第1話 神は目覚める
俺は目覚めた。
鳥の鳴き声が聞こえる。
今は朝だろうか?
それよりも今は転生体と記憶の状態を確認しないと。
「記憶も・・・特に問題はないかな」
どうやら転生は成功したようだ。
ただ、転生体が少し幼すぎるのが微妙だな。
それは兎も角、今の情報を整理しよう。俺の名前は、ゼロ=グランディオ、10歳。
グランディオ家の長男だ。
何らかの能力があるかと思ったが、どうやらこの体本体には能力は無いように思える。
遺伝の過程で能力の無い人間が生まれてしまったと言うことか?
周りを見渡すと壁や天井が所々剥がれているし、家具も汚い。
そこまで裕福な家ではないのかもしれない。
いや、そうだろう。
「おはよう。もう目覚めたのか?」
そう言いながら入ってきたのは俺の父、ルーク=グランディオだ。
母は数年前に若くして亡くなったらしい。
要はシングルファザーだ。
「ああ、おはよう。」
「ご飯ならもう出来ているから、早く来なさい」
それ言われてベッドから起き上がる。
よく見るとベッドもぼろぼろじゃないか?
一体どれだけ貧乏なんだよ。
そして予想通り朝食も非常に質素なものだった。
「すまんな、いつもこんな物しかなくて・・・」
「いいよいいよ別に。大変なのは分かってるからさ」
「そうか、ありがとう」
・・・そもそも前世では食事なんて滅多にしていなかったから、今更質素な食事に何も感じることはない。
ただ父の顔は非常に悲観だった。
とりあえず話題を変えよう。
「そう言えば、ここに歴史の本とかある?」
「お、勉強か?感心だな。確かこの棚にあったぞ」
「ありがとう」
食事を終え、俺は本棚の隅にある歴史書を取り出す。
この2000年の間に何があったかぐらいは知っておきたい。
と思ったが、よく見たら歴史のスタートが100年前からになっている。
俺が転生した後の1900年はどうなったんだよ。
「んー、この国の興生ぐらいしか書いてないな、つまらん」
俺が本を閉じようとした時、裏表紙に一枚の紙が挟まっていた。
「ゲールノーア学園のご紹介?」
「ああ、それは父さんが子供の時にもらった紹介状だ」
「父さんはそこに行ったの?」
「いや、行かなかった。街は治安が悪いって親に言われてたからなぁ」
「治安が悪い?」
「この国の国王が今の代になってからだな。横暴な政策や貴族優遇とかで街の治安は最悪、まさに地獄だな」
それは予想してなかった。
魔族じゃなくて人間が治安を乱すとは。
これは許しがたいな。
「お前、学校に行きたいのか?」
「・・・そりゃ行きたいけど」
「俺はお前の意思を尊重するつもりだ。だが年齢制限はないが、適正年齢ではない。お前はまだ10だ。通えるまではあと2年はかかる」
「年齢制限がないなら大丈夫だ。俺は行くよ」
「本気か?あそこの入試はメチャクチャ難しいぞ。小さい頃から勉学を受けている貴族がようやく受かるぐらいだぞ」
「それでも行くよ」
「・・・まぁ好きにしなさい。それにその招待状は使ってないからまだ有効のはずだ。行くからには頑張ってこい。父さんはいつでもお前の事を応援している」
「ありがとう」
よし、親からのOKを得た。
父さんによると、学校の入試まではあと一週間ぐらいらしい。
早速準備して街に向かおう。