第11話 神はダンジョンを貫通する
ダンジョン。
主に遺跡に魔物が蔓延る事で成立する建造物だ。
ダンジョンには幾つもの階層があり、深ければ深いほど敵は強くなる。
そして最下層にはダンジョンのボスがいるのが普通だ。
攻略されていない限り・・・
「よし!早速だが君達にはダンジョンに挑んでもらう。なに心配するな。最も攻略難易度が低く、''不死の遺跡''と呼ばれているダンジョンだ。その名の通り、ここで死んだ者はいない!ここで測るのは攻略速度だ。このダンジョンの階層23階層あるが、時間内に辿り着く事は不可能、三日かけて漸く到着出来る。君達には今から挑んで、何階層まで辿り着いたかで測る。挑む際にはこの''MPS''を着けてもらう。これがあれば自分が今何階層にいるのかが分かる。そして時間なったらこれが鳴るから、鳴ったら戻ってこい。それじゃあ、貴族、商家で三人ずつパーティーを組んでくれ」
「おい、ちょっと待て。40人いるのに三人ずつはおかしいだろ?」
「あ?平民なんだから貴様は一人で行け!あ、因みに行った階層は記録されるから敗走したらすぐ分かるからな!」
ダンジョンに一人で行かせる教師が何処にいる!?(ここにいます)
とりあえず先生と会話してる最中に皆行っちゃったし、しゃーなしで一人で行くか。
「やっぱりもう倒されちゃってるか、ヒマだな」
1階層、2階層と特に何もせずに進んでいく。
こうも何も無いとつまらんな。
にしても不死の遺跡ねぇ・・・そんなに死なないんなら直接最下層に行こうかな?
階層が判明しているという事は既に攻略済みという事だし。
ここの床って只の岩かな?
・・・コンコン、まぁいいか。
俺は通路から何も無い小部屋に入り、下の階層に誰もいないことを確認し、魔法を発動する。
『火炎柱』
ズドーン!!!
巨大な轟音と共に火の柱が床を貫いた。
「さて、どこまで貫通したかな?」
俺は空いた穴の中に飛び込み、一番下に着地する。
辺りは暗く、松明が数本あるだけだ。
「今思ったが全階層同じ造りで助かったな。んで今の階層は・・・23階層。よし、完璧」
小部屋から通路に出ると、目の前に巨大な空間があった。
恐らくここがボス部屋なんだろう。
当然攻略済みだから何も無い。
「だだっ広いだけで何も無いな・・・この壁、何かおかしいな?若干崩れてるし・・・ていっ!」
俺が壁を殴ると岩が崩壊し、通路というか階段が現れた。
「・・・23階層で終わりじゃねーじゃん」
俺は崩壊した壁の中に入り、階段を下っていった。
一方その頃、五英傑イーゼル、ルナ、ライトはパーティーを組み、7階層に来ていた。
「・・・何か凄い音しなかった?ライトくん」
「ああ、どっかのパーティーが戦っているんじゃないか?それより王子殿下大丈夫でしたか?」
「僕は大丈夫さ。それより公式の場でない限り名前で呼んでくれないかな?敬語もなしで」
「え?しかし・・・」
「確かに僕はこの王国の王子だ。でもこの場に居るときは一学生だ。だから皆みたいに名前で呼んで欲しい」
「分かったよ、イーゼル」
「うん、分かった。イーゼルくん!」
「それでいいよ。それより一つの階層が凄く広いな。他のダンジョンとは比べ物にならないくらい」
「イーゼルくんは他のダンジョンに行ったことがあるの?」
「これでも王国の王子だからね。領土の視察ぐらいはするよ・・・と、敵が来たみたいだね、戦闘準備!」
グギャアアアアアアア!
「あれはゴブリンだ、数は少なくない!行くよ!ライト、ルナ!」
「ああ!魔法設計・・・『大投擲』!」
「うん!『星光』!」
「よし!後は僕が・・・『大地の怒り』!」
グギャアアァァァァ・・・
「ふぅ、これで終わりかな?」
「流石に強いな、イーゼル」
「イーゼルくん凄かったよ!」
「ありがとう。それじゃあ進もう!」
「そういえばゼロくんは大丈夫かなぁ?」
「不死の遺跡で死ぬことは無いだろうけど・・・流石に一人はなぁ」
「ゼロといえば平民の?彼なら多分大丈夫じゃないかな。あれだけの能力があれば一人でも攻略は容易だよ」
「イーゼルくんは貴族サイドなのにゼロくんを否定しないんだね、意外」
「多分僕ぐらいしかいないよ。僕は今の貴族社会が嫌いなんだ。貴族も商家も平民も皆同じ人間なのに・・・あっ、この話は内緒ね。バレたら立場的に問題だから」
「・・・」
ライトとルナは衝撃を受けていた。
何故なら一国の王子が国家の体制に批判的だからだ。
その後、イーゼルのこの考えがとんでもない事態を齎すと言う事を二人は知る由もなかった。
イーゼル=グランツはグランツ王国の第一王子です。最後に伏線を張りましたが回収するのは相当先です。←じゃあ何で出したんだよ