第68話 神と聖者の行進(降臨)
神の処刑
俺は演説中の国王にライフルモードの銃剣ラグナロクを向ける。
狙うは脳幹。
心臓では撃たれた直後からでも死ぬまで数十秒程のタイムラグがある。
その間に回復魔法で回復されたら意味がない。
脳幹はほぼラグなしで即死させる事が出来る。
まぁこの距離だと、心臓より脳幹を狙う方が遥かに難易度が高いが。
だが、一般的に神族の動体視力は人間の数十倍を誇る。
俺であれば、数十キロ先でも正確に狙撃出来るだろう。
スコープなんていらねぇんだよ。
さて、枢機卿が魔法陣を起動し始めたな。
それじゃ、サクッと殺しますか。
ダァン!
俺は銃剣ラグナロクの引き金を絞り、発砲する。
放たれた魔力弾は一直線に飛んでいき、国王の脳幹を貫く。
国王が倒れるのを目視で確認した俺は次の行動に移す。
~ルナ&カーシャside~
王都の国民は混乱を極めていた。
その中にいるルナとカーシャも例外ではない。
「え?え?一体何が起こったの?」
「国王陛下が!?」
突然頭から血を吹き出すのを見た二人は、恐怖で身を竦めてしまった。
二人ともゼロに早く戻って来て欲しいと思いながら、その場に立ち尽くしていた。
すると、国王の後ろにある白い光から、聞き慣れない声が聞こえてきた。
『心して聞け、人間共よ』
その声は白い光の中から聞こえてくる。
強い光のせいか姿が確認出来ないが、国民全員がその光と声に注目している。
『我はリュート=グロース、この国が祀る絶対神也』
自らを絶対神だと告げる声に、国民は混乱半分、驚喜半分。
特に枢機卿は念願の絶対神を降臨させた事で、喜びに打ち拉がれていた。
「あ、ああ、絶対神様。この時を、どれだけ待ち望んだ事か。絶対神様!私の言葉をお聞きください!!」
枢機卿はその声の聞こえる方に向かってそう叫ぶ。
『必要ない。既に神罰は下された。そこの国王と枢機卿は、我の意に反している。そもそも、我を降臨させようとした事自体が神への反逆だ。国民よ、我が直接神託を下す。次なる国王は第一王子とする。新国王と共に、傾国を立て直せ』
その言葉を最後に、神の声と白い光は消滅した。
~イーゼルside~
イーゼルはこの光景を国王の側で見ていた。
「・・・ゼロ、まさか神託を利用するなんて誰も思わないよ。はあ、ゼロが本当の絶対神様に神罰を下されないかが心配だよ。でもまぁ、この状況を作り出したゼロには感謝だね。さぁ後は僕の仕事だ!」
イーゼルは王都の外に待機してあった秘密部隊に、国王の片付けと枢機卿の確保を依頼し、イーゼル自身は国王がいた演説台に立った。
「国民の皆、聞いてくれ!僕は第一王子、イーゼル=グランツだ!絶対神様が仰ったように、国王陛下と枢機卿は国民を使って戦争をしようとしていた!彼らは君達を道具としてしか見ていなかった!その結果、今この国は滅亡へと傾いている!僕はこの国を根本から変える!この国を絶対神様を祀るに相応しい国に生まれ変わらせる!僕は絶対神様の神託を受け、今ここにイーゼル=グランツは、グランツ王国第7代国王に即位する事を宣言する!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
周りの国民からの大きな歓声が王都中に響き渡る。
国民の中には新たな王の誕生に涙を流したり、通りのど真ん中で踊り始めたりと、別の意味で建国祭は盛況したのだった。
~ゼロside~
俺は自らの声を変え、魔法転送で光の中から声が聞こえるように設定した。
まぁ俺あんな口調じゃないけど、それっぽさは出ただろ。
イーゼルは声の正体が俺だと気付くだろうが、まさか絶対神本人だとは思わないだろうな。
「しっかし、イーゼルも中々やるな。あの混乱状態を鎮めるとは。やっぱりイーゼルには国王の素質があるな」
イーゼルが国王になった事により、この国の絶対主義体制は崩壊するだろう。
そもそも絶対主義は人間には向かん。
かと言って立憲君主制や共和制も問題はあるが。
さて、イーゼルはこの国をどのように導くのか、楽しみだな。
グランツ王国第7代国王イーゼル=グランツ即位!