第37話 神は魔導祭で蹂躙する(地獄)
第1章が想定より長くなりそう
魔導祭準々決勝結果
1A 勝 vs. 3D 敗
2B 敗 vs. 3B 勝
魔導祭準決勝
1A vs. 2A
3A vs. 3B
日が明け、今日は準決勝からのスタートである。俺は会場へ行き、イーゼル達と合流する。
「やあ、おはよう。どうした二人とも、元気ないな?」
いつもと様子がおかしいイーゼルとアルフレッドにそう声を掛ける。
「いや、別にそんな事はないぞ。それより、良いような悪いような知らせがある」
「何かあったのか?」
「相手の2年Aクラス、大将以外の二人が棄権した」
「!?どういう事だ」
「その二人は双子だったんだが、その二人の父が急逝したんだ」
「という事は、相手は一人か」
1対3なら圧倒的にこちらが有利だ。
それなら問題ないだろう。
そう考えていると、アルフレッドが口を挟んだ。
「それで安心出来ないから厄介なんだよね。寧ろ、一人になったのがマズイんだ」
アルフレッドは相手の大将、ガルシア=エーゼンベルツについて説明した。
彼の魔法は自分の周囲にも被害が及んでしまう為、初戦では余り力を出せなかったらしい。
しかし一人になってしまったので、彼は思う存分力を発揮できるようになるのだ。
「はっきり言って僕達二人で相手をしても勝てる可能性は低い。だからゼロ、君が頼りなんだ」
「そういう事か、それはマズイな」
今回の闘いは全滅が目的ではない。
大将を討ち取ればそれで終わりなのだ。
つまり、イーゼルが倒された一貫の終わりという事だ。
「ああ、イーゼルを絶対にやらせる訳には行かない。僕とゼロくんでイーゼルを守るぞ」
「頼んだぞアルフ、ゼロ。だが気を付けろ、奴の魔法は・・・文字どおり地獄だ」
そして時間になり、俺達は闘技場の舞台に上がる。
「これより、魔導祭準決勝第一試合を始めるッ!先ずは東手、1年Aクラス、ゼロ=グランディオ、アルフレッド=レーゼンバーグ、イーゼル=グランツ殿下ッ!次いで西手、2年Aクラス、ガルシア=エーゼンベルツッ!両者準備は良いな?それでは始めッ!」
試合開始の笛と共に、ガルシアが自分の周りに魔法陣を張る。
「八大地獄第一、『等活地獄』」
舞台の周りが炎に包まれ、まるで地獄のようになる。
「ここは地獄、我がフィールド。狂気の炎で躍り狂え!」
周りの炎の温度が上がり、炎が青白くなる。
当然温度が上がるので、アルフレッドとイーゼルはダメージを受けている。
「アルフ、ゼロ、早急に決めるぞ!『大地の怒り』」
「『業火の牙』」
イーゼルが土魔法を、アルフレッドが炎魔法を放つが、ガルシアの元に辿り着く前に周りの炎で掻き消される。
「その程度の魔法じゃ俺には効かないぜぇ。何故なら俺の地獄は土属性と炎属性の混合体、貴様らの能力の上位互換だからなぁ!」
あいつ、イーゼルに向かって貴様って言っているけど良いのか?
まぁそんな事はどうでもいい。
久しぶりに手応えのある敵だ。
十分に楽しませてもらおう。
「なら、これならどうだ?」
俺は水魔法を発動させる。
炎には水をという安直な考えだが、相手の能力の本質が見えない以上これで対応するしかない。
『潮汐の大波』
さあ、どうなる?
「その程度で俺の地獄の炎を消せると思うなよ!」
ガルシアは両手に炎を出し、俺が放った魔法を振り払う。
矢張り地獄の炎に水は効かないか。
これはマズイな。
いくら俺が神といえど万能ではない。
何故なら俺が転生するまでの2000年、その間に新たに起こった事なんて知る由もない。
そもそも地獄なんて能力は神代には無かったからな。
こちらがやられる前に、能力を解析せねば。
「八大地獄第五、『焦熱地獄』!」
ガルシアは両手を前に出し、魔法を発動する。
周りの視界を完全に炎で覆い尽くされ、周囲の酸素量が減少している。
このままだと酸欠でアルフレッドとイーゼルがやられる。
さて、どうしようか。
「アルフレッド、イーゼル、防御結界を足元に張り、上空へ脱出しろ!」
「「!?分かった」」
アルフレッドとイーゼルは指示通りに結界を足元に張り、上空へ向かう。
そして俺の意図を汲んだのか、上空で魔法を発動する。
「「『地焔変革』」」
アルフレッドとイーゼルは同時に魔法を放つ。
試合前に合成魔法を教えておいて正解だったな。
合成魔法は消失魔法と言われている所以、それは現代では魔法と魔法を合成する際、その二つの魔法の結合部を確認出来ない為。
だが、その結合部を具現化すれば、現代人でも合成魔法を撃つことが可能になる。
二人が放った合成魔法は周りの炎を吸収し、ガルシアに向かっていく。
「無駄だ。八大地獄第八、『無間地獄』」
ガルシアは地焔変革を片手で受け止め、握り潰す。
そしてその握り潰した手から、新たな魔法を発動する。
そしてその魔法は上空の二人に向かって行くのだった。
アルフレッドとイーゼルの運命は・・・