第76話 神は龍を使役する
絶対神を知る竜とは?
「本当に感謝する・・・絶対神様」
紫の竜は俺に向かってそう告げる。
人間では無い事がバレるのは想定内だが、俺が絶対神である事がバレるのは想定外だぞ。
「俺、お前と会った事あったっけ?」
「まだ我が幼竜の頃だったであろうか。一度命を救って貰った事がある」
幼竜の頃?
そう言えば昔、そんな事もあったような。
あんま覚えてねぇな。
「そうだったのか。それでよく俺だと分かったな」
「あの時、救って貰った記憶。絶対神様の温もり、忘れる筈無かろう」
「そっか、じゃあ隷属より使役の方が良かったな。変えようか」
「いえ、絶対神様の手を煩わせる程ではない」
「俺と共に行くんだ。そんな普通の竜では、俺に合わぬだろう。『神隷解除』『神化』」
竜の体は隷属魔法を掛けた時よりも、高貴で美しい光に包まれる。
紫色だった竜の体は金色になり、翼も以前よりも大きくなった。
「お前の名は『神龍ヴェレアス』だ」
「!?我のような者が絶対神様のの眷属になれるとは至極光栄である」
「取り敢えず、その姿だと目立つから、何か変えれるか?」
「問題はない。絶対神様の眷属となった事で大した力を使わずとも変身出来るようだ」
ヴェレアスは変身魔法を使い、人間の青年の姿に変身する。
「こんな感じでどうだ?」
「ああ、悪くないぞ。俺との関係性は・・・そうだな、兄弟という事にしておこうか。お前が兄な、身長的に」
「分かった。だが絶対神様よ、貴様の力ならば身長を伸ばせば良かったのでは?」
「・・・うん、その手があったか。まぁ急に身長伸ばすと周りの人が驚くだろうからな。もう今更だ。さて、さっさとこの森から出るか」
俺とヴェレアスは共に森から出る事になった。
結局あの緑の魔物は何だったのだろうか。
一応死体は回収しておいたから、後でギルドに調べさせるか。
数分歩き、森の外へ出ると、魔物暴走で出てきた魔物は一掃され、死体の山が築かれていた。
「あ、兄貴ー!そっちはどうでしたかー!」
血の付いた剣を持ったセイルがこっちに駆けてきた。
「ああ、大元は絶った。これで魔物暴走は終わった筈だ」
「流石兄貴です!それで隣の方は?」
「ああ、俺の兄だ。偶然立ち会ってな」
「そうだったんですか!では戻りましょう!皆が待っています!」
俺達はセイルに連れられ、冒険者ギルドに戻ってきた。
「ゼロくん!無事だったんだね!」
「ゼロ、良かった」
レノとアルツが安堵する中、他の冒険者は俺に対してまたしても文句を言ってきた。
「おい、お前!勝手に先に行きやがって!」
「俺達の足を引っ張るなよ!クソガキ!」
俺は無言で倒した緑の魔物を異空間収納から出す。
その光景に文句を言ってきた冒険者は唖然とする。
「この魔物は近付いただけで自爆する。お前らのような無策な人間が突っ込んだ所で死ぬだけだ」
「ぐっ、お前だって無策に突っ込んでんじゃねえか!」
「ハッ、俺が何の考えも無しに突っ込むと思ったか?そもそも倒せる算段がお前にはあるのか?」
その言葉に他の冒険者は黙ってしまった。
「まぁそんな事はどうでも良いんだが、この魔物一体何だ?近付いて自爆するような奴、見た事ないんだが」
「兄貴が見た事ない魔物なんているんですか?」
「でもこの魔物、少しおかしいよ。自然に生まれたとは思えない」
「確かに、という事は、もしかして・・・」
「「「合成獣」」」
竜は動物のほうで、龍は神のほうです。