第70話 神は政治に介入する
イーゼル国王陛下万歳
なんやかんやあって、俺はイーゼルの政務を手伝う事になっていた。
「やっぱり一番の問題はこれなんだよねぇ」
「ああ、卿相の任命か」
卿相とは軍務卿や財務卿等、国王を輔弼する重要な役職だ。
現在、半数近くの卿相が空席となっており、その為政務が滞っているのだ。
「うん、調べてみたら職権濫用や汚職する卿相が結構いてね。このまま任命しても、同じ事が繰り返されそうで。ゼロ、何か良い案無い?」
俺に振られても。
職権濫用とか汚職とか、結局は本人の意識次第だし。
変えるなら組織ごと変えないといけないな。
「そうだな。職権濫用や汚職が起きるんなら、やれる範囲を狭めればいい」
「どういう事?」
「つまり、既存の卿相を分割するという事だ。自らの仕事内容がある程度限定されていれば、それに反れれば直ぐに気付ける。尤も、卿相の分割は監督者の管理がしっかりしていないと成り立たない。前国王だったら駄目だったが、イーゼルならこっちの方が良いかもしれないな」
そう言えば、俺が神界で統治していた時の統治機構がこんな感じだったな。
「卿相の分割、確かに良い案かもしれないね。でもどんな風に分割するんだ?分割の度合いによっては人事が凄く大変だけど」
「そうだな。なら俺が神代でやっていた統治機構を参考にしよう」
「神代の?」
「ああ、それを元に分割するならこんな感じだな」
内務卿
外務卿
法務卿
財務卿
厚生労働卿
国家公安卿
農商務卿
国土交通卿
郵政逓信卿
軍務卿
文部卿
宮内卿(宰相)
神祇卿(枢機卿)
「聞いた事の無い卿相もあるんだね。これに見合う人いるかな?」
「まぁいなければイーゼルが兼任すればいい。国王自身が兼任する分には問題無いからな。まぁこれだけ分割すれば、大分やりやすいんじゃないか?」
「そうだね、これを採用しよう。なんたって絶対神様が作った機構だからね!」
「イーゼルお前」
「もう僕は君に容赦しないからね。絶対神様なんだからそれに見合うのがないと。あ、今度男爵に陞爵させるからよろしく!」
「・・・そう言う時だけ生き生きしてるよな」
結果、卿相の人事は以下の通りとなった。
内務卿:レーゼンバーグ公爵
外務卿:イーゼル国王
法務卿:フェルアーマ公爵
財務卿:ヴォルクス公爵
厚生労働卿:イーゼル国王
国家公安卿:イーゼル国王
農商務卿:イーゼル国王
国土交通卿:メーメル公爵
郵政逓信卿:イーゼル国王
軍務卿:ソーンダイク公爵
文部卿:イーゼル国王
宮内卿(宰相):ヴェストファリ公爵
神祇卿(枢機卿):ルベスシューター公爵
「イーゼル兼任多いな」
「仕方ないよ。有能な人は今回の騒動で失脚したんだから」
「軍務卿は兎も角、内務、法務、財務、国土交通は五英傑の家か」
「そうだね。彼らは元々卿相だったからね。あと一応枢機卿はそのまま変えてないよ」
「枢機卿は信仰の能力を持つルベスシューター家しか務まらないだろうからな。まぁ敵対しても神託でゴリ押すので問題はないが、宰相のヴェストファリ公爵って誰だ?」
「ああ、僕の婚約者の家の当主だね」
「あー成程」
「いやぁ、本当に有難う。お蔭で何とか回りそうだよ。あっ、有難うございました、絶対神様」
「態々言い換える必要ある!?」
「まぁ、無いね」
この後、イーゼルは任命式の準備をすると言うので、俺はイーゼルの部屋を後にした。
流石にこれ以上介入するつもりはない。
まぁ後はイーゼルの手腕次第だが、心配はいらなそうだな。
問題は俺に対する態度がブレているぐらいだが、寧ろ謙られるよりはマシなので、良しとしておこう。
神よ国王イーゼルを護り給え