第3話 神は受験する
試験会場に着くなり、また碌でもない奴等5人に絡まれた。
ほんと運ないわ。
「おい、何で貴様のような平民がこんなとこに来てんだよ?」
「そーだそーだ、凡人は帰れ!」
「ここは我等崇高な貴族が通うところだ。貴様のような能力なしが通える所じゃないぞ」
後で分かった話だが、貴族が5大最上能力(火炎、大海、暴風、万雷、大地)系統の能力、商人等は普通の能力、そして農民や平民は能力なしと言うことになっているらしい。
「もう、あんな奴等ほっといてさっさと行きましょ!」
「あぁ、そうだな」
ああいう高飛車な奴等は後で痛い目を見ることになるだろう。
席に着くと、試験官が問題用紙を配り出す。
さて、今の俺の知識でどこまで解けるか。
まぁ解けなくても能力使えばいいや。
そんな気楽に考えている俺を余所に他の周りの人は皆緊張しているようだ。
問題が配られて試験が始まる。
問題構成は大きく分けて3つ。
1つ目が魔法学、2つ目が一般教養、3つ目が応用。
1つ目の魔法学は割と簡単に解ける。
ルナが言ってた3割はこの辺だな。
だが問題は2つ目、何故俺は微積を解かされているんだ?
一般教養じゃないだろ。
まぁ問題作った奴の趣味だな(笑)。
・・・数学魔法を使わずに解け、か。
この世界の原理がどうなっているのかは知らんが、こういう計算は皆魔法を使って解いているのかも知れない。
因みに3つ目の応用魔法学は前世の時から普通に使っていた魔法なので余裕でした。
「解答やめ!!」
うわぁビックリした。
急に大声を出すなよ。
こっちは暇すぎて寝てたのに。
問題用紙が回収されると、ルナが近づいてきた。
「ゼロくん、どうだった?やっぱり難しかったねー」
「そうか?普通に簡単だったぞ?」
「え?ほんとに!?数学とかどうだったの!?」
「あぁ、あの微積ね。あんな問題数学魔法なんて使うまでもないな」
「凄いね・・・。私の親、商人だからさ、一通りの計算は教えてもらってたんだよね。一応魔法を使わないやり方は知っていたけど、それでも難しかったなぁ」
周りから落胆の声や哀嘆が聞こえる。
恐らく第2問か第3問で躓いたんだろう。
あの問題、対策なんて無いだろうし。
「次って実技だっけ?」
「うん、広場に集合って言ってたから、私たちも行こう!」
「そうだな」
俺達は指定された広場に行く。
するとそこには案の定、朝会った鬱陶しい貴族5人がいた。
「やあ、凡人。筆記はどうだったかな?やっぱり君達には難しかったかな?まぁ俺達は余裕だったけど(笑)」
「うるっさいわね!」
「ルナ、一々構うだけ無駄だ。さっさと行こう」
俺達が振り払った後、後ろで歓声が聞こえた。
「きゃーっ!あの五英傑様よ!!」
「ほんとだーっ!かっこいいー!」
振り返った後、ルナが驚愕したような表情をした。
「え・・・?五英傑ってあの?」
「五英傑って何だ?」
「知らないの?5大最上能力を持った人達よ?まさかあいつらだったなんて」
5大最上能力?
あぁ俺が与えた5つの能力者の子孫か。
でも感じる限りそんなに強そうには見えないけど。
遺伝の際に能力が劣化したのか?
「あいつら、そんなに凄いか?」
「当然よ!私だって顔は知らなかったけど、名前と能力は知っているもの!一人目は『火炎』のアルフレッド=レーゼンバーグ、二人目は『大海』のレオン=フェルアーマ、三人目は『暴風』のカイザー=メーメル、四人目は『万雷』のオーレギオン=ヴォルクス、そして最後はこの国の王子、『大地』のイーゼル=グランツよ!」
えー、あいつらが俺の能力を受け継いだ奴等かよ。
あの様子じゃ能力のレベルも大したことないかな?
まぁ劣化したのかどうかはこの実技試験を見れば分かるか。