第42話 神は魔導祭で蹂躙する(閉会)
魔導祭で12話も使うとは思わなかった。終わらない第1章。
「・・・」
「・・・」
「・・・ちょっと!何で試合が終わらないのですか?大将は倒したでしょう!」
「・・・いつ、何処で、誰が、イーゼルが大将なんて言ったんだ?」
「!?ま、まさか・・・」
「そうだ、俺が大将だ」
俺がイーゼルとアルフレッドに提案した作戦、それはイーゼルを囮に俺が大将になる事だ。
他の奴はまさか平民が大将になるなんて考えもしないだろう。
更にこちらには第一王子であるイーゼルがいる。
誰もがイーゼルを大将だと錯覚するだろう。
そして俺達はイーゼルが大将であると思わせるムーブを取ってきた。
特に準決勝がイーゼル大将説を確信にした試合だったな。
「そんな・・・ですが準決勝の時、身を呈してイーゼルを守っていたではないですか!」
「ああ、良い演技だったろ?全てはこの為。万が一イーゼルが破れた時の最大にして最強の作戦だ」
「!?・・・ふふっ、甘いですわね。イーゼルでも敵わなかった私が平民如きに劣ると思っているのかしら」
「その平民如きの作戦に引っ掛かって、イーゼルを倒した時の勝利宣言はまさに滑稽だったな」
「黙りなさい!誰が相手だろうと私には関係ありませんわ!」
「そうですか。じゃあ、『岩石圏』」
「それは、イーゼルに教授した魔法ですわね。同じ魔法を使うとは、貴方には脳がないのですか?」
「『岩流圏』」
「無駄ですわ。私の前で同じ魔法は効きませんわ!すぐに終わらせてあげましょう!『禁地滅邀』!」
「『岩間圏』」
「この魔法を目にしてまだ諦めませんの?往生際が悪いですわよ。何度も言いますが、私にその魔法は・・・」
「『外核圏』」
「はっ!?な、何ですのそれは・・・?」
「誰が同じ魔法を使うと言ったんだ?」
俺がイーゼルに教えたあの魔法、実は完成形ではない。
完成形を使うには使用者の莫大な魔力が必要になる。
故にイーゼルには三段階までしか使えなかった。
だから俺はイーゼルにこの三段階で完成だと教えておいた。
イリスは上手いことそれに乗っかってくれたな。
「くっ・・・しかし、魔法発動は私の方が速いですわ!喰らいなさい!!」
ついにイリスが禁地滅邀を放つ。
はっきり言ってこの魔法はヤバい。
直撃したらまず生きては帰れないだろう。
イーゼルの未完成の魔法でギリギリ気絶で済んだって事だ。
さて、今の俺の力じゃまだこの魔法は完成出来ないし、イリスの魔法で俺も倒されかねないな。
だから俺は解放していた神の力を1%から2%に上げる。
そしてついにこの魔法を完成させる時が来た!
「『内核圏』」
五層且つ五段階に変化する魔法がイリスの禁地滅邀とぶつかる。
激しい轟音と共に、イリスの魔法は段々と押されていった。
「ウソ・・・私の魔法が!?一体どのような力で・・・」
二つの魔法が衝撃によって威力を失っていく。
だが俺の魔法は五層且つ五段階。
禁地滅邀を消すには十分な魔法だ。
そして禁地滅邀が威力をなくし、俺の魔法がイリスに迫る。
イリスは防御魔法で必死に抑えるが、すぐに壊れイリスの体に直撃した。
そして無言のままその場に倒れ込んだ。
「・・・勝者、1年Aクラスッ!!!!」
非常に大きな歓声が沸き、大量のクラッカーが発射される。
その音によって気絶していたイーゼルが目を覚ました。
「うっ、いってて・・・ゼロ、この様子だと勝ったみたいだね」
「ああ、当然だ」
俺はイーゼルに手を伸ばし、イーゼルはそれを掴んで立ち上がる。
「結局僕は姉上に勝てなかったのか・・・」
「いや、戦略的敗北なら勝ったも同然だろ」
「結果論だろ、それ」
「俺が負けるとでも?」
「・・・そうだったね、君はそういう奴だったね」
試合が終わった俺達は試合中に目覚めたアルフレッドと共に閉会式の会場へ赴く。
そして表彰台に上がり、国王からの表彰を受ける。
「1年Aクラス、アルフレッド=レーゼンバーグ、イーゼル=グランツ、ゼロ=グランディオ。第29回魔導祭において優秀な成績を残した事をここに表彰する」
俺達は国王から表彰状を受け取った。
そして二日間に及ぶ魔導祭に幕が降ろされたのだった。
ゼロが大将って言うのは割と予想出来るよね