第62話 神は不穏を察する
第1章の残った伏線を回収出来るように頑張れ、俺
これはゼロがセイル達と模擬戦をしている間の出来事である。
「(・・・?何だ?念話か?)」
『オ久シブリデス、絶対神様』
『不死神か、どうした?』
『少シ、妙ナ事ガアリマシテ。神域ハゴ存ジデスカ?』
『神域?ああ、神の宿る場所か。ここだと教会だな』
『ソノ神域ガ不自然ナ広ガリ方ヲシテイテ、近々人ガ集マルヨウナ大規模ナ出来事ハアリマスカ?』
『・・・建国祭か。今は王都の外に居るから、その神域の変化に気付かなかったな』
『一体ドウナサイマショウカ?』
『恐らく何か起こるとすれば来週の建国祭だ。一応こちらも調べてみる。不死神は何か分かったら念話してくれ』
『分カリマシタ』
神域、神代での概念では、ただ単に神の居る場所を表していた。
だが現代では神を祀る教会が神域となっている。
その神域が不自然な広がりをしている。
つまり、神域が教会以外の所で広がっているという事か?
神域を意図的に操作出来るのは教会の人間ぐらいか?
だが信仰の能力に神域を広げる事が出来るなんて聞いた事が無いぞ。
取り敢えず、全ては建国祭だ。
建国祭で何かが起こる。
暫く警戒しておく必要があるな。
「ハァ、ハァ、全然当たらない」
セイル達はその場に座り込んだ。
いつの間にか30分は経過していたようだな。
さて、一端冒険者活動を休止して、そっちの調査に専念するか。
建国祭前日
矢張り目立った動きは無かったか。
となると建国祭当日に動く可能性が高いな。
当日となると俺とルナとカーシャで回る予定だから無理に動けないな。
いや、寧ろ相手に悟られずに動く事は出来るのか。
はぁ、この時代だと分からない事が多いな。
しゃーなしでイーゼルに協力してもらうか。
「・・・という訳だ。何か心当たりあるか?イーゼル」
「神域か。それが何を意味しているのかは分からないけど、確実に教会が絡んでいる事は確かだね」
「ああ、明日建国祭当日の王族の予定とか分かるか?」
「勿論把握している。何を知りたいんだ?」
「全体もそうだが、一番は国王だな」
「父上?まさか・・・!」
「ああ、暗殺するには最高のタイミングだろ?」
「確かに、タイミング的にはこれ以上の時は無い。だけど君が言った姉上側の貴族の失脚はまだ難しいよ?」
「問題ない。恐らく教会はイリス側に付いている筈だ。今回教会が何をするかは知らんが、やりようによっては両方潰せる」
「・・・分かった。全て君に任せるよ。父上は明日、国立闘技場で建国100周年演説を行う。狙うならそこだよ。くれぐれも目立たないように」
「分かっているさ」
まぁ教会の動きによってはどうなるかは分からんがな。
さて、この事をルナやカーシャに伝えるべきか。
俺と一緒に居る以上、知っておいた方が動きやすいが。
・・・そういえばルナは兎も角何故カーシャは俺との婚約を望んだんだ?
カーシャ=ベルナリンは伯爵家、彼女の独断で勝手に婚約者を決めるのは不自然だ。
まぁそう言う家柄かも知れないが、カーシャは俺が名誉爵になる前から俺を見ていた。
一体どういう事だ?
ベルナリン伯爵家・・・まだ婚約までには2年ある。
その時までに考えておこう。
いや、俺の誕生日8月だからもう直ぐ1年を切るのか。
謎が謎を呼ぶ