第十二話 花主人の正体は ディーヴァの友達でした
金城真咲は砕珠県にある小学校の小学5年生だ。
植物学者の金城外陰が晩年に作った娘である。母親は20歳年下で親子ほどの差があった。真咲が5歳の時に病気で亡くなったのだ。
父親は仕事で忙しく、隣近所である毬林家に預けられており、毬林茉莉花とは姉妹同然で育ったのだ。
他にも杖技真仁とも仲が良かった。
真咲は父親と同じ植物に興味を抱いていた。ついでにキノコも興味を抱いている。
休日には山の中に入って植物やキノコの採取を楽しんでいた。父親が作った温室がありそれを利用している。
カメラは持っていないのでスケッチブックを持って、花やキノコのスケッチをしていた。部屋にはなん十冊もスケッチが置かれてある。
茉莉花は歌が好きで、真仁はコンピュータが大好きだった。趣味が全く違うが却ってそこがよかったのかもしれない。三人はとても仲が良かった。
「でもあの頃は私たち以外まったく仲がいい人はいなかったけどね」
花主人となった真咲がつぶやいた。当時の彼女たちはクラスどころか学校でも変人扱いであった。植物やキノコに異常なまでに詳しい彼女は周囲の人間には奇異に映ったのである。
さらに父親の金城博士は生まれつき足のない体質で、車椅子で移動していた。障碍者なのに博士号を持つ金城博士はPTAに嫌われていた。周囲は憐みの目を向けても、金城博士は平然としているからだ。
自分たちは同情してやっているのに、それに感謝の意を示さないので金城博士はおろか、娘の真咲も周りから弾かれていたのである。
「まあ、クズどもに気を使う必要なんかないんだけどね」
ディーヴァが言った。彼女の父親である毬林満村は過去に両親を酒酔い運転で亡くしている。犯人に復讐を望んでおらず、逆に犯人を哀れんだため、マスコミから攻撃された挙句、近所の人間にも嫌われていた。みんな満村が両親の敵討ちを期待していたのに、自分たちの期待を裏切ったからである。まこと身勝手な人間のエゴイストによく満村は正常に育ったか意外であった。
表向きは村八分扱いされていたが、中には満村に共感を抱く者もおり、それほど孤立していなかった。真仁も似たようなものだった。
学校では三人はいじめに遭っていた。彼女たちは得体のしれない怪物でいじめていいと思い込んでいるのだ。
玄関の靴を隠し、机を隠したり、クラス全員で無視したりしていた。
教師たちは面倒事を忌み嫌い、いじめを黙認していた。
だが彼女たちは黙って苛められる人間ではなかった。いじめを黙認した教師は結婚していたが、浮気がばれて離婚した。おかげで学校をやめる羽目になる。
次にPTA会長が学校の教師と不倫をしていたことがマスコミに公表された。おかげで茉莉花たちの通う学校は一時騒然となった。
いじめを楽しんでいたのはPTA会長の娘だった。そいつは両親が離婚してしまい、転校してしまったのだ。さらに警察官や政治家の子供もいたが、親が不正をしていたのを暴露され失脚してしまう。そのためほとんどが転校という名の夜逃げをする羽目になったのだ。
「あの時は楽しかったですね」
「そうそう、弱い者いじめを楽しむ奴らが破滅する姿を見るのはスカッとしたわね」
花主人とディーヴァはけらけら嗤っている。自分たちが正義と言わんばかりだ。
実は教師たちが失脚したのはすべて彼女たちが秘密裏に調査したのを、奥さんや夫に証拠を送り付けたのである。
学校の不正を集めても学校側や教育委員会はそれを無視する。自分たちが担当する学校でいじめはない、あってはならないのだ。いじめで自殺しても事故にしてもみ消そうとする。自分たちは奇麗でなくてはならないと思い込んでいるのだ。
逆に浮気などは違う。男女の関係は感情で燃え上がることが多い。浮気がばれた瞬間、浮気された相手は烈火の如く怒り、すぐに別れてしまうのだ。
真仁はマネーゲームが得意で数千万の貯金を持っていた。それを利用して興信所を作り、浮気の証拠を集めさせたのである。
興信所に頼るのではなく、真仁自身が作り出した組織だ。署員は全員真仁に忠誠を誓っている。
そして茉莉花たちは自分たちの仕業であることを隠さなかった。同級生たちは彼女たちに恐れを抱き手を出さなくなる。大人たちも虎の尾を踏む愚行は避けたかった。
ついたあだ名が三魔女であった。
「ところであなたはどうしていたのかしら? 砕珠にいたはずでしょう?」
「いいえ、闘京の死ん宿にある植物展示会に来てたのよ」
そこで真咲は核の炎に巻き込まれたのだ。彼女の人生はそこで終わっていたはずだった。
だが彼女は目を覚ました。身体がやたらと重い。まるで鉄を飲み込んだような感覚であった。
自分は人間ではなくなっていた。人間の頭に手足がくっついたビッグヘッドに生まれ変わっていたのである。
恐らく自分の遺体を食べたビッグヘッドが、真咲の神応石に反応し、かつての自分の記憶を取り戻したのだろう。
真咲はキノコの毒に汚染された土や石を食べ続けた。嫌悪感はなく、自然に口にできた。
他にも仲間はいっぱいいた。しかし全員言葉をしゃべることはなく、黙々と汚染されたゴミをたべるだけであった。時間が経つと木に変化していくので、制限時間があることを悟る。
「その時の私は死にたくないと思ったわ。死ぬことは負けると思ったからよ。そしてがんばってみたら、今の状態になっていたわけよ」
「頑張ってどうにかなるんだ」
ディーヴァはさすがに呆れていた。真咲曰く、彼女は言葉をしゃべることが出来た。それ故に生き残った人類、テレビゲームにしか出たことのないラミアやハーピィ、ケンタウロスたちの心をつかむ。しゃべるビッグヘッドに神聖なものを感じたのだろう。
彼女はバラバラの種族をまとめることにした。日本共和国をアマテラス皇国と名付けたのだ。
彼女の身体は見る見るうちに大きくなった。私はこの国を治める、外敵からも守ってやると演説を始めたのだ。元々ビッグヘッドはキノコの毒を浄化する存在であり、生き残りの人々はビッグヘッドは神の使いだと信じていた。
真咲は体育館並みに巨大化すると、自分の分身を生み出した。花やキノコがどんどん生えてくる。それらは真咲の人格を持っていた。花主人も昔の真咲に近い人格を持っている。
今の大頭城は花やキノコの擬人が城の管理を行っている。そして自分の息子であるタイクーンヘッドをアマテラス皇国の象徴としたのだ。
ちなみに息子の神応石は日本共和国最後の王族の当主から取られている。真咲は日本人なので日本の象徴を復活させたかったのだ。
「ところで茉莉花はどうしていたのよ。あんたが褐色肌のエロい女になったのはびっくりしたけどね」
「それなんだけど、私も色々あったわけよ」
ディーヴァは説明した。自分が夏休みに中華帝国に両親と一緒に旅行に行っていたこと。そこでキノコ戦争に巻き込まれ、なぜかチャールズ・ヒュー・モンローの手によって人造人間に改造されたこと。そして人類の抹殺を目論むモンロークラウトの事を話した。
「なんということ……。お父様が生きていてくれたなんて」
花主人は涙をぬぐう。孫ほどに年が離れているが、彼女にとって大事な父親なのだ。
ちなみにモンローがキノコ戦争を起こし、世界を荒廃させたことについてはスルーしていた。あれは天災のようなもので、死んだのは運が悪かったと思っている。彼女もディーヴァたちと同じく狂人と言えた。
人を恨まず、運命だと受け入れる人間は20世紀において狂人扱いされてきた。アメリカのように提訴が主流になり、死を受け入れず他人のせいにするのが常識と洗脳されたのだ。
「バオバブさん、真咲は生きていたよ。うんうん、必ず伝えますから」
ディーヴァは何か独り言を言っている。人造人間同士だと遠くからでも電波を受信できるのだ。
「真咲、おじさんは必ず会いに行くって。それで長い間一人にしてごめんて謝ってた」
「お父様もつい最近起きたのでしょう? 別に謝る必要はないのに……」
それでも家族が生きていたことは嬉しいものだ。特に彼女は心を許せる友達がいなかった。友達が生きていたことに真咲は嬉しくなった。茉莉花も同じだ。
「……これで真仁も生きていたらよかったんだけどね」
ディーヴァは今は亡き友を思い出す。杖技網厚ことアシュラの姪だ。50年前はアメリカのニューヨークに行っていたはずだが、生きているはずがない。
「実は真仁も生きていたのよ」
「え?」
「なんでも自分の思考パターンをコンピュータに移植したらしいわよ。神応石でICチップを作った特別製らしいわ。そのおかげで人間と同じように思考が安定しているって話よ」
突然のことにディーヴァは話が付いていけなかった。真仁も生きている。その事実はとても衝撃的であったが、彼女が生きていたことに不思議とは思わなかった。多分生きているとなんとなく思っていたからだ。それは真咲も同じであった。
「今はニューエデン合衆国の南部に機械帝国を作って機械女帝と名乗っているのよ。訪ねてきたのはつい4年前だけどね」
自作した機械人形を使って、人間を集めては奴隷にしているらしい。人間はビッグヘッドを忌み嫌っているので、手を出させないためだという。
「ところであなたたちはなんと名乗っているのかしら?」
花主人が訊ねる。自分たちは人造人間だが、どういう集まりかはわかっていない。正義のためなのかさっぱりわからないのだ。
「ねえ、ヒュー・キッド。私たちはどう呼び方がいいかしら? 人造人間は、他のモンローも名乗るだろうし、差別化は大事よね。うんうん、わかったわ」
ディーヴァは念話でヒュー・キッドと会話をしたようだ。
「私たちは人造人間で、外見が成長することはないわ。永遠の子供なのよ。そう不気味な子供たち、スプーキー・キッズと名乗ることにしたわ」
スプーキー・キッズ。この名は百数年も語り継がれることになるのだった。
スプーキー・キッズとはアメリカのアーティスト、マリリン・マンソンの前身マリリン・マンソン&ザ・スプーキー・キッズから取りました。
ビッグヘッドが汎用性が高いことに作者の私も驚いています。
これは神応石の設定をきちんと作ったから出来たことだと思いました。
元々マッスルアドベンチャーの主人公フエルテが筋肉の振動で風を起こす理由を作るためでしたが、設定をきちんと作っておくと、色々つかえるようになるものですね。




