分で鉄のように固くなる。コンクリートの壁はもちろんだが、自動車のドアも蜂の巣にする威力がある。


「ぎえぇぇぇ!!」


 機械女帝は悲鳴を上げる。シンドバードがいるのに、当たったらどうするのだろうか。

 アラディンはそれを無視して左腕も振るう。今度は顔面に決まった。慌ててシンドバードを放してしまう。

 シンドバードは逃げ出した。


「ちょっとアラディン! シンドバードが無事だったからいいけど、怪我したらどうするんだよ!!」


「知ったことじゃないね。あいつも人造人間なんだ、あの程度じゃ死なないだろう」


 アラディンの物言いに僕はカチンときた。僕はアメリカ人だけど、人質を取られて無茶をするほど不人情じゃない。


「あっはっは!! やるねぇ!! じゃあこいつはどうかい!!」


 機械女帝はバルカン砲を飲み込むと今度は6本の脚を伸ばす。股から何か落ちてきた。キャベツでキャタピラが付いている。

 一体なんだと思ったら、近づいた途端爆発した。キャベツ型の爆弾のようだ。


「あっはっは!! わたすから生まれたキャベツカミカゼだよ!!」


 キャベツカミカゼは数百体にも上る。本当に機械女帝の身体はどうなっているだろうか。

 僕が作った金属細胞メタルセルで作られているな。でもあれは僕の専売特許だし、簡単に作れるわけじゃない。精々スネターソフト社が権利を持っているはずだ。


「君は一体何者だ!! なんでエクストラに手を貸す!! どうして君の身体は金属細胞で出来ているんだ!!」


「あっはっは!! 契約内容を話す馬鹿がどこにおるんかい!! すべては契約だよ!!」


 機械女帝は聞く耳持たない。確かにアメリカにおいて契約は大事だ。契約を破るのは許されることじゃない。日曜日に教会のミサに行かなくても、契約だけは守る人がほとんどだ。破れば地獄の裁きを受けるからだ。


「キャベツカミカゼたちから逃れられないよ!! 特にヒュー・キッド!! お前はきっちり殺してやるよ!! お前さんがこれ以上苦しまないためにね!!」


 機械女帝が叫ぶ。僕に対して敵意はない。あくまで仕事の為に僕を消すつもりのようだ。

 だが僕は殺されるわけにはいかない。僕は空を飛んだ。空を飛べばキャベツカミカゼは飛んでこられない。アラディンは飛べないけど知ったことか。


「おい!!」

 

 アラディンが叫ぶが無視した。だが異変は起きた。なんとキャベツカミカゼが天高く飛んできたのだ。そして花火のように爆発した。


「馬鹿か!! この手の奴が対策を練らないわけがないだろう!!」


 アラディンの言う通りだ。キャベツカミカゼはぼんぼん飛んでは爆発する。

 キャベツで出来ているので大した損傷はないが、とてもうざい。


「あっはっは!! では最後にこいつを食らいな!!」


 機械女帝は4つの乳房を取り外した。それは赤い球体となり、顔が浮かび上がる。


「ブレストガールズよ!! こいつらを圧し潰してしまいなさい!!」


 ブレストガールズはにやりと笑うと、ぴょんぴょんと飛び跳ねてきた。

 空を飛ぶ僕にも体当たりをかます。とても痛い、自動車に衝突されたような衝撃だ。

 まったく自由奔放で行動が読めない。僕は彼女に翻弄されまくっていた。


「やれやれ、これだから子供は!!」

 

 アラディンが叫んだ。ターバンをかきむしった後、キャベツカミカゼを機械女帝に蹴り上げる。

 すると彼女の視界が遮られると、アラディンは走り出して、彼女の股に潜り込んだ。

 そして彼女の中に入っていった。


 機械女帝はもがき苦しむと、ドカンと爆発した。


 そこにはアラディンが仁王立ちしている。恐らく内部から破壊したのだろう。ダニを大量に出して全身の血を吸わせたのだ。そして一気に発射したのだ。なんとも大胆な男だ。

 キャベツカミカゼのネタは、80年代に流行ったキャベツ人形がモデルです。

 機械女帝はアメリカのカートゥーンを意識していました。

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