第69話 神と聖者の行進(顛末)
神と聖者の行進、今回で完結です。
イーゼルが演説を終えた直後、まだ国民の熱気も冷めやらぬ中、俺はルナとカーシャの元に戻ってきた。
「ただいま」
「あっ、ゼロくん!何処行ってたの?」
「本当ですわ!絶対神様が降臨なさったり、王子殿下の演説といい、ほんと凄かったのですよ!」
ルナとカーシャも他の人達と同じで、この出来事に興奮している。
イーゼルの演説は兎も角、神の降臨、正確には声だけだが、この事は上手い方向に作用したようだ。
まず国民はほぼ全員が絶対神を信仰、崇拝している。
その中で絶対神の神託はそれこそ絶対となる。
国王、いやもう前国王か、そいつと枢機卿は神の意に反したという史上最悪のレッテルを張られただろう。
まぁこの二人は失脚出来たとして、イーゼルが国王になっても一部の貴族はまだ対抗する可能性がある。
流石に歯向かえば神託に背く事になるので、そんな事をする貴族もいないと信じたいが。
まぁその辺はイーゼルと要相談だな。
「ゼロくんゼロくん、この後は後夜祭があるからね!一杯楽しもっ!」
「そうですわ、私は前夜祭には行けませんでしたので、この機械に沢山ゼロ様と思い出を作りますわよ!」
「・・・え、後夜祭とかあんの?」
この後、俺はルナとカーシャに連れ回される結果となった。
翌日、国民は、前国王暗殺に対するショックよりも新国王即位に対する歓びが大きく、然程混乱は起きなかった。
しかし、王城では未だに混乱が起こっていた。
それもその筈、元々前国王側に付いていた者の多くが失脚し、政務に支障を来したのだ。
そのせいでイーゼルは国王初日に大量の事務処理を抱える事となった。
「・・・大変そうだな」
「見てるだけなら手伝ってよ」
俺はイーゼルの様子を見に、王城へ赴いていた。
正確には国王の部屋に直接転移しただけなのだが。
俺はイーゼルの事務処理を手伝いながら、イーゼルと話した。
「それにしても上手く行ったな。あの時のイーゼルの演説は完璧だったぞ」
「全く、多少は察していたとはいえ、あんな方法を取るなんて、本物の絶対神様に失礼だよ」
「本人はそんな事思ってないから大丈夫だ」
「え?」
「それよりあの枢機卿はどうなったんだ?」
「・・・一応投獄してある。国民を洗脳した事は重罪だからね」
「そうか。それとイリス派閥はどうなった?彼女も王位を主張してたんだろ?」
「ああ、姉上は・・・」
『絶対神様の神託ならば仕方ありませんね。イーゼルに王位を譲りましょう。ですが、絶対神様の期待に似わなければ、直ぐに私が王位を請求致しますわ』
「・・・って言ってたから当分は大丈夫だよ」
「へぇー、案外簡単に引き下がるんだな」
「姉上も''君''の崇拝者だからね」
「あー、国民の殆どは絶対神信仰だったな。王家でも例外は無かったか」
「・・・」
「どうした?イーゼル」
「''君''の崇拝者って言ったのに否定しなかったね」
「あ、そう言えばそうだな。じゃあ否定しよう」
「いや遅いよ!?」
「まぁこんな所でそんな権限使わないから安心しろ」
「・・・僕はこれから敬語で話せばいいのかな?」
「やめてくれ。前世もそうだが、親しい者に敬われるのはちょっとな」
「助かるよ。僕も今までの言動で神罰が下されないかヒヤヒヤしたよ」
「んな事で神罰等下せるか。ああ、あとこの件は内密にな。バレたら多分国民が発狂する」
「勿論分かっているけど、何故この事を僕に?今でも大分驚きと畏怖が混ざったような感情だけど」
「まぁ、一応俺を祀る国のトップな訳だし、イーゼルに言っておいた方が何かと融通が効くと思って」
「うん、確かに僕の中にある謎が解けた訳だけど・・・ちょっとやって良い?」
「ん、何をだ?」
イーゼルは俺の前で跪き、頭を低れた。
「絶対神様、お会い出来て光栄です。絶対神様が生み出しなされた神の子の子孫として、万感胸に迫る思いでございます」
「・・・やりたかった事はそれか」
「一応君は絶対神様なんだよ?一度くらいやっておかないと落ち着かない」
そう言うもんなのか。
まぁ俺の正体を知っても、あまり動じないのは流石イーゼルだな。
ゼロの正体をイーゼルに話した事で起こるゼロにとってのメリットとは?