第86話 神と風の遺跡(神風前編)
風の遺跡最下層へ
「まずは我が、先手必勝!!」
ヴェレアスが男に接近し、風刃剣で斬りかかる。
「!?ぐっ、おお、何と強い!」
その男は風の層で覆われていた。
あれはさっきの竜巻よりも更に圧縮された風だ。
目算風速1km/s。
これは普通にヤバくないか?
「ぐ、ぐぐ・・・!?」
ヴェレアスの剣戟が押し返され、逆にヴェレアスは剣戟を喰らう。
「ガハッ!・・・」
男の風刃剣によりヴェレアスは後ろの岩壁まで吹き飛ばされた。
「大丈夫か、ヴェレアス!」
「く、この程度、我ならば・・・カハッ・・・」
「ヴェレアス任せろ、俺が相手する」
「ゼロ、様・・・奴、は・・・」
俺は銃剣ラグナロクを構え、男に向かって斬りかかる。
それと同時に後ろで攻撃魔法を展開する。
『異次元十字斬』
魔法と斬撃を組み合わせ、男に攻撃する。
しかし、魔法は全て男を纏う風により消失し、斬撃をも受け止められてしまった。
「あ?何だこの魔力?」
俺がこの男に違和感を抱いていると、俺の死角から男の剣戟が飛んでくる。
「うおっ!マジか、ってヤバ」
俺は間一髪で避けるも男はその隙に接近して来ていた。
そして圧縮された風が俺に当たるように突進してきた。
幾ら結界を張っているとは言え、風速1km/sだ。
その衝撃まで防ぐ事は出来ない。
俺はその風に吹き飛ばされ、岩壁に激突し、且つその壁は10m以上抉れた。
「いってぇ、やりやがったなアイツ」
俺は被った砂を払いながら立ち上がる。
無傷ではあるが、相当の衝撃を喰らったな。
神龍であるヴェレアスでさえ結界越しでここまでのダメージを受けている。
これは最早結界はマズイな。
結界を張るとその分衝撃が大きくなる。
硬い物に当たるより柔らかい物に当たる方が衝撃を逃がせるのだ。
俺は自身の結界を解除し、銃剣ラグナロクを構える。
俺は一瞬で間合いを詰め、男の首を落とそうとする。
「くっ、やはりこの程度の力じゃこの風の鎧は破れんか」
俺が銃剣ラグナロクを押し込もうとすると、男は死角から風刃剣を突き刺す。
俺は体を反りその刃を間髪で避ける。
その後も俺と男の剣戟は続いた。
しかし、その風の鎧を突破する事は出来なかった。
「くそ、結界を解除したからモロにこの風を受けるな・・・!?この力、まさか!」
俺が男の違和感の正体に気付いた時には、俺の周りに無数の風の刃が現れ、俺を切り裂こうとする。
「『封風輪舞』」
俺の背後で龍の姿となったヴェレアスが魔法を放つ。
俺の周りにあった風の刃はその魔法により消滅した。
「無事か、ゼロ様!」
「ヴェレアス、お前も気付いたか?」
「うむ、まさかこんな事があるとはな」
戦っている中、俺達は男の違和感、魔力の相違の正体に気付いた。
それは・・・
「「これは神力だ」」
神の力には神の力を。
風速1km/sはやり過ぎか?