第8話 神は最初の授業を受ける(後編)
午前9時50分、朝のSHRが始まり、アスク先生が話し始めた。
「みんなおはよう!今日から授業が始まるな!気を引き締めて頑張れよ!因みに一時間目の応用魔法学は私が担当だからな!よろしくな!それじゃあちょっと早いが、早速始めようか!」
そう言うとアスク先生は応用魔法学の講義を始めた。
―応用魔法学
そもそもこの学園に入学出来る人は基本魔法学を完璧に理解している人なので、最初から応用をやるらしい。
応用魔法学と言うくらいなのでそれなりの難易度なのかなと思ったがそんなことは無く、俺からしたら基本中の基本だった。
魔法が劣化したこの時代だと当然か。
周りを見るとルナを含め皆必死に板書を写している。
必死になっていないのは俺と五英傑ぐらいだ。
「じゃあこの魔法の効果を答えてもらおうかな!そこの君!」
「は、はい!えーっと・・・」
前の席に座っている生徒が当たった。
あの魔法陣は探知魔法だな。
魔法のレベルには初級、中級、上級、超級、そして絶級がある。
この魔方陣だと初級魔法だな。
精々気配を探知できる程度だ。
「・・・すみません、分かりません」
「そっか、気に病む事はないぞ!これは上級魔法だからな!」
ん?
上級?
これがか?
魔法が退化しているとはいえ、魔法のレベルまで変わっていたのか。
あれで上級なら俺が使う絶級とかどうなるんだよ。
それはそうと周りがざわついている。
もしかして上級は珍しいのか?
「それじゃあ次は五英傑の君!どうぞ!」
五英傑の一人、火炎のアルフレッド=レーゼンバーグが当てられた。
「はい、これは上級探知魔法で周囲の気配を探知できる魔法です」
「正解!流石五英傑の一人だな!じゃあ上級魔法について説明していくぞ!」
先生の話が長すぎるので要約すると、上級魔法は国民の3%、全人類でも9%しか使うことの出来ない魔法で、使えるのは主に神族の子孫か神の子の子孫か程度らしい。
因みに神の子とは俺が能力を与えた五人の人間のことであり、その直系が五英傑のレーゼンバーグ家、フェルアーマ家、メーメル家、ヴォルクス家、グランツ家になっている。
その後、上級魔法の種類や効果について長々と話すことを聞いていたが、俺からしたら全て初級レベルだったので聞き流した。
授業が終わり、みんな疲労困憊の様子の中、隣の席のルナが話しかけてきた。
「一時間目から疲れた~。もう板書写すにの精一杯だったよ」
「まぁあの会話量で板書してたからな。大変な人は大変なんだろうな」
「ゼロくんは疲れてないの?」
「途中から聞き流したからな」
『おやおや、先生の話を聞き流すとは、やはり平民の君には理解出来なかったのかなぁ?』
そう話しかけてきたのはルナと反対側の隣の席の五英傑の一人、暴風のカイザー=メーメルだった。
「何を言っている?既に理解しているから聞き流したんだろうが」
「あーあー大丈夫、そんな見栄を張らなくてさ。誰も君の話なんて信じないよ。なんせ君は''平民''だからね!」
「・・・(哀れだな)」
「何も言えないか、まぁ精々置いていかれないよう頑張るんだな、無理だと思うけど」
そう言うとカイザーは去っていった。
「はぁ?何なのアイツ!?ゼロくん!もっと言い返してもいいんだよ!」
「必要ないさ。ああいう奴は言葉で言っても分からないからな」
「ゼロくんがそう言うなら仕方ないね。私は立場上強く言えないし」
この国は貴族社会だ。
序列的には貴族、商家、平民の三つだが平民の地位は上二つとの差が大きく開いている。
この国には奴隷禁止法が施行されている為、奴隷という身分自体は存在しない。
が、その枠に平民が入っているという感じだ。
因みに貴族の中にも細かい序列はあるが、それはまた別の話。