第26話 神は付与する
漸く話が前に進む
休み明けの剣技魔法教練の時間にて
「今日は付与魔法を行う。皆各自剣は持ってきたか?」
そう言われると、皆密疎魔法で剣を大きくする。
俺も先日買ったクロガネを大きくする。
「全員持ってきているな。では付与魔法について簡単に説明する。付与魔法とは武器や魔道具に自身の魔力を授け与える事だ。付与できるのは基本、先日測った魔力属性か能力によるものだ。まず手本として、五英傑にやってもらおうか。じゃあアルフレッド」
「はい」
アルフレッドは前に出て、剣を前に出す。
「炎剣インフェルノ:付与火炎」
付与魔法が発動したアルフレッドの剣は一気に炎を纏った。
「皆分かったか?大切なのは魔力の量と流れだ。魔力量が多すぎても少なすぎても発動せず、魔力の流れが歪でも発動しない。付与する為には繊細な技術が必要だ。今回はワシの急用の為、自習とする。各自付与魔法の練習を行うように」
シュテーゲン先生は駆け足で去っていった。
元とはいえ彼も軍人、戦争についての協議とかその辺だろうな。
この学園の教師は皆上級貴族(アスク先生を除く)だから、何かあれば直ぐに行かなければならない。
大変だな。
さて、各自練習といっても付与魔法なんて俺にとって序の口だし、下手に付与してもこの普通の剣じゃそれに耐えられるかどうか。
そんな事を考えていると、ルナやライトを含め、クラスの商家一同が俺の元にやって来た。
「ゼロくん、ちょっと良いかな?ゼロくんって付与魔法出来る?」
「ああ、出来るが、どうした?」
「私達商家って付与魔法は絶対必須なんだけど、能力的に付与魔法って難しいんだ。だから、ゼロくんに教えて貰おうかなって」
確かに付与魔法は基本の五属性を基に成立している。
商家は複数属性が多いから付与が難しいって事か?
でも本来は属性なんて関係ないんだよな。
そもそも付与魔法は無属性魔法であるが故、相性は無属性の方が良い。
それこそ強化魔法とかな。
基本五属性はそれに付随したものに過ぎない。
無属性魔法があってこそ他の属性の魔力を付与する事が出来る。
「教えるのは構わないが、見てもらった方が早いかな」
俺はクロガネに付与魔法を掛ける。
そのまま掛けると剣が壊れかねないので強化魔法も掛けよう。
そして俺は二つの魔法をクロガネに付与する。
鉄剣クロガネ:付与強化
鉄剣クロガネ:付与天楔
「こんな感じだが・・・どうした皆、固まって」
「「「無詠唱!?」」」
「え?詠唱っているの?」
「ゼロ、詠唱しなきゃ何の魔法を付与したか分からないだろ」
ライトの言っている事は尤もだが、敵に手の内を晒す事になる詠唱は余りしないんだよなぁ。
特に付与魔法は。
逆に攻撃魔法とかは詠唱した方が良い。
まぁそれも個人によるが。
「そうなのか。付与強化と付与天楔を掛けた。付与強化はそのまんまの強化魔法、付与天楔は剣を刺した時に雷撃を与える雷属性魔法・・・ってどうした?また固まって」
「「「複数付与!?」」」
「え?付与って複数出来ないの?」
「ゼロ、普通は一つしか付与出来ないんだよ」
・・・これも消失魔法かぁぁぁ!
付与なんてその気になればいくらでも掛けられるだろ。
「あー、まぁそれは良いとして、さっき先生が言ってただろ?大切なのは魔力の流れだって。皆は魔力を一方的に送り込むって考えてないか?付与魔法は魔力の循環だ。複数属性だと魔力が混同して上手く付与出来ないんだよ。でも魔力を循環させれば複数属性でも付与出来るんだ」
俺がそう教えると皆次々と付与を成功させていく。
『やった!出来た!』
『うぉー!僕にも出来たぞ!』
それを見ていた貴族達も俺の下にやって来た。
そして同じことを教えると、貴族は目を丸くして、そんな理論だったのかと驚いていた。
まぁ貴族は一つの属性しか持たないのが多いから気付かないわな。
「やぁゼロ、また規格外な事をやってるな」
イーゼルが他の五英傑を連れて俺に声を掛けて来た。
「これは規格外じゃないと思うが、そうらしいな」
「無詠唱に複数付与、僕らからしたら常識はずれだからね。君は一体何処でそれを学んだんだ?」
「独学で、って言ったら信じてもらえるか?」
「あはははは!全く君は面白いな。まぁ今回もそう言う事にしてあげるよ」
「で、何の用だ。それを言いに来ただけじゃないだろ」
「ああ、後ろの四人がまだ君の実力を認めなくてさ。時間もあるし、ここで決闘をしないか?」
「認めていない訳じゃねえ!納得いかねぇだけだ!」
「まぁそう言うなよギオン、君達もそうだろ?」
レオン、アルフレッド、カイザーは頷く。
「俺は構わないが、ルールはどうする?」
「そうだね、基本ルールは相手が気絶、または降伏したら終わり、魔力や能力の使用は許可、これでどうかな?」
「それでいい」
「じゃあ最初は誰が・・・」
「待てイーゼル」
「どうした?」
「五英傑全員でかかってこい」
神代の常識は現代の非常識