第20話 神は剣戟する
天の声 「久しぶりにナレーションの出番や~」
ゼロ 「出番減らすか」
天の声「ヤメテ(/´△`\)」
三時間目、剣技魔法教練。
人間の体の中には魔力が流れている。
しかし、それは当然無限ではない。
魔法を行使する為には魔力を消費する。
よって魔力が切れ、魔法が使えなくなったらどうするのか。
答えは単純、武器を使え、だ。
魔力が無くても剣一つあれば戦える。
言い方を変えると能力を持っていなくても戦える。
後に詳しく話すが、冒険者は能力を持っている貴族・商家だけでなく、平民を含め誰でもなる事が出来る。
それの理由がこれである。
故に剣技というものは非常に重要である。
無論魔法と組み合わせれば、通常より更なる力を発揮する事が出来る。
これがこの授業のコンセプトである。
三時間目に行われる教練はここ、学園内の大規模教練場で行われる。
俺が床をぶち抜いた不死の遺跡もこの中にある。
大規模教練場は王国軍事教練場と併設しており、我々生徒だけでなく王国軍も使用している場所だ。
時間になり、ゴツい先生が前に現れた。
「わしが剣技魔法教練を担当する、元王国軍第二軍隊隊長のルートヴィヒ=シュテーゲンである!」
ここで補足しておくと、王国軍には幾つかの軍隊に分かれており、第二軍隊は剣術に特化した部隊らしい。
ライトが横で教えてくれた。
「今日は初の授業という事で剣はこちらで用意するが、次回からは自分の剣を持ってくるように!」
この国では貴族は勿論商家も護身の為、自分の剣を持っている。
ルナやライトも当然持っている。
平民も持っている人は持っているが、殆どは質の低い剣だ。
そもそも平民に普通の剣を売ってくれない店の方が多い。
大抵は言い包められて質の低い剣を買わされる事になる。
俺は当然剣の一つや二つ持っているが・・・
どれも神器なんだよなぁ。
神器とは神代で使われていた武器の事で、普通の武器より遥かに性能が良い。
まぁ神が使っていた物だから当然か。
話を戻すがこんな所でホイホイ神器なんか出しても良いのだろうか?
うーん、後で性能の低い剣でも創造するかぁ。
・・・神が産み出した剣だから結局神器か。
「まず、今からやって貰うのは、一対一で剣を交えてもらう。最初は魔法を使わず、純粋な剣技だけで闘ってもらう。相手が降参、または気絶及び戦闘不能になったら終了だ。分かったら剣を配るから、ここに並べ。ああそれと平民、お前はこの剣を使え」
俺は渡された剣を眺める。
明らかにボロいんですがそれは。
まぁここでも平民差別が起こるとは分かっていたが、これではまともに闘えないだろう。
それが狙いか。
試合中に魔法を使わなければ良いんだから、試合前に魔法使うのはアリだよね?
とりあえず錆だけ直すか。
還元
普通鉄の剣は錆びたら使えない。
この剣のように使い物にはならない。
だが錆びた鉄、即ち酸化鉄に炭素を加えれば再び鉄に戻る。
劣化はしているが錆びているよりかはマシだ。
こういう魔法科学は現代でもあるのかな?
まぁ無さそうだけど。
「で、俺の相手が・・・」
「やぁ平民。残念だったなぁ俺が相手で」
「お前かよ!」
俺の相手、それは五英傑の一人、万雷のオーレギオンだった。
あの先生態とこの組み合わせにしたな。
「お前のその剣で俺の相手が務まるとは到底思えないなぁ、代表さん」
「何が言いたい?」
「俺が勝ったら代表を譲れ」
「別に構わん」
「あ?やる前から負けを認めてんのか?」
「お前が勝ったらの話だがな。逆に俺が勝ったら、そうだな・・・思い付かないから別にいいや」
「お前が俺に勝つ?平民でも笑える冗談を言えるんだな」
「まぁやってみれば分かるさ」
「準備は出来たか?それでは始め!」
シュテーゲン先生の合図とともにオーレギオンが駆け出した。
流石に五英傑だけあって速いな。
だがその程度見切れない程ではない。
オーレギオンが斬りかかってきたが俺はそれをあっさりと避けた。
「なっ!?俺の剣を避けただと?」
「まだまだ詰めが甘いな。避けられる事を想定していない」
俺は体勢を崩したオーレギオンに向かって斬りかかる。
「ぐっ!」
オーレギオンは必死に俺の剣を受ける。
「お前どういう事だ!何故その剣で俺と渡り合える!?」
「何を言っているんだ?今回は皆同じ剣じゃないか」
「くっ、巫山戯るなぁぁ」
オーレギオンは俺の剣を弾き、体勢を整えて剣を前に突き出す。
「いいぜ。こうなったら俺のとっておきを見せてやろう」
そう言うとオーレギオンは剣を斜めに払い、姿勢を低くして構える。
「雷神流奥義・雷汪牙!」
オーレギオンが一瞬で間合いを詰め、剣を突き刺す。
そう言えばライトが言っていたが、貴族は剣術を習う際にある流派に入門する。
例えば獄炎流や海帝流など人によって入る流派は異なっている。
技名から見るに、オーレギオンはその中の雷神流に所属しているのか。
という事をオーレギオンが間合いを詰め、剣を突き刺そうとしている間に思考していた。
まぁこの程度余裕だな。
俺は突き刺そうとしているオーレギオンの剣先を指で掴んだ。
「なっ?!俺の奥義を、俺の剣を掴んだだと!?」
「言っただろう?詰めが甘いと」
俺は自分の剣の柄をオーレギオンの鳩尾に入れる。
「ぐはっ」
オーレギオンは暫く悶え、そして気絶した。
そして俺の勝利に終わった。
まぁ当然だな。
名前がドイツっぽいのは俺がドイツ好きだからです。暴風のカイザー=メーメルとかもろドイツ