第66話 神と聖者の行進(陰謀)
枢機卿の狙いとは?
まさか、そう言う事か!
この魔法陣と神域、やる事は恐らく・・・神の降臨だ!
だが一体何の神を降ろそうとしているんだ?
そう言えばこの教会が信仰している神って・・・
あ、俺かぁ!
待てよ、そもそも神を降ろす魔法なんて存在しないぞ。
神を降ろすには魔力じゃなく神力が必要だからな。
という事はこの魔法は確実に失敗するな。
降臨させようとしている神は既にここにいる訳だし。
うーん、結局失敗するなら、特に気を張る必要は無くなるのか?
でも魔法が暴発しないとも限らないし。
そもそも教会は成功する前提で動くだろうし・・・
「どうしたの?ゼロくん、そんなに考え込んで」
「あ、ああ、何でもない。それより国王の演説って何時からだ?」
「確か14時からだったから・・・あっ、もうすぐだね!」
ルナがそう言った直後、俺は異様な気配を感じた。
「!?『完全防御結界』!!」
俺は咄嗟にルナとカーシャを覆うように結界を張った。
「え?どうしたの?ゼロくん!」
「これは結界ですか?ですがどうして突然・・・周りの様子が!」
カーシャがそう言うと、さっきまで熱狂していた国民が急に静まり、国王が演説する場所へと無心で向かっていく。
「な、何これ?一体どういう事?」
「何が起こっておりますの!?」
国民はまるで洗脳されたの如く、無表情で歩いていく。
普通の人間にここまでの洗脳は出来ない筈、という事は矢張り神域の力か?
神域を経由して魔力を増幅させたのか?
教会、もとい枢機卿の能力は信仰だ。
解釈次第では信仰心を操り、洗脳する事は出来なくはない。
だが、神域経由の能力行使は信仰の能力外。
つまり、枢機卿は・・・重複能力。
信仰の能力の他に神域に関する能力を持っていると考えた方が妥当だ。
しかし、これだけの人間を洗脳させて何をさせるつもりだ?
「ルナ、カーシャ、この場から絶対に離れるな」
「ゼロ様はどうなされるのですか?」
「イーゼルの所へ行く。一番マズイのはイーゼルが国王側に着く事だ!『転移』」
俺は転移魔法で転移する。
「ゼロくん、一体どうしたんだろう?」
「分かりません。ですが、ゼロ様の事ですからきっと大丈夫ですよ」
「そ、そうだよね。ゼロくんなら大丈夫だよね」
~国王side~
「これはこれはルベスシューター枢機卿、上手く行きましたかな?」
「国王陛下、順調ですよ。まずは私の能力で信仰心は陛下に向いています。後は陛下が素晴らしい演説をするだけですよ」
「流石であるな枢機卿。では、余はそろそろ参ろう」
「ええ、演説楽しみにしておりますよ」
~ゼロside~
俺はイーゼルの所に転移した。
イーゼルの顔を見ると、目の色は失っており、無表情で歩いている。
「はあ、これに気付けて良かったな。『洗脳解放』」
俺は指を鳴らし、魔法を発動させる。
洗脳解放は俺と関わりがある相手に限り、あらゆる洗脳を解く事が出来る魔法だ。
「・・・はっ、あれ?ゼロ、こんな所でどうしたの?」
俺はここまでの推測をイーゼルに説明する。
「成程、僕が分かっている事を合わせると、これは最悪な事態になっているな」
「どういう事だ?」
「枢機卿は信仰で父上に信仰を向けさせている。この状態で父上が演説するんだ。やる事は一つ」
「・・・宣戦布告」
「そう。国民の中には開戦反対する人もいたけど、洗脳させればその心配は払拭される。マズイよ。このタイミングで宣戦布告なんかしたら、国内が一気に戦争モードになる。このままじゃ・・・」
「イーゼル、俺は予定通り国王の暗殺を実行する。全てを俺のシナリオ通りに、完璧な状況を創造する」
「え?どういう事!?」
「イーゼルは何も考えず、洗脳されたフリをしていればいい。ここで全てを終わらせる」
神を降臨させようとしているなら、本当に降臨させてやろう。
全ては俺の手中に入った。
さあ、この腐った国を終わらせよう!
全ては神のシナリオ通りに