第87話 神と風の遺跡(神風後編)
奮戦
この男が使っている魔力の中には神力が混じっている。
その理由は分からないが、この男はただのダンジョンマスターでは無いようだ。
「銃剣ラグナロク:付与鋭利」
俺は銃剣ラグナロクに付与魔法を掛け、そして俺と男は目に見えない速度で剣を交わす。
その後ろで神龍ヴェレアスが魔法で援護をする。
しかし、そのどちらもこの男に決定打を与える事は出来ない。
「ぐっ!この強さは上級、いや超級神族並みだぞ!」
俺は今、若干男に押されている。
風の力で剣戟がとてつもない速さとなっている。
対応は出来るが、これ以上で相手にダメージを与える事はほぼ不可能だ。
ヴェレアスもこの風で相当のダメージが蓄積されている。
「ぐお・・・」
「ヴェレアス!」
俺にヴェレアスを気に掛ける余裕は無い。
俺は体勢を変えながら男の攻撃を避け、時には剣がぶつかる音が高らかに響き渡る。
「ぐ、これ以上は持たないな」
「ゼ、ゼロ様!」
「ヴェレアス、考えてみろ。何故絶対神である俺がここまで押されていると思うか?」
「な、何!?」
「それはな、俺は本来の力の1%程度しか出していないからだ!上級神族ぐらいならこれくらいで十分だ!だが、超級レベルとなるとそうは行かん!ならば力を解放すれば良いだろう!!」
俺は徐々に力を解放する。
本来ならばこれ以上の力の解放はこの体の負担となってしまう。
だが、ここまでの時間稼ぎでそれの対策は済んだ。
超級神族のレベルとなると、俺の解放する力は60%にもなる。
ここまで解放すると、この体はもう人間ではない。
額に絶級神族の紋章が、背中には6枚の白い翼が顕現する。
俺、絶対神としての本来の姿を降臨させる。
「ゼロ様、その姿は・・・あの時の・・・」
俺は特に覚えていないが、ヴェレアスは幼竜の頃に俺に助けられたと言っていた。
その時の姿は今の俺と同じだろう。
ヴェレアスはその姿に涙を流している。
「さて、漸くこの体にも順応させた事だし、さっさと終わらせよう」
俺は翼を羽撃かせ、空中で男を見下ろす。
男は無数の風の刃をこちらに向けて放つが、無意味だ。
俺が指を鳴らすと、その風の刃は何事を無かったの如く霧散する。
そして俺は銃剣ラグナロクを下向きに構える。
「『神々ノ運命』」
俺が銃剣ラグナロクを下に振り翳すと、男は光に包まれ纏っていた風が一瞬で消える。
それと同時に男はその光と共に消滅した。
「はあ、終わったな」
俺は地面に降り立つと、神の力を元の1%に戻す。
すると、額の紋章と背中の翼は消滅した。
「ゼロ様、流石である。その姿に我は感動したぞ」
「最初からこれをやれば良かったがな。何分この体に順応させる為の時間が掛かったからな。そもそも俺がこのような雑魚に劣る訳無いだろう」
「それもそうであるな」
俺はヴェレアスに回復魔法を施すと、男が立っていた場所へと向かう。
男は俺の神々ノ運命で消し去った。
しかし、そこには1冊の手帳が残されていた。
「ん?何だこれ?手帳か?」
俺はその手帳を拾い、ページをパラパラと捲る。
所々掠れていたり汚れたりしていて読めない部分があったが、ある1枚のページにはその文章ははっきりと書かれていた。
月に始り、日に終る
創造により生まれし物
月は光を揺るがし
木は陽を開かせ
火は玉を衡る
土は天上の権力となり
金は天上に幾多の王を擁し
水は天上で王を凱旋させ
日は天上の中枢となる
我は神の言葉によって伝える
月日は樸を示し
木と火は伍をなし、土は参る
そして残りは日と重なる
その言葉は我の鍵となるだろう
転生してから初めて神の姿に
最後の文章はフラグ回収時にまた出します