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第十三話 ウニ男

「ひどい世界になったものだな」


 ヒュー・キッドである僕は空を飛んでいた。体内にある磁力を強化し、大地の磁力と反発している。所謂磁石のNとSのようなものだ。日本共和国の絵本、」そらとぶ! オムスビマンになった気分だ。


 まあ、アメリカではミラクルマンと言う漫画が人気だけど、怪獣や怪人を倒すだけで破壊されたビルや自然など無視している。オムスビマンは腹を空かせた子供の為に自分の頭を食べさせている。僕はその自己犠牲精神が気に入ったのだ。


 作家の神五郎じん ごろうこと、ガリバーによれば週刊ステップに連載されたワイセツ学園の方が人気があったそうだ。本当はすぐ終わらせるつもりだったけど、編集部に頭を下げられて1970年から1999年まで続いているという。


「ここが中華帝国か、本で見たときとは大違いだ」


 僕は今中華帝国の南部にある朱雀ズゥチュエ県に来ている。かつては多くの工場が立ち並び、煙突からはどす黒い煙を吐き出し、排水溝にはどろどろと反吐の出るヘドロなどを大量に流していたそうだ。世界各国のゴミを処理していたが追いつかず、そこらへんに放置するのが日常化していたらしい。


 皇帝には一切知らせず、上っ面だけの自然を見せていたそうだ。皇帝と言ってもその下に就く人間が腐りきっていた。1947年に宰相の维诺姆ウィ ノウモウは幼少時の皇帝に内緒して文化大破壊を行った。現在の皇帝以外の文化は必要ないと宣言し、中華帝国各地で美術品を焼き捨て、寺などを打ち壊した。さらに農民の知恵など無視し動物を虐殺したという。


 のちに1970年に皇帝にばれた後、帝京広場で絞首刑となったらしいが、今でも崇拝している人間は多いと聞く。维诺姆の痕跡を消そうと資本主義に見習い、様々な工場を建てまくったそうだ。大量生産のおかげで人々は豊かになったがゴミが増えた。さらに郊外で病人も増えたが、维诺姆の時代に比べればマシだと黙殺したという。


「この辺りはまだビッグヘッドに喰われてないんだな」


 目の前に広がるのは工場の跡地だ。煙は出ていないが、ボロボロの工場が立ち並んでいる。緑など一切ない。まるで死の大地だ。さらに川には虹色に染まっている。薬品で汚染されているのだ。道端には白骨がごろごろ転がっている。空を飛んでも悪臭が漂ってきた。


 さらに飛んでいくと、ビッグヘッドの群れが見えた。ばりばりと工場の壁や床をかじり、ぼりぼりとブリキなどをかみ砕き、ごくごくと毒々しい色の川の水を飲んでいた。

 それが数百体もいる。ある程度食べていると群れから離れ、目からぽろぽろと石を流した。涙鉱石ティアミネラルというものだ。ビッグヘッドは涙鉱石を遠くで排出する性質がある。


 涙鉱石は大人ほどの背丈ほどに積まれていた。涙鉱石には鉄や石、土や糞など様々な種類がある。キノコの毒で汚染された鉱石を浄化してくれるのだ。日本人であったアシュラとバオバブのおかげだな。ビッグヘッドがいれば世界中の使用済み核燃料を浄化することができるのに。


「アメリカ人はオルディネ教が主流だからな。神の許可なしに新たな命を生み出すことは許されないからな」


 僕はため息をついた。宗教の力は侮れない。過去に世界各国で流行した風邪があったという。布繊維マスクをつければ予防できるのに、宗教のトップは病気はデマであり、マスクをしてはならないし、ワクチンも打ってはならないと宣伝したという。

 そのために何百人もの人間が風邪で死んだが、それは自然の摂理だと説いた。


 僕のママもそうだった。やたらと宗教にこだわっていた。


『神を信じなさい。神を信じれば救われるのよ、私みたいにね』


 ママは目や歯を剥き出しにして嗤っていた。背筋がぞっとするような笑みだった。

 なんでもママは幼少時に祖父から虐待を受けていたという。地下室に監禁され、家畜のような扱いを受けていたが、神に祈ったら警察が来て祖父を射殺したそうだ。

 

 それ以来ママは神に心酔したそうだ。神に祈れば自分を助けてくれる。偶然の出来事なのに神の奇跡と思い込んでいるのが厄介だった。


「おや?」


 僕は下を見た。複数の人間たちがビッグヘッドの群れに近づいてくる。全員弓矢と槍を装備していた。

 着ているのは毛皮で髭を生やしている。原始人みたいだ。

 そいつらはビッグヘッドの村を見つけると、雄たけびを上げた。そしてビッグヘッドたちを殺し始めたのである。


 ビッグヘッドたちは慌てふためくと、逃げ出そうとしたが人間たちは後ろから矢を放つ。

 ブスブスと矢が突き刺さると、ビッグヘッドたちは目を剥き出しにし、舌を天に伸ばすと舌から芽が出てきた。そして数分後に木に変化したのである。


「こいつはいけないな」


 人間たちはビッグヘッドを殺して喜んでいる。せっかく汚染された大地と水を浄化してくれているのに、やめさせなければ。

 僕はすぐそいつらの前に降り立った。


「なっ、なんだてめぇは!!」


 リーダー格っぽい男だ。頭一つ高く、ゴリラのような体格である。獣の骨で作った首飾りと腕飾りをしていた。


「なんだてめぇはだって? そうです僕はヒュー・キッドです」


 僕が挨拶すると男たちは面食らったようである。


「こいつなんだか変だぜ。猫の頭をしてやがる」


「こいつは変な小僧だ。こんな変な奴見たことがねぇ」


「うぅぅ、なんてむかつくんだ。こんな変なのは殺すに限るぜ!!」


 男たちは僕を見ると殺意を剥き出しにしている。額から血管が浮き出て、目が血走っている。槍を握る手に力がこもっていた。よほど僕の存在が目障りのようである。


「待ちなさい。僕を殺すことなどできないよ。死にたくなければビッグヘッドを殺すのはやめなさい」


「はぁ!? びっぐへっどだぁ!? 何言ってやがる!!」


 どうやら彼等はビッグヘッドの名称を知らないようだ。まあ、世間では秘密裏にしていたからね。それに中国人は英語に詳しくなさそうだ。


「あの怪物グアイウどもをかばうというのか!! じゃあてめぇは敵だ、殺されるべき存在だ!! 野兽頭イェショウ トウどもの仲間なら叩き殺してやる!!」


 もう彼等は僕を殺すのに夢中だ。よほど亜人たちが気に喰わないのだろう。自分たちは人間で素晴らしい存在だと思い込んでいるようだ。


「待ちなさい。殺して解決するのはよくないよ。気に喰わなければ関わらなければいいじゃないか。無理して接触する必要はないよ」


 一応説得はしてみる。オムスビマンも宿敵のアオカビマンには毎回説得を試みているからね。


「ダマれぇぇぇぇ!! 野兽頭が生意気に人間様の言葉をしゃべるなぁぁぁ!! 俺たちが一番偉いんだぁ、俺たち人間以外必要ないんだよぉぉぉぉ!!」


 リーダー格の男は怒り狂っていた。僕を殺したくてたまらないようだ。しょうがないので僕は戦うことを決める。


「ヒュー・パーンチ!!」


 僕は軽く右手でその男を殴った。右手には磁力を纏っている。この男の体内に発する磁力と反発すると、男の身体は大砲のように吹き飛んだ。

 ぼぉんと耳がつんざくする音が聞こえたと思ったら、男の姿は一瞬で消えたように見える。


 実際は何十メートルも吹き飛ばされたのだ。その衝撃で全身の骨にひびが入り、内臓も電子レンジをかけられたようにぐちゃぐちゃになって熱くなる。

 50メートル先の地面に叩き付けられると、男は口から血を吐き出した。さらに耳や目、鼻から血が溢れだす。げほげほとせき込むと、芋虫のようにゴロゴロと転げ回っていた。


「げはっ、げほっ!! ぐるじぃ、ぐるじぃぞぉ!! あじゅい、あじゅいぃぃぃぃぃぃ!!」


 男は情けない声を上げて苦しんでいた。正直僕には達成感がない。虐待された身分ではあるが、他人を痛めつけても面白くもなんともなかった。これは僕の望むオムスビマンではない。

 ほら、男の仲間たちもリーダーを痛めつけられて憎んでいるはずだ。


「やったー!! あんたすげぇよ!!」


 違った。僕をほめちぎり始めた。なんでだろう?


「あいつは村一番の乱暴者なんだ!! 自分より目立つ奴はすぐ殺してしまうんだ!!」


「あの怪物大頭グアイウ ダトウも穢れた大地を清めてくれるのに、気に喰わないからと言って殺しまくっていたんですよ!!」


「女たちも檻に入れられ、首を繋がれ家畜扱いされていたんだ!! あんたのおかげで解放されたぜ!!」


 そう言って男たちは倒れたリーダー格の男に駆け寄った。


「おっ、おまえらぁ、おれをだずげろぉ!! ぞじで、あのぐあいうをごろぜぇぇぇ!!」


 男は呪いの言葉を吐いた。しかし周りの男たちはにやりと笑い、誰も行動を起こさない。

 髪を逆立て赤鼻に出っ歯の男が前に出る。


「あんたはもう死に体だ。今まであんたの暴力で屈服していたが、もうおしまいだ。お前なんかこうしてやる!!」


 そう言って出っ歯の男は、リーダー格の男を立たせると縄をクビに括らせる。腕も縛っていた。


「なっ、なにをぉぉぉぉ!!」


「お前は若者たちの矢の練習台だ。さぁこいつを的の代わりにするがいい!!」


 そう言って十代位の少年たちが前に出た。全員弓矢を構えている。


「やっ、やめろぉぉぉぉ!!」


「やめません。やっちゃえ!!」


「はーい!!」


 出っ歯の男に命じられ、少年たちは矢を放つ。近距離なので、矢はプスプスとリーダー格の男に突き刺さった。


「ぐぇぇぇぇぇぇ!!」


 男は絶叫を上げた。十数本は刺さっているが、まだ絶命していない。なかなかしぶといね。


「ではもういっちょう。いっちゃえ!!」


「はーい!!」


 再び少年たちが矢を放つ。今度は背中だ。ウニのように棘だらけになった。


「ひげぇぇぇぇぇぇ!!」


 男の眼球が二個ともピンポン玉のように飛び出した。そこから噴水のように血が噴き出る。

 そして口から滝のように血を吐き出すと、男は数度痙攣してから絶命した。


「ふぅ、すっきり♪ みんなもすかっとしただろ?」


「いえーい!!」


 出っ歯の男の声に対して、全員いい返事をした。

 うん、人間の残虐さはいつの時代も変わりはないね。でも僕も見てていい気分だった。


 物語としては悪い奴といい奴の対比が必要だと思う。

 ヒュー・キッドは善人ではないが、お腹を空かせた人を救いたいと思っています。

 その邪魔をする相手に対しても、すぐ暴力で解決するのではなく、説得から始めるのはそれいけ、アンパンマンと同じですね。


 やなせたかし先生もお腹を空かせることが最大の不幸と思っており、アンパンマンのようにひもじい思いをした人を救うのが理想のヒーローだと考えていたようですね。


アオマンは中国語で傲慢といい、スゥはネズミを意味します。

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