第4話 神は的を破壊する
「では、これより能力による実技試験を始める!呼ばれた者から前に出なさい!」
とうとう実技試験が始まった。
しかし、その光景は期待外れというか予想通りというか・・・
「あ~、くっそ!当たらねぇ!!」
「はい、次!!」
「ちくしょー!外した!!」
「はい、次!!」
・・・こいつら的に当てることすら出来ないのかよ。
能力の劣化と言うよりかはもう技術の問題だな。
っと、次はルナの番か。
「行きます!『星光』!!」
幾つかの星屑が的に向かい、そして命中する。
周りから少なからず歓声が聞こえる。
もしかして的に当たらない前提での試験なのかもしれないな。
そう考えると、ルナは周りより抜きん出ているのか。
「やったよゼロくん!当たった当たった!」
「おめでとー。それにしても他の皆は全然当たらないな」
「まぁ当てるのって凄く難しいからね。私だって何回も何回も練習したんだから!あっ、次は五英傑の番よ」
「キャーっ!レオン様ー!」
「ふっ、私の力をとくと見るがよい!『大海』!!」
「キャーっ!流石レオン様ー!」
は?
確かに的には当たっているがただの水鉄砲じゃないか。
あれのどこが大海だよ。
あーこれあれだわ、技術も能力も劣化しているわ。
やっぱ2000年も経ったらこんなもんになるんかなぁ。
「凄い歓声だね。やっぱり五英傑は別格だね」
ルナは感嘆してるがそうでもない。
大海はただの水鉄砲、火炎はただの火の玉、大地はただの投石、万雷はただの静電気、暴風はただの扇風だ。
「ほら、もうすぐゼロくんの番だよ。頑張って!」
「ああ、分かってるよ」
さて、俺の番だ。
よく見ると今回の受験者、俺以外全員貴族か商人家の奴らだな。
俺だけ平民って事で周りから嘲笑の声が聞こえる。
まぁ別に何とも思わないが、あの五英傑の奴が煽ってくるのがウザいな。
「やーい凡人!貴様如きに当てれる訳ないだろー!」
「さっさとやれよ凡人。まぁ当たる訳ないだろうがなー!」
(怒)
こいつら・・・良いだろう。
どうせ俺で最後だし、的を破壊してやろう。
『異次元』
轟音が響き渡る。
どうやら的を貫通して後ろの壁まで破壊してしまったらしい。
さっきまで聞こえていた声が聞こえない。
皆呆然と見ている。
そりゃあそうか、的に当てるどころか破壊している訳だし、そもそも威力が違う。
と言ってもこの技、俺からしたらそこまで強くないけどなぁ。
「え、えーと・・・これで実技試験は終わりだ。合格発表は明後日、各自解散・・・」
目の前に広がる衝撃に誰もが目を疑い、それを信じようとしなかった。
ただの偶然か、そんな風に思っている者が大半だった。
しかし、その奇怪な事実を信じた者がルナを含めもう一人いた事に気付くのはまだ少し先の話だ。
「まぁこんなもんかな」
「凄いね!あんな魔法見たことないよ!」
「まぁな。俺としてはあそこで唖然としている五英傑を見れて満足だわ(笑)」
「(笑) それじゃあ私達も帰ろっか?ゼロくんって何処に住んでるの?」
「ここから30km離れた辺境だよ。確か名前はリュケイアだったな」
「リュケイア辺境!?凄い遠いじゃん。うちの隣、宿屋だからそこに泊まったら?」
「そうだな、じゃあ案内頼む」
「もちろん!」
ルナの家の隣の宿屋に泊まる事にしました。