第52話 神は冒険者になる(後編)
冒険者の説明の続きです。
冒険者はある程度自由であるが、当然誓約も存在する。
それは依頼失敗の時の違約金である。
失敗した場合は依頼報酬の3割を支払わなければならない。
これがあるのは無闇矢鱈に依頼を受けるのを防ぐ為である。
そしてそれはランクにも影響し、依頼失敗率が高いとランクを降格される場合があるのだ。
そしてランク降格よりも更に重いのがランク剥奪である。
これは冒険者の一切の権能を剥奪されるだけでなく、二度と冒険者になる事が出来るなくなるのである。
しかしランク剥奪はそれに相応する重大な違反がない限り滅多に起こらない。
「とまぁ重要な事はこれくらいかな?分からない事があったらお姉さんに何でも訊きなさい!」
「ありがとうございます」
俺は説明を聞き終わって近くで待機していると、書類を渡した受付の女性が血相を変えてやって来た。
「ゼ、ゼ、ゼロさん!今すぐこっちに来てください!早く!」
俺は何をそんなに焦っているのかと思いながら、受付の女性に連れられ受付の奥へと向かった。
着いた先は他のとは明らかに違った扉の前だった。
受付の女性に促され、俺がその扉を開けると、中年の男性が座っていた。
「君がゼロ=グランディオ君だね?私はここのギルドの本部長を務めている、ザンダ=フリューセルだ」
「はあ、それで呼び出すって事は何か問題でもありましたか?」
ザンダはイーゼルの紹介状を掲げてこう言った。
「いや、まさか君を紹介したのが、イーゼル王子殿下だと思わなかったぞ。それに全属性保持者と来たもんだ。この紹介状が無かったら信じてなかったぞ」
「へぇ、紹介状には何と?」
ザンダは俺にイーゼルが書いた紹介状を見せる。
『ここに来るゼロ=グランディオは元平民だけど規格外だから、ある程度優遇してあげてね。byイーゼル=グランツ』
「あー、うん。凄いシンプル」
「そこじゃないが・・・。まぁ要件を話そう。イーゼル王子殿下が言うように君が本当に規格外なら鉄ランクから始めても良いのかと思ってね」
「いや、普通に鉄から始めたい。今日冒険者になった奴がいきなり鉄以外だったらおかしいと思われるでしょう?」
「そうか、それなら良いんだ。それともう一つ、本当に全属性保持者か確かめたい。この後、この建物の裏にある簡易闘技場に来てもらえないか?」
「別に問題ないですよ」
「助かる。それと簡易闘技場を使うと勝手にギャラリーが来るんだがそれも問題ないか?」
「・・・まぁ別に」
「それじゃあ彼女に案内して貰ってくれ」
「はい!案内します。ゼロさん、こちらです」
俺は受付の女性に連れられ、簡易闘技場に向かった。
簡易闘技場に向かって待機していると、周りに多くのギャラリーが集まってくる。
受付の女性曰く、この闘技場を使うのは書類の申告に異議がある時が多いらしく、俺のようなパターンは特殊らしい。
まぁだろうな。
「待たせたな、始めよう」
ザンダが的をセットし俺に声を掛けてくる。
俺が定位置につくと周りのギャラリーから声が聞こえてくる。
「あのガキが虚偽申告したのか?」
「どうせ見栄張りたいんだろ?平民だから」
酷い言われようだな。
それは兎も角、全属性保持者って事をどうやって証明しようかな?
普通に全属性一発ずつ撃とうかな?
・・・そうだ、アレにしよう。
俺は両手を広げて八つの魔法陣を同時に展開する。
そして、それぞれ火属性、水属性、雷属性、風属性、土属性、光属性、闇属性、無属性の魔法を発動させる。
『全属性八門総砲』
八つの魔法が的に向かい、そして着弾する。
うん、初めて同時に全属性を放ったが、割と上手くいかなかったな。
やっぱ実戦で使う為にはもうちょっと出力調整した方が良いな。
「な、何だアレは!?」
「八つの魔法陣を同時に!?」
「それよりもアイツ、全ての属性魔法を撃ったんじゃないか!?」
「あんなガキが・・・」
まぁ俺を知らない奴からしたらそう言う反応をするわな。
「で、本部長。これで確認出来たか?」
「あ、ああ確認した。早速冒険者カードを発行しよう」
そして冒険者カードが発行され、俺は冒険者となった。
サクサク進みたい(願望)