第90話 神の言語と風の秘密
いざ、カイザーの家へ
俺、イーゼル、ルナ、カーシャは揃ってカイザーの家へと訪れていた。
「着いたぞ、ここが俺の家だ」
カイザーの家は豪華な白い邸宅に、広大な庭、いかにも五英傑の家と言う感じだ。
実際、メーメル公爵邸だからな。
「帰ったぞ、爺」
「お帰りなさいませ、カイザー坊ちゃま。そちらの方は・・・こ、国王陛下ぁぁぁ!!?」
メーメル公爵家の執事は突然の国王訪問に腰を抜かしている。
「爺、そんなに驚かなくても良いだろ。ほら、父上に客人が来たと報告してくれ」
「わ、わ、分かりましたカイザー坊ちゃま」
執事は慌てながら廊下の奥に消えていった。
「悪いな。うちの爺、テンパだから」
「そりゃ突然国王が訪問したらびっくりするわな」
「そうだね、だって国王陛下だもんね」
「驚くのも無理ありませんわ」
「え?僕が悪いの?」
適当な会話をしていると、廊下の奥から先程の執事とメーメル公爵が現れた。
「待たせてしまい申し訳ありません国王陛下。私がこの家の当主、ヴァイマル=メーメル公爵である。以後お見知り置きを」
「ベルナリン伯爵家令嬢、カーシャ=ベルナリンでございます」
「わ、私はルナ=エルサーラです!」
「俺はゼロ=グランディオ。大閣男爵だ」
それぞれが自己紹介をすると、メーメル公爵は突然俺の肩に手を置いた。
「おお!君が噂のゼロ=グランディオ大閣男爵か!君のアイデアは素晴らしい!これでこの国の流通は以前に比べて何倍も効率的になっておるぞ!ワッハッハッハ」
「そう言えば、メーメル公爵に国土交通卿だったな」
「そうである!これからも国王陛下を支えてやってくれ!あ、序でにうちのカイザーも何かあったら支えてくれ!してカイザーよ、国王陛下一行を連れて何用か?」
俺は例の手帳を取り出し、例のページを見せながら説明する。
「用があるのは俺だ。この謎の文章を見せたら、カイザーが見覚えがあると言うのでな。それを確かめに来たと言う訳だ」
「謎の文章?ふむふむ・・・こ、これは!?」
「父上、何か知っているのか?」
「グランディオ大閣男爵!こ、これを一体何処で!?」
「風の遺跡のダンジョンマスターが持っていた。正体は分からん」
「そうであったか、成程。見せたい物がある。私の後に付いてきてくれ。国王陛下もご一緒に」
そう言うとメーメル公爵は地下への階段を降りていった。
俺達もその後ろを付いていくと、幾つかの文字が書かれた扉が現れた。
「ゼロくん、この文字は何?」
「ああ、ヘレネス文字だ。神代語の1つだな」
「ヘレネス文字を知っておるのか!流石グランディオ大閣男爵であられる。まあこの文字は余り意味はないようだがな」
確かにヘレネス文字が書かれているが、適当に並べられているだけで特に意味を見つけられない。
恐らくはただの飾りだろう。
メーメル公爵がその扉を開けると、中は非常に暗く、真ん中の額縁を除いて他は何も無い部屋だった。
「この額縁を見てくれ。同じ文章が書かれてある」
額縁を覗くと、例の手帳に書かれていた文章がそっくりそのまま書かれている。
「確かに一緒だな」
「でも、どうしてこんな所にあるんだろう?」
「これは我々メーメル家に伝わる、一種の伝説のような物だ。この文章の意味は分からぬが、代々伝えられている」
メーメル家に伝わる伝説、か。
・・・そう言えば、メーメル家の能力って''暴風''だったな。
この手帳を拾ったのも''風''の遺跡。
単なる偶然か、それても何か繋がっているのか?
そんな事を思っていると、イーゼルが話かけてきた。
「ゼロ、どう思う?」
「単なる偶然じゃない気がするが、如何せんメーメル公爵本人も分からないからな。別の手段を持って調べるしかないな」
「すまないな。力になれなくて」
メーメル公爵は頭を下げる。
国王が目の前にいるからなのか、凄く申し訳無さそうにしている。
「いや、この家で同じ文章が見られた事自体が大きな収穫だ。だからそう気に病むな」
「グランディオ大閣男爵・・・あ、有難うございます」
「いや、俺にまで敬語使わなくても良いぞ。俺なんか誰であろうとこの口調だし」
「「「「それはそれでどうかと思う」」」」
イーゼル、ルナ、カーシャ、カイザーが口を揃えてそう言う。
俺の場合、神代での最高権力者だったから俺より上の人なんて居なかったと言う理由があるんだが。
ま、直すつもりは無いけどな。
ヘレネス文字、つまりはギリシャ文字ですね。
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