第34話 神は魔導祭で蹂躙する(弾幕)
弾幕の美しさに勝るものはなし。
元ネタ分かる人いる?
裏☆魔導祭。
魔導祭の裏で行われる別系統の競技である。
毎年何が行われるかは分からず、去年は即興出店、一昨年は鬼ごっこだった。
そして今年は魔法弾幕。
威力や効果を度外視して、ただ単純に発動した魔法弾幕の美しさを競う。
魔法弾幕とは同じ魔法を複数同時展開し、相手への被弾率を上げるのが主な目的で、広範囲の敵に対して有効な魔法だ。
あくまで''同じ''魔法の同時展開であり、''違う''魔法の同時展開ではない。
それはもう消失魔法です、はい。
「ゼロくん!迎えに来たよ!」
俺達が控え室で休んでいると、ルナが扉を開けてそう叫んだ。
「迎えって、何かあったっけ?」
「裏☆魔導祭にルナが出るんだよ。それで見てほしいってさ」
ライトが後ろからそう答えた。
「成る程、そういうライトは出ないのか?」
「ああ、僕は遠慮したよ。魔法弾幕は苦手だし、それに・・・万が一優勝でもしたら舞踏会行きだからね」
ライトのその言葉を聞いて、俺はビクッとした。
「そういえばそうだったな。良かったなゼロ、優勝したら舞踏会だぞ?」
イーゼルが煽ってくる。
「優勝したらな。つかそれって平民の俺でも出れるのか、そもそも」
「一応招待される側だから問題ないさ。まぁ平民が舞踏会に出れるなんて事は一度もないけどね」
でしょうね。
まぁ俺としても敵の懐に忍べるのは本願だし、そもそも踊れない訳でもない。
雰囲気が嫌いなのだ。
「むー、そんな事より早く行こっ!もうすぐ私の番なんだから!」
そう言うとルナは俺の手を引っ張って外に連れ出される。
「・・・やっぱりゼロは気付いてないよな」
「なんでこんな事には鈍感なんだ?全くもって彼の正体が読めないな」
ライトとイーゼルはそう呟く。
そして心の中でルナを応援するのだった。
因みにアルフレッドは隣で横になってます。
暇だから寝るってよ。
そして俺とルナは裏☆魔導祭が行われる国立闘技場屋外ホールにやって来た。
国立闘技場の敷地は三角形になっていて、それぞれの頂点に闘技場、そして中央にこの屋外ホールがある。
ルナから今年の裏☆魔導祭は魔法弾幕の美しさを競うと聞いた時、弾幕に美しさなんて必要あるのかと思った。
まぁルナの星光だったら、魔法弾幕も綺麗なんだろうな。
「じゃあ私は控え室に行くから、ゼロくんちゃんと見ててね!」
手を振って控え室の方に走っていく。
人が多いから走るとぶつかるぞ。
そんな事を考えていると前方から歓声が聞こえた。
「『桜花絢爛』」
魔法弾幕が桜の形を模し、それが儚く散っていく。
おー確かにこれは綺麗だな。
というか目の前で披露している人、同じクラスだよな。
確か名前は・・・
「以上、カーシャ=ベルナリンでした。大きな拍手をお願いします!」
そうだった、カーシャ=ベルナリンか。
同じクラスだが、余りに接点がないから忘れていた。
確か一度質問攻めされた時にいたっけ。
そんな事を考えてながら彼女を見ていたら、こちらに向かって手を振ってきた。
「おい!あの娘、俺に手を振ってきたぞ!」
「いいや、俺だろ!」
周りにいた人達は興奮している。
まぁあれだけ人がいたら誰に手を振っているのか分からないが、明らかに俺と目が合ったよな?
・・・まぁ考えすぎか。
っと次はルナが披露するようだ。
ルナは壇上に立ち、手を大きく広げ魔法を発動する。
「『星琴の双奏』」
ルナの魔法は星座を模した弾幕だった。
美しい星空に周りにいた人が皆息を飲む。
そしてルナが手を前に出すと、その魔法弾幕が観客席を覆い、まるで降り注ぐ星雲のように光り、収束する。
「以上、ルナ=エルサーラでした。大きな拍手をお願いします!」
ルナの披露が終わり、壇上から降りていく。
結果は明日の決勝前に発表するらしい。
ルナが優勝する事を願い、俺はその場を去っていった。
昼休憩に入り、ルナが俺の元にやって来た。
「ゼロくんどうだった?上手く出来ていたかな?」
「ああ、凄く綺麗だったぞ。あれなら優勝してもおかしくない」
「ほんとっ?ありがとう(*´∀`)」
その翌日、裏☆魔導祭の結果はルナが優勝し、見事に舞踏会参加の権利を得るのだが、その後とんでもない事になるとは誰も予想出来なかった。
絶対神に恋愛感情はあるのだろうか?