第85話 神と風の遺跡(狂飆)
本当は全階層の様子をダイジェストで送りたかったけど、めんどくさくてやめた。
「ま、結界でも張ってりゃ万事解決だろ。『完全防御結界』」
俺は自分とヴェレアスの周りに結界を張る。
完全防御結界はあらゆる物理・魔法攻撃を防ぐ事が出来る。
この程度の風なら余裕だ。
「ヴェレアス、ちゃんと機能してるか?」
「大丈夫である。全く風を感じないぞ」
「なら問題は無い、か。!?」
「何!?」
俺達の目の前に現れたのは魔物ではない。
''風''である。
その風は一瞬にして俺達を包み込み、そして渦を巻く。
俺達は今竜巻の中にいる。
「ゼロ様!これは!?」
「竜巻だな。だが、風速が桁違いだ」
俺が竜巻の渦に手を伸ばすと、その風圧で俺の左腕は綺麗に吹き飛んだ。
「ゼロ様!」
「ッ!成程、つまりは閉じ込められたという訳か。さて、どうしようかな」
俺は回復魔法で腕を直すと、ヴェレアスが声を発した。
「ゼロ様、我に任せるのだ」
ヴェレアスは体を龍の状態に変化させる。
そしてヴェレアスはその竜巻に向かって魔法を放つ。
「『狂飆の刃』!!」
神龍となったヴェレアスにとって、この竜巻等戦風に過ぎないのだろう。
しかし、竜巻の威力は変わる事は無かった。
その渦は止まる事は無かった。
だが、その形は徐々に崩れてきていた。
ヴェレアスの放った風魔法、狂飆の刃。
それは風の流れをバラバラにする、光で例えると乱反射の状態にする。
それによって竜巻としての形は崩れていったのだ。
威力や風速は変わらずとも根本の形が崩れさえしてしまえば脱出するのは容易い。
俺は人間体に戻ったヴェレアスの腕を掴み、魔法を発動させる。
「『超加速』」
俺達は崩れた竜巻の隙間を抜いながら、巨大な風刃から脱出した。
そして竜巻の渦は段々と消滅していくのだった。
序でに床に穴が開いた。
「「は?」」
突如床に穴が開くという事は、この渦から脱出した者を落とす為だろう。
まあ、浮遊出来るんだがな。
俺達はその意図を無視して、ゆっくりと浮遊魔法で下に降りていった。
「何だここは!?」
「へぇ、地下にこんな空洞がねぇ。大分広いな」
その空洞は王城が丸々収まる程の広さを誇り、且つあらゆる方向から猛烈どころじゃない風が吹いている。
17階層、風速200m/s
「どうやらここがボス部屋みたいだな」
俺達の視線の向こうには風を纏った人型の何かが仁王立ちしていた。
その何かは黒いフードを被り、顔は見えないが、男であろう。
俺達の視線に気付いた男は刃がついていない剣を抜く。
すると、風が刃となり、剣の柄と合体する。
「風刃剣か、面白い。では我も同じ物を」
ヴェレアスも同様に風の刃で剣を作り、男と相対した。
俺も銃剣ラグナロクを抜き、相対する。
「さあて、始めようか!」
俺達とその男の戦いの火蓋は切られた。
この男の正体は?