第63話 神と聖者の行進(前夜祭)
今回はゼロとルナが惚気る話です。嵐の前の静寂。
ルーヴァー暦、このルーヴァー大陸おいて使用されている暦だ。
絶対神リュート=グロースが転生した年を1年とし、今年はルーヴァー暦2000年となる。
グランツ王国が建国されたのはルーヴァー暦1900年、そして今年で建国100周年となる。
今年の建国祭は前年以前の建国祭とは違い、ミレニアムという事もあり、国民は非常に熱狂するだろう。
本来なら建国祭は1日のみであるが、今年はこの熱狂を見て、国民は自ら前夜祭を開催する事になった。
「という理由で前夜祭が開かれるので、ゼロくん行こう!」
ルナは俺を連れ王都の大通へ向かう。
辺りを見渡すと通りには出店が建ち並び、夜にも関わらず大勢の人で賑わっていた。
「そういえばルナ、カーシャは呼ばなくて良かったのか?」
「うん、カーシャにも誘ったんだけど用事があるから無理だって」
「そうか、まぁ明日一緒に行動するから別に良いか」
ベルナリン伯爵家について尋ねたい事もあったが、まぁ明日訊くか。
取り敢えず今日の前夜祭は特に問題は無さそうだな。
国ではなく国民主催らしいし。
流石に干渉は無さそうだな。
それにしてもこの感じ、まんま夏祭りだな。
「どうしたのゼロくん?ぼぅっとして?ほら、今日は二人なんだからさ。一緒に楽しもう?」
「・・・ああ、そうだな」
俺とルナは手を繋ぎ、通りを歩いていった。
因みにルナは顔を真っ赤にしているが、どうしたんだ?
「あっ、ゼロくん。私あれやりたい!」
ルナが指差した出店は的当て屋だった。
ボールを3回投げて、景品を当てる奴か。
「的当てか。じゃあやろうか」
「うん!」
「いらっしゃい!一回300リコルだよ!」
俺達は銅貨3枚を店主に渡し、的当てに挑む事になった。
「そりゃあああ!」
ルナは勢いよくボールを投げるが、明後日の方向に飛んでいってしまい、3球とも景品に当てる事は出来なかった。
「あー、当たらなかったぁ」
ルナの目を見ていると、ある一点を狙って投げていた。
あれはぬいぐるみか?
ルナはあれが欲しかったんだろうな。
「次はゼロくんの番だよ、頑張って!」
「ああ、任せろ」
俺はルナが狙っていたであろうぬいぐるみを目掛けてボールを投げる。
すると、ボールはぬいぐるみの頭部に当たり、後ろに倒れる。
「おめでとう!一発とはやるな坊主!はい、景品だ」
「ゼロくん、これって」
「ルナ、さっきからこれ狙ってたろ?はい、ルナへのプレゼントだ」
「ゼロくん・・・有難う!」
店主はこの光景を見てニヤニヤしていたが、残りの2球も景品に当てると、吃驚した表情をしながら、景品を渡して貰った。
「まぁ、当然だな」
「ゼロくん凄い!」
「あ、赤字だぁぁ・・・」
的当てが終わり、再び通りを歩いていった。
途中屋台で買い食いをしたり、他の店で店主を泣かせたりしながら、前夜祭を満喫していた。
そしてもう直ぐ前夜祭が終わる午後11時、俺達は大通の中央にある時計台を登った。
前夜祭の最後には花火が上がり、夜空に彩りを与えていた。
「綺麗だね・・・」
「ああ、そうだな」
「イーゼルくんから聞いたよ、明日の事。何かが起こるんだよね?」
「(イーゼル、何話しているんだよ)」
「私ね、ゼロくんが心配なの。ゼロくんなら大丈夫と分かっていても」
「・・・安心しろ。俺はそんなに柔じゃない。それに・・・」
「それに?」
「たとえ何が起ころうとも、ルナは俺が絶対に守る。だから安心しろ」
「!ゼロくん・・・」
最後の花火が上がり、前夜祭は終了した。
夜空には静寂と数多の星が瞬いていた。
「・・・あれが夏の大三角だね」
「ああ、はくちょう座α星デネヴ、わし座α星アルタイル、こと座α星ベガだな」
「アルタイルとベガ・・・ふふっ」
「どうしたんだ?」
「何でもないよ!(*´∇`*)」
こうして俺とルナは星空を見ながら、二人の夜を過ごしていった。
~???side~
「ふっふっふ、遂に準備は整った!明日、明日だ!ふっふっふ、はっはっはっはっは!!」
「笑い過ぎですぞ。いやしかし漸く、我が悲願が達成される。いやぁ実に長かったな」
「全くだ、ここまで来るのにどれだけ苦労した事か」
「これで我らが権力を得る日も近いですな!」
「ああ、そうだ!これが成功すれば、この国だけではない。この大陸全てが手に入ると言って良い!全く楽しみで夜しか眠れないな!」
「それは正常ですぞ。しかし儀式が成功したとしても、本当に降臨なさるのか?」
「問題無い、我らの計画は完璧だ。必ずや降臨させるぞ、我が"絶対神"様を!!」
「それでは明日の為に今日はもう寝るとするか」
「肯定だ」
今回は最後の部分以外にも伏線を用意してあります。是非推理して見てください。