第83話 神はダンジョンの街に行く
街がダンジョン化している訳ではなく、ただ単にダンジョンが沢山ある街です。
俺達が到着したのは王都から東に数10km、ザンザルヴェート王国へと繋ぐ街道の道中にある街、エルザロ。
この街はダンジョンの街と呼ばれている。
その理由は一つ、街の周辺各地に沢山のダンジョンが点在しており、この街はダンジョンの収益で潤っている街である。
そしてこのダンジョンは風の遺跡を除き、全てが攻略済みとなっている。
攻略基準は最下層にあるダンジョンマスターと呼ばれる魔物を倒す事である。
ダンジョンマスターを倒すと、以降ダンジョンマスターは現れないが、その道中には魔物は湧くので、攻略済みとなっていてもダンジョンに挑む事が出来るのだ。
ダンジョンマスターがいないダンジョンは危険性はそこまで高くなく、冒険者の腕試しや軍の訓練等に使われる程である。
その為、ダンジョンは公共施設として使用料を取られる事になる。
これがこの街の収益となっている。
つまり、ダンジョンはエンターテイメントと化しているのだ。
俺達はまず、ダンジョンを管理している冒険者ギルドエルザロ支部に向かった。
ギルドの中に入ると、一般の受付とダンジョン専用の受付に分かれていた。
俺達はダンジョン専用の受付に行き、受付嬢に依頼用紙を渡した。
「あっ!風の遺跡の依頼、受けて頂けるんですね!誰も受けてくれなくて困っていたんですよ!有難うございます!」
「そんなに誰も受けなかったのか?」
「はい~、魔物は強いし、風も強いしで皆嫌がっちゃって。このダンジョンはまだ未攻略なのに~」
「なんなら俺達が攻略して来ようか?」
「え!?それは願ったり叶ったりですけど、未攻略とあって危険ですよ?この依頼だけでも困難なのに・・・」
「問題ない、俺達のこの依頼は白金ランク昇格の為の推薦依頼だ。推薦される程ならば、この程度の依頼で躓く訳には行かないだろう?」
「白金ランク!?それは失礼しました。では、風の遺跡へと案内します。付いて来て下さい」
俺達はダンジョン利用料を払うと、受付嬢の案内で風の遺跡の入口の所までやって来た。
入口の前には受付のような小さな小屋が建っていた。
「ユラムさぁーん、ついに依頼受けてくれる人達が来ましたよぉー!」
受付嬢が小屋に向かってそう叫ぶと、小屋の中からユラムと呼ばれる人が出てきた。
「おお、ついにか!依頼書を見せてくれ!・・・ふむふむ、こっちのでっかいのが金ランクでちっちゃいのが銅ランクか」
「逆だ逆、俺が金ランクだ」
俺がそう伝えると二人は驚いて、目が点になっていた。
いや受付嬢、お前気付いてなかったのか。
「いやはや、これは失礼した。こんなちっちゃいのが金ランクとは、将来が楽しみだなぁ!だがな、このダンジョンはそんなに甘くはない。既に死者も何人も出ている。お前さん達にはそれ相応の覚悟ってモンがあるのか?」
ユラムが発したその言葉、普通の人なら覚悟はあると答えるだろうし、二人もその答えが出て来ると思っているだろう。
だが、俺達は違う。
その答えをヴェレアスが言ってくれた。
「覚悟?そんな物は必要ない。何故なら我々はダンジョンに挑む訳ではない。我々はダンジョンを攻略するのだ。持つのは覚悟ではなく余裕。圧倒的強者による最大級の余裕だ」
「まぁそう言う事だ。心配する必要はない。俺達は確実に依頼を熟し、そして序でに攻略してくるだけだ」
ユラムのその言葉に一瞬驚いたが、直後ワッハッハと笑い出した。
「序でに攻略か!骨のある奴が出て来たもんだ!お前さん達なら心配はいらねぇな!史上初となる風の遺跡の攻略、楽しんで来いよ!」
「楽しむのは良いですけど、ちゃんと依頼も忘れないで下さいね。お二方の健闘を祈ります。頑張って下さい!」
そして俺達はついに、風の遺跡へと乗り込んでいった。
風の遺跡に待ち受ける困難とは?