第57話 神達は武器を作る
楽しい楽しい武器製造
「能力がもう一つあるって、どういう事!?」
ブラントの疑問は尤もだ。
そもそも二つの能力を持っている人自体、神代でも珍しかったからな。
珍しいだけで居ない訳では無かったが。
「ああ、恐らくは無意識に修繕の一部と思い込んでいる筈だ。ブラント、魔道具の欠損箇所をどうやって見つけているんだ?」
「えっと、観察眼って言うのがあって、それを使って」
矢張りな、修繕の能力はその名の通り、物の修理に特化した能力、観察眼なんてある訳無いのだ。
「その観察眼がブラントの二つ目の能力だ。詳しい能力の内容は分からんが、ブラントは重複能力で間違いないだろう」
「重複能力?そんな人が居るのか?」
「ライト、目の前に居るぞ」
「いや、そんな事は分かっているけどさ」
「兎に角、ライトの能力とブラントの二つ目の能力を使えば、このガンブレードを作れるという事だ」
「俄には信じられないけど、ゼロがそう言うならそうなんだね。僕に修繕以外の能力があるなんて・・・」
「ああ、俺もこの時代に重複能力を持つ者が居るとは思わなかったぞ」
「「この時代?」」
「あ、いや何でもない。早速作ろう」
俺は自分の失言を適当に誤魔化し、二人に作業を促す。
ライトの能力、設計。
この能力は二種類の用途がある。
一つ目は即興創造、ライトが能力計測の時に設計で作った槍のように、一定時間のみ実体化させ、任意のタイミングで消滅させる事が出来る。
二つ目は半永久的創造、設計で作った物に魔力を纏わせ、一体化させる事によって、その実体を保つ事が出来る。
このように設計は創造の劣化版とも言える能力だが、それでも十分すぎる効果を齎す。
そもそも俺の能力を使ってこれを創るとなると、神の力を数%いちいち解放しないといけないので面倒だ、という訳でライトに作らせるという事だが。
今回使うのは勿論二つ目の半永久的創造だ。
今、ライトが設計によって大まかな形が出来ており、ブラントの観察眼によって細かい所まで精巧に設計されていく。
「ゼロ、このままじゃ僕の魔力が足りない!」
ライトがそう叫ぶ。
流石にこれ程精巧な作りになると、相当な魔力を持っていかれるようだ。
このままでは即興創造になってしまうな。
俺は武器の補強の意味も込め、これを半永久的創造にする為に、魔力を流し込む。
すると、設計された武器は虹色に光り、その形を為していく。
数分後、ライトの設計が終了し、ガンブレードが完成した。
「や、やっと出来たぁ」
「ちょ、ちょっと疲れたよ」
ライトとブラントが腰を下ろす。
やっぱり魔力消費が激しいのか、俺には分からん感覚だな。
「お疲れ、二人のお蔭で望み通りの物が出来たさ」
俺は出来上がったガンブレードを持ち上げ、二人に見せる。
「これが、ガンブレード?」
「ああ、これはブレードモード。普通に剣として使う時の形態だな。そして、ここをこうやると・・・」
ガンブレードの柄と刃の間を手前に折り、刃をスライドさせると柄の中から銃口が現れる。
「これがガンブレードの真骨頂、ガンモードだ。ここに魔力を込めると、魔力弾を放つ事が出来る。普通に魔力弾を放つより速度が出るし、連射出来るから戦闘でも便利なんだ」
二人は俺の解説を聴いて、へぇーといった表情をしている。
魔力弾を放つ銃は神代では割と一般的だったんだが、この時代に無いせいか、二人の反応は思っていたより薄かった。
まぁしゃーない。
だがギミックはこれだけではない、ライトが設計している時に俺はある魔法を使っていた。
それは形態変化だ。
ガンモードやブレードモードは別に使わなくても形態変化出来る、というか機構的に自動で変化出来るので必要無かったが、俺はあと一つ形態を変化させる為にこの魔法を使った。
その名もライフルモード。
ガンモードにおいて、ある特定の魔力を流し込むと、柄が伸びてライフルのような形状になり、近接射撃だけでなく遠距離射撃も可能になる。
やっぱり国王暗殺には遠距離狙撃だよね!
という訳でライフルモードに出来るようにしたという事だ。
「それでゼロ、この武器の名前はどうするの?ガンブレードって武器の名称でしょ?」
名前?ああそう言えばあの鉄剣の時も名前付けたな。
別に俺はガンブレードのままで良かったんだけど、そう言われるとどうしようかな。
「そうだな、『銃剣ラグナロク』にしようかな」
「銃剣ラグナロク・・・名前からしてなんか凄そう」
「そうだね、こんな武器を僕達が作ったんだよね」
銃という概念が無い分、二人はこの武器がどう戦闘に活きるかは良く分かっていないようだったが、名前の響きで凄い武器だと感じたようだ。
俺、名付けのセンスあるな。
「じゃあお礼に二人にはこれをあげよう」
俺は異空間収納から二枚の御札を取り出す。
「ゼロ、これは?」
「俺の魔力を込めた御札だ。これがあれば自身の魔力が無くても魔法を発動する事が出来る。まぁ要はお守りだな」
「こんな凄い物を・・・有難う!」
「ああ、大事にするよ!」
俺は二人に御札を渡し、ライトの家を去った。
因みに御札には『付与異次元』が付いている。
万が一の際には二人を助けてくれるだろう。
そう思いながら俺は冒険者ギルドへと向かった。
神々の運命