第22話 神は違和感を覚える
神です。よろしくおねがいします。
「で、どういう状況だ?」
俺とルナとライトは放課後、統一魔法クラブの部室に向かった。
しかし中に入ると、イーゼルが椅子に座って待っていたのだ。
「いや、これから君達には王国の闇を探ってもらうんだから」
「そこじゃない。別に態々このクラブに入るほどかと」
「あーそれが、実は僕監視されているんだよね。君も会ったでしょ、あの黒服の」
「確か名前はグラハム=アスタリスクだっけか。でもお前の側近なんだろ?」
「表向きは、ね。彼、実は王国軍第三軍隊に所属している諜報員なんだ」
王国軍第三軍隊。
確か諜報に特化した部隊だったか。
「成程。側近として側にいるから思うように動けないと」
「そう言うこと。それにこの部屋には君が防諜魔法を掛けただろ?この話が外に漏れる事がない上、監視の目から唯一外れる場所なんだ」
確かに俺の防諜魔法は恐らく諜報員が使っているであろう諜報魔法は無効化される。
隠蔽魔法は消失魔法らしいから使えないだろうし。
だが、急に監視出来なくなったら逆に怪しまれるのでは?
「それはそれでどうかと思うぞ」
「僕がこのクラブに入れば、ここに来るのも不自然ではないだろ?それに本来は君が創ったクラブだが、グラハムには僕が部長だと伝えてある。平民の下に一国の王子が入る訳にはいかないしね」
成程、クラブ活動の一環として防諜魔法を使っていたと主張すれば話は通る。
それに平民の下につく王子というのも不自然だ。
ちゃんとそこらへんは考えていたのか。
「話は分かった。で、その国家転覆計画とやらはどこまで計画してあるんだ?」
「え?まだ何にも決めてないぞ」
「「「決めてないの?」」」
三人同時に声が出てしまった。
え何?無計画で俺達に依頼したの?
感心した俺の気持ちを返せ。
「一日の殆どは監視の目が光っていたからね。そう簡単には動けなかったよ。王子としての職務も一応あるわけだし。あと、この話をするのは週に一回にしよう。流石に毎日も防諜魔法掛けていたら怪しまれる」
「まぁそれは当然だ。とりあえず入部の手続きとかあるだろうし、今日は終わろう。次はまた来週だ」
「その時までにざっと計画は考えておくよ。ああ、それと別途で気になっていた事が一つ」
「?何だ」
「君はこの学園の試験を受ける時に招待状を持ってきていたよね。まぁ全員そうだけど」
「ああ、それがどうした?」
「その招待状、普通貴族か商家にしか送られないんだよね。でも君の家に招待状があった。これはどういう事かな?」
「俺が知るか。そもそもあれは父が受け取った招待状だ。無期限だったから息子の俺が使っただけだ」
「・・・まぁこの国って割と雑だから、間違えて送ったとかありそうだな。今回はそう言う事にしておこう。じゃ、また」
そう言うと、イーゼルは部屋から出ていった。
確かに妙だな。
うちは明らかに農民だし、間違えるといっても住所はリュケイアだ。
そんな遠い所まで態々間違えて届けるか?
・・・考えても仕方ないな。
今度帰郷した時に聞いておこう。
「・・・どうした二人とも。そんなに固まって」
「いや、ゼロくんって王子相手でも普通に接するんだなって。普通平民だったらもっと遜ると思うんだよね」
そりゃあ神ですし。
人間の上下関係とか俺には関係ないし。
「イーゼルもそうだけど、ゼロは普通じゃないからね。もう全てが規格外だから他の人と比較しても意味ないよ」
「辛辣だな、ライト。どうした?」
「僕はもう諦めた」
何にだよ。
ルナも頷いてるし、多少は自重した方がいいのかな?
「そうだゼロくん!明日学校休みだし、何処か行かない?」
「ん?ああ、そうだな。じゃあライトも・・・」
「僕は明日用があるから、二人で楽しんできなよ」
「ん、じゃあそうするよ」
「(役割は果たしたよ、ルナ)」
という訳で明日ルナと出掛ける事になりました。
生まれる違和感、そして「役割」とは?