第18話 神は考察する
ゼロは代表に選ばれました。
もうなんか未来が想像できる。
魔導祭の代表決めは割とすんなり終わり、一時間目終了まで時間が余ったのでルナ、ライトと雑談していた。
「まさか俺が代表になるとはな。てっきり五英傑の中で決まると思っていたんだけどなぁ」
「僕とルナは勿論ゼロに入れたんだけど、まぁ商家の中には貴族を良く思わない人達もいるからね。その商家が貴族に贔屓されているか蔑視されているかによるんだ」
「だろうな。だがイーゼルも俺に入れるとは想定外だったな」
「えっ?イーゼルくんもゼロくんに入れたの?」
「目立たせて国家の目に触れさせたいんだとよ。それにあの五英傑の三人、やけに簡単に引き下がったからな。何か裏があるかもしれん」
「それって大丈夫?貴族の圧力でゼロくんの家潰されない?」
「あんな辺境の家潰したところで貴族に何も影響ないだろ。それに俺は商家じゃないし、態々構う必要もない。それより問題は俺に票を入れたのがイーゼルを除いて全員商家だって事だ」
「あー、今回の事で明らかに対立しちゃったからね。僕のヴォルレアン工房とルナのエルサーラ装飾店は国家御用達だから潰されるなんて事はないだろうけど・・・」
「他に入れた人は貴族の圧力に苦しめられるかもしれない。ゼロくん、どうにかならないの?」
「まぁそもそも俺を代表にしたがっていたのはイーゼルだし、イーゼルにとって俺に票を入れた商家は味方勢力の筈だから恐らく問題はない。だが俺の存在自体が貴族に対を為す者だから、イーゼルの目の届かないところでやられたらどうしようもない。貴族にとって俺は邪魔でしかなく、国の根本を揺るがす存在。だからそれにイーゼルは目をつけた。全く迷惑でしかない話だ」
そもそも人間がここまで衰退した存在にならなければ、俺はこんな事する必要は無かったんだけどな。
はぁ、やっぱり転生せずに人間を見守っといた方が良かったのか?
まぁ今更そんな事思っても変わらないし、それに・・・俺が与えた能力で自らを破滅に追い込むやり方が気に食わん。
そもそも人間族の理念としては万民平等の筈だったからな。
それを神族は理解している・・・筈・・・!?
待てよ、神族の寿命は約2000年、俺の転生当時の平均年齢は約1800歳。
だから転生後200年程はまだ正常な状態、所謂万民平等を取っていた。
確か不死神も似たような事を言っていたな。
となるとやはり変わったのは俺の転生後200年経ってから。
人間族の根本を覆す何かがあったという事か。
「どうしたのゼロくん?急に黙っちゃって」
「あ、いや、何でもない」
とりあえず今は情報が少なすぎる。
後でイーゼルにその辺を聞かないとな。
流石に歴史の全てが消えるなんて事は・・・ないよね?
時は少し戻り、昨日の夜。
修繕のブラント=ヘスは自室に籠り、ゼロ=グランディオが使っていたMPSを凝視していた。
「やっぱり何処も異常は無いんだよねぇ。でも階層は24を示しているし・・・」
僕は頭を悩ませる。
あの平民のゼロ=グランディオが嘘をついていた事もそうだが、何故存在しない階層の数字を示している事に。
「・・・まさか、あの遺跡は元々24階層?たとえそうだとしても何の能力も持たない平民が未踏の階層に辿り着き、敵を倒すなんて事があり得るのか?」
そういえば''含有能力値割合測定魔導板''や"威力測定魔導板"にも異常は無かった。
となれば、ゼロ=グランディオが出したあの数値は本当という事になる。
彼は一体何者なのか?
明日学校で聞いてみよう。
ゼロの正体に迫る者が一人・・・