第2話 神は助ける
一週間後、ゲールノーア学園入試の日、俺は家を出た。
この一週間の間に集められるだけの情報を集めた。
やはりこの国の治安は最悪のようだった。
一体何がどうしてこうなったんだ?
「学校、割と遠いな」
家から学校までの距離は30km、前世では特に能力とか使わずに空を飛べた。
まぁ神だった訳だし。
浮遊魔法とかあるし。
だが今この体で普通に飛べるかは確かめてなかった。
「あ?普通に浮遊魔法で飛べたわ。態々神の翼出さなくても飛べるじゃん」
どうやら前世の身体的能力も受け継がれたらしい。
魔法で飛べるんなら飛んでいこう。
街に入る前に降りればいっか。
数分後
「っと到着。あれ?思ったより荒れてないな」
街に到着すると活気ある声で商売をする者、道路を走り回る者、酒を飲んで発狂している者、割と普通の状態だな。
いや、最後のは除こう。
そんなことを考えながら学校へ向かう。
その時、女の子の悲鳴が聞こえた。
「やめてください!離してください!」
「いいじゃねぇか、ちょっとぐらいよぉ!」
前言撤回、女の子が3人の不良に絡まれている。
表は良くても裏はこれか。
典型的なパターンだな。
入試まで時間あるしサクッと助けるか。
「離してください!私これから用事があるんです!」
「そんな事どうでもいいじゃねぇか」
「俺達と遊ぼうぜぇ・・・って何だこのガキ」
「お兄さん達、ちょっといいかな?」
「あ?ガキが何の用だ?」
俺は振り向いた不良の顔面に蹴りを入れる。
その不良は倒れた。
「何だぁテメェ!」
「まぁ待て、おいそこのガキ、俺達に逆らおうってなら容赦しねぇぞ」
その不良は手に持っているナイフをこっちに向かって投げてきた。
そのナイフは水平を保ち、全く落ちる様子はない。
俺は咄嗟に避ける。
「くっ・・・」
「これが俺の能力『直線』だ!これがあればどんなものも水平に飛ばせる。さぁ、もう一発喰らいやがれ!!」
今度はナイフを二本投げてきた。
だが自分で能力を言っちゃうあたりやっぱり素人だな。
「・・・へぇ、自分から種を明かすとは、随分適当だな」
俺は飛んできた二本のナイフを触れずに地面に落とす。
当然不良達はその光景に驚くだろう。
そして俺がその隙を、見逃すわけないだろう?
「ほら、ナイフ返してやるよ」
俺は相手が投げてきたナイフを不良3人の首に突き立てた。
「ひぃぃぃ、覚えてろよぉ!」
「ったく、あの程度で能力とか笑わせるなよ」
「あ、あの助けて頂きありがとうございます」
「ああ別にいいさ。入試まで時間あるし」
「え?もしかしてゲールノーア学園の受験生?」
「え?ああそうだよ」
「私もです!私はルナ=エルサーラ。よろしくね!」
「俺はゼロ=グランディオだ。よろしく」
どうやら彼女もゲールノーア学園を受けるようだ。
歳は大体13歳ぐらいか?
俺と違って適正年齢だな。
「ところでゼロくんは何歳なの?私より年下に見えるけど」
「10歳だ。受験に年齢制限はなかったから問題ないだろう?」
「10歳!?確かに年齢制限はなかったはずだけど、大丈夫なの?受験勉強とかしてきたの?」
する訳ないじゃんめんどくさい。
そもそも行こうと思ったの一週間前だし。
「そんなに受験難しいのか?」
「私も人伝に聞いた話だけど、全体の3割しか解けないらしいよ。逆に言えば合格のボーダーは低くなるはず!」
気合いが入っている彼女を横目に、俺はある事を思い出す。
「あれ、そもそも受験内容って何だっけ?」
「え?もしかして知らずに受けようと思ってたの?」
「まぁ、受けようと思ったのが一週間前だし」
「えっ!?そ、それじゃあ簡単に説明するね。試験は筆記と実技。筆記はさっき言ったようにとても難しいの。でも実技は能力の試験だから能力によって試験が違うけど、まぁ大方戦闘系の能力だから、皆一緒だろうけどね」
「へぇー、それでルナの能力って何なんだ?」
「私は『星光』、ゼロくんは?」
そう問われて一瞬戸惑う。
よく考えれば、前世の能力はあるが、元々この体に能力はない。
これはどうするべきか?
「俺は・・・俺には能力はない」
「能力なしって事は、貴族でも商人でもないって事?そんなんでよく受けようと思ったね」
「能力なくても最悪問題ないだろうと思って。それより実技試験って何やるんだ?」
「あぁえっと、簡単に言えば的当て?かな。能力で魔法なり武器なりを出して的に当てれば終わり」
なんだ結構単純だな。
まぁ今の能力のレベルがどんなものか知るには丁度いいな。
「まぁ・・・大丈夫かな?」
「清々しいほど楽観的ね」
そんな話をしていると学校に着いた。
建物は思ったよりもでかいな。
一種の城みたいな構造をしている。
「これ、本当に学校か?城みたいだけど」
「学校だよ。但し城も兼ねてるよ。ここの校長は国王の側近でね、仕事しやすいから一緒にしたって」
「大丈夫かよ、警備的に」
まさか城と学校が一体化しているとは。
だかそれはこちらとしても動きやすい。
これは何としても受からねばな。