第25話 神は王都を散策する(後編)
こう言う話を書くのが苦手だと気付いた。
俺達は食事を取り、ルナの案内で創神教の教会に向かった。
「そういやルナは創神教の信者なのか?」
「うん、と言うか王都の商家や貴族は皆信者。この国の国教なんだよ」
それもそうか。
創神教は俺を信仰している宗教だし、その俺が生み出した神の子の一人の子孫がこの国の王家だからな。
神の子の子孫が全員この国にいるって事は、恐らく創神教の勢力はこの国内のみの可能性が高いな。
今のこの国内情勢の影響で他国の情報が全く分からないから、確かめようがないけどな。
「ここが創神教の教会だよ!」
「へー、ここが教会か」
真っ白な外壁と城のような造形、まさに国教の教会だな。
中に入ると、女性の司祭が出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。本日は礼拝ですか?」
「いえ、少し尋ねたい事がありまして」
「分かりました。それではこちらの部屋でお待ち下さい」
俺達は案内されて、教会の応接室の中に入った。
暫く待っているとさっきの司祭が部屋に入ってきた。
「お待たせしました。私がこの教会の司祭をしております、サンドラ=ルベスシューターと申します」
「私は商家のルナ=エルサーラです」
「俺は平民のゼロ=グランディオです。ルベスシューターと言う事は信仰神の」
「はい、私の家は信仰神様の血を引いています。でもどうしてお分かりになったんです?この事はあまり世間に知られておりません。それに見た感じ、貴方は信者ではありませんよね?何処でお知りになられたんです?」
前世の知合い、とは言えないしな。
信仰神エリィ=フェイス=ルベスシューター、信仰の能力を持った上級神だな。
確か信仰の能力は他者の信仰心を見抜くだけでなく、煽ったり操ったり出来る能力だったな。
目の前の司祭にも能力は受け継がれているようだな。
俺に信仰心が無いのを見破っているし。
さて、どう答えようかな?
「・・・親が熱心な信者で」
「ですが貴方は平民ですよね。そもそもこの国で平民はあまり信仰の機会を得る事が出来ません。教会に来れる程の余裕があれば別ですが」
「・・・(信仰神と同じで面倒くさい奴だな)」
「まぁ良いでしょう。それで尋ねたい事とは何でしょう?」
「あ、はい。創神教っていつ頃出来たんですか?」
「恐らく1000年位前ですね」
「恐らく?」
「詳しい記録が残っておりませんの。100年前からは残っていますが」
「100年以前の歴史が残っていないのに、何故神代の事は残っているんですか?」
「残っている、と言うより残されていると言うのが正しいですね。特に神族の子孫は自分が神の血を引いている事を示したいですからね。100年以前の歴史が残っていないのは情報規制があったからだと伝えられていますが、神代については規制出来なかったものと思われます」
確かにその理屈なら納得出来る。
だが何だ、この違和感は。
話が出来すぎている。
彼女は何かを隠している?
でも何だ?
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ何でもありません。ありがとうございました」
「そう、 礼拝したくなったらいつでもお越しください。教会は誰でも受け入れますよ」
誰が自分を信仰するか。
はぁ、だがこれで分かった事があるな。
''教会は敵である''と。
まぁ最悪絶対神権限でゴリ押せるが、それは最終手段だな。
「どうゼロくん?聞きたい事聞けた?」
「ん?まあな。つかもうこんな時間か。思ったより経ったな」
待たされた時間が結構長かった為、思ったより時間を食ってしまったようだ。
「そうだね、もう帰らないと直ぐに夜になっちゃうね」
教会はルナの家から真反対の位置にある為、割と遠い。
俺は学園の寮だから、王都の中心にあるので、何処に行こうと等距離だが。
「じゃあ帰途するか」
そして俺達は喋りながら帰途についた。
学園の寮に着いた時にはもう夕方になっていた。
「ルナは一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ!いつもの下校と同じだしね」
「それもそうか、じゃあまた学校で」
「うん!また・・・・・・はぁ、感情を隠すのって難しいな・・・」
ルナは溜息をついて家に向かって行ったが、それにゼロが気付く事はなかった。
違和感とは?