第24話 神は王都を散策する(中編)
自分で張った伏線が覚えられない。
「ルナちゃぁん、ちょっと外で待ってくれるかなぁ?」
「?分かった。ゼロくん待ってるね!」
そう言うとルナは店の外に出ていった。
「それでゼロ?だっけぇ?どうしてここにある剣の強度が低いって分かったんだぁい?」
「見れば分かります。明らかに強度が低いでしょう?焼きが甘いというか、態と甘く作ったような」
「ただの平民だったら何も言わず喜んで剣を買っていく。それがどんなに脆いかも知らずにねぇ。私はねぇ、剣の価値も分からずに買っていく平民がだいっ嫌いなんだよぉ。流石に商家や貴族の時はここに並べてある剣ではなく、こちらから提案するんだけどねぇ。まさか平民がこれを見破るとは思わなかったよぉ」
「一つ聞いて良いですか?何故平民にはこの粗末な剣を売るんですか?」
「愚問だねぇ。まず他の店では平民には剣を売らないよぉ。売ってもここにあるような脆い剣しか売らないさぁ。何故かってぇ?そりゃあ何の能力もない平民が剣を持って十分戦えるかい?冒険者になる平民は多いと聞くが、殆どは戦闘には向かないんだよぉ。脆い剣は直ぐに壊れる、直ぐに壊れれば平民は戦闘をしなくなるだろう?そこで生きるか死ぬかは私には関係ない。剣の質も見分けられないなら戦うな、そう言う事なんだよぉ」
「・・・直ぐに壊れればまた買いに来る。そうすれば利益も出る。そう言う考えでは?」
「ギクッ(;゜゜)!君は鋭いねぇ。平民とは思えないよぉ。ごめんねぇ、君にはちゃんとした剣を売るよぉ。君ならこの剣の価値も分かってくれるからねぇ」
そう言うと店主は一本の剣を取り出す。
それは周りの剣よりも一段と優れた剣・・・と言っているが実際は周りの剣がショボすぎるだけでこれは至って普通の剣だが。
「ありがとうございます。いくらでしょうか?」
「百リコルだよぉ」
「はい」
「まいどありぃ」
・・・リコルだと?
通貨の価値が神代と殆ど変わってない事は分かっていたが、まさか通貨の単位がリコルだとは。
財宝神アージリン=リコルから取ったのか。
神の名前は残ってるのに何で100年以前の歴史が残ってないんだよ。
ルナに聞いてみるか。
そう思い、俺は店を出た。
「ルナ、お待たせ」
「ゼロくん!剣は買えた?」
「ああ、この通り」
俺は買ったばかりの普通の剣を見せる。
「良い剣だね!名前はどうするの?」
「名前?」
「そうだよ。自分の剣には自分で名前を付けるのが慣習なんだよ」
名前かぁ。
名前を付ける程の剣じゃないし、どうしようかな?
まぁ鉄の剣だし適当に・・・
「クロガネ、鉄剣クロガネにしよう」
「クロガネ、良い名前だね!」
安直な名前だけどな。
神代では鉄の事を鉄とも呼んでいたからな。
今じゃもう死語だろう。
俺は密疎魔法でクロガネを小さくし、ポケットに入れた。
「そう言えばルナに聞きたい事があったんだけど」
「ん?何?」
「100年以前の歴史は残ってないのに、何故神の名前は残ってるんだ?」
「えーっと、その事は教会に行った方が分かりやすいかな」
「教会?」
「うん!創神教って言ってね、この世界を創った絶対神様を信仰している宗教だよ」
・・・俺か。
別に世界を創った訳では無いんだがな。
世界の誕生とともに俺が生まれただけなんだよなぁ。
「ゼロくん!次は教会に案内するね!」
俺を信仰している宗教の教会に行くのは気が引けるな。
だって俺を崇めてるんだろ?
まぁでもルナが教会に行った方が分かると言うなら、行かない手はないな。
「・・・とりあえず昼飯食べてから行くか」
「・・・そうだね」
いつの間にか正午を回っていました。
ゼロは普段食事を取りませんが、今回はルナに合わせています。優しい。