第29話 神は戦法を協議する
ゼロは大抵の魔法は使えると言ったが、無条件で使えるとは言っていない。
授業が終わり放課後に入ると、イーゼルに呼び止められた。
どうやら先の魔導祭について話があるらしい。
俺は指定された場所に向かうと、イーゼルとアルフレッドが待っていた。
「校内にこんな場所があったとはな」
ゲールノーア学園の地下、幾つか古びた教室があるがその一つ、見た目は唯の物置だが、奥に行くと綺麗に整頓された部屋が現れる。
「ああ、ここは僕達五英傑の拠点みたいな所だ」
イーゼルがそう答えると、アルフレッドが魔導祭のルールについて説明し始めた。
場所は王都内の国立闘技場。
チーム内で大将を決め、その大将を倒したチームの勝利。
大将は確定で、変えることは出来ないが、誰が大将かは明かされない。
また、制限時間は一時間で、時間をオーバーしたら人数が多いチームが勝利。
つまり、時間をオーバーすると人数の少ない我々が不利になるという事だ。
Aクラスは3人、Bクラスは5人、Cクラスは7人、Dクラスは10人だからな。
ここでイーゼルが口を挟んだ。
「はっきり言って同年代は問題ない。数より質でどうにかなる。だが問題は二年のAクラスと三年のAクラスだ」
「そうなのか?五英傑って言われてるんだから問題ないかと」
「ゼロくん、僕達は同年代ではずば抜けている上に、神の子孫だから五英傑と言われているだけで、普通に僕達より強い人は一杯いるんだよ」
「アルフの言う通りだ。これは僕が集めた要注意人物リストだ。目を通してくれ」
俺はイーゼルから渡された資料を見る。
一人目は二年のAクラス、ガルシア=エーゼンベルツ。
地獄の能力を持ち、冒険者では上から二つ目のプラチナ、巷では地獄の魔導師とも呼ばれているらしい。
二人目は三年のAクラス、カイル=シュテーゲン。
剣技魔法教練の教師、ルートヴィヒ=シュテーゲン先生の孫。
能力はシュテーゲン先生と同じ剣聖。
その名の通り剣技に特化した能力だ。
三人目は同じく三年のAクラス、ユルグ=アース。
商家ではあるが環境神の子孫であり、環境神と同じ自然の能力を持つ。
環境神は上級神の中でも相当強い能力だった。
それを受け継いでいるなら確かに十分脅威と言えるだろう。
そして四人目、三年のAクラス最強、イリス=グランツ。
グランツ王国の第二王女でイーゼルの姉。
イーゼルと同じ大地の能力を持つが、イーゼルと比べて別格らしい。
イーゼル本人がこの姉はヤバいと言う程だ。
「見終わったか?トーナメントの組合せはまだ分からないが、僕達が順当に勝ち進めば、決勝は三年のAクラスだ。そして恐らくこの三人が出るだろう」
「成る程、確かに正面からやり合ったら面倒だな」
「だからこれに勝つために、何かいい作戦はないかと、こうして集まって貰ったんだ」
俺が本気を出せばこんなの余裕だが、そんな力出したらまず闘技場が壊れる。
俺は力を抑えて戦う事になるが、アルフレッドとイーゼルが勝てるか・・・
ふっ、その手があったか。
俺は今思い付いた作戦を二人に話す。
「なっ?それは本気か?いや、君の実力なら問題はないが、これは相手も予想出来ないな」
「そうだな。ゼロくんの負担が大きすぎるが、これなら勝てるかもしれない」
「だろ?だが決勝までこの作戦がバレないようにしなければならない。特に準決勝、これが一番危険だな」
「安心しろ、絶対に失敗させない」
「ああ、五英傑の名にかけて、この戦い勝ってみせよう!」
そう言って、イーゼルとアルフレッドは意気込んだ。
神の作戦とは?