第65話 神と聖者の行進(思惑)
それぞれの思惑が交差する
「で、何で二人は俺の腕を掴んでいるんだ?」
ルナは右腕をカーシャは左腕を掴んで歩いている。
歩きにくいし、暑いんだが。
「それは勿論、ゼロ様の婚約者だからですわ!」
そんな堂々と言われても、まだ正式じゃないんだけど、カーシャはもうそのつもりなのね。
「ゼロくんに変な虫が付かないように、恋人アピールをと。あ、今更だけど凄く恥ずかしくなってきたぁぁ」
ルナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
恥ずかしいならやらなきゃ良いのに、まだ俺の腕を掴んでいるし。
「あ、そういえばカーシャって、イーゼルからあの事を聞いているのか?」
「はい、存じておりますわ。イーゼル王子殿下の王位継承戦をサポートするのですよね?」
あ、そう言う風に伝えたのか。
イーゼルにしてはやるな。
「ああ、だからイーゼルを仇なす者は片っ端から叩き潰す」
「頑張ってね、ゼロくん!」
「私も応援しますわ!」
とはいえ、まだ何も起こっていない以上、探っても無意味だからな。
教会だけが何か仕掛けてくるとは限らないし、それに・・・この人の多さだ。
起こる内容によっては最悪の災害になるぞ。
それだけは絶対に防がなければ。
~イーゼルside~
イーゼルは王城の中にある軍務卿室へと入った。
「ソーンダイク軍務卿、軍の配置は順調ですか?」
「イーゼル王子殿下!はい、滞りなく進んでおります。しかし、一つ気掛かりな事が」
「気掛かりな事だと?」
「はい、実はその配置を考案したのは枢機卿のゴラック=ルベスシューター公爵で」
「枢機卿!?何故教会の人間が軍に口を出せるんだ?」
「分かりません。ですが、何かしらの思惑があるのかと」
「・・・ソーンダイク軍務卿、"アレ"の動員を頼む」
「!?"アレ"ですか?分かりました。早急に動員します!」
ソーンダイク軍務卿は"アレ"の動員の為、部屋を出ていった。
「これは・・・流石のゼロでも相当マズイ事になるかも知れないな」
~枢機卿side~
教会のトップ、ゴラック=ルベスシューター枢機卿は教会の地下にある巨大な魔法陣を前に佇んでいた。
「漸く完成したようだな。ここまで、本当に長かった。だが、今日全てが変わる!我らが絶対神様の力で、この国を変えるのだ!」
~国王side~
国王カイロス=グランツもまた、王座の間で一人佇んでいた。
「国王陛下、失礼します。ルベスシューター枢機卿からの報告で、全ての準備は整ったと。いつでも機動出来るようです」
「分かった。ウィンドーラ宰相よ、上手くいくと思うか?」
「は、私の天眼でも、問題はありません」
「そうか、もう下がって良いぞ」
「はっ」
ウィンドーラ宰相は王座の間を後にした。
「クックックッ、漸く完成したか。余はこの日を待ちわびていたぞ!これで余は、世界を制する者となろう!クックックッ、フッハッハッハッハツ」
~???side~
「あ~あ、あの魔法陣完成しちゃったらしいよ?どうするのリーダー」
「問題無い。今更あの国が動こうが我らの敵ではない」
「それもそうだよね~。じゃああの国にいるアイツにそう連絡しておくね~」
「うむ、頼んだ」
~ゼロside~
俺はルナとカーシャと様々なイベントを周りながら、不穏な動きがないかどうかを警戒していた。
その中で気になる事が二つ。
一つは軍の配置だ。
全てを確認した訳ではないが、軍を配置するならもっと人が多い所とか、そう言う所に配置されるのが普通だが、軍の一部は全く関係ない所に配置されているようだ。
まるで王城を中心に円を描くような。
・・・・・・・・・やっぱり神域の範囲と軍の配置が重なっているな。
範囲の縁の外には一切の軍が配置されていない。
そしてもう一つはこれに関係ある事だが、地下から巨大な力を感じる。
これも神域の範囲と同じだ。
・・・これは、人間を使った魔法陣か?
それにしては大掛かりだな。
このレベルだと、神に匹敵するほどの・・・
まさか、そう言う事か!
ゼロは何に気付いたのか?