第9話 神は歴史を学ぶ
二時間目、王国歴史学。
その名の通りここグランツ王国の歴史を学ぶ学科だ。
そもそもグランツ王国建国が100年前なのでそれより昔はやはり分からないだろう。
時間になって教室に入って来たのは見たまんまの貴族だった。
「皆さん、はじめまして、王国歴史学担当の、ルキエル=サヴァンです、どうぞ、よろしく」
普通に喋らんかい!
ホント貴族に碌なやついないな。
っていうかサヴァンてことは、こいつも神族の家系か?
「はい、ということでね、早速、授業を、始めて、いきます、まず、王国の、誕生、から、話し、ます」
・・・このまま聴いてても話が入ってこないな。
「約100年前現在のグランツ王国を建国したのは初代国王ダリアル=グランツで自身の能力である大地で廃れていたグランセルを復興したそれで国を興した初代国王ダリアル=グランツは・・・」
うぉぉい、急に早口で語り出したぞ。
しかもほぼ途切れずに。やっぱり''彼女''と変わらんな。
''記憶''をそのまま出してる感じだ。
しかし、話を聴いても特に目ぼしい情報は出てこなかったな。
ここは一つ訊いてみるか。
「と、いう事で、王国の、歴史を、話したが、何か、質問は、あるかい?」
「はい、王国建国以前の歴史はどうなってたんですか?」
『・・・』
ん?
何で静まりかえるんだ?
俺なんかまずいこと言ったか?
「君は、そうか、平民は、だから、知らないん、だね、建国以前は、禁忌、触れては、いけない、忌まわしき、歴史、だが、伝説、でもある、それを、話そう」
「・・・伝説?」
「約2000前絶対神様は滅びかけた我々人間族を救いなさったそして消えた同時に歴史そのものも消えかけたしかしは記憶神様は記憶している私は記憶神様の記憶を受け継いでいるしかし歴史は途中で消えた歴史が動き出したのはグランツ王国建国の時から消えた歴史は蘇っただが消えていた歴史の内容は分からない歴史は消えたのではなく消された可能性がある消えていた歴史の間に何かが起こったしかしそれは善いものではない我々人間族にとっては忌むべき事実それを揉み消しただから100年より前の歴史は存在しない存在してはならない我々はそれを知ることも探ることも出来ないなぜならその当時を生きた人物はいないから王都グランセルは当時酷く廃れていたそれが物語っている」
お、おう。
つまり俺が転生してから王国建国までの歴史が消されたと。
まぁ記憶のサヴァンが言うからには事実なんだろうな。
しかし歴史を消す、かぁ。
歪められるやつなら知ってんだけどなぁ。
その後他の生徒の質疑応答を経て二時間目は終了した。
「あの先生早口すぎ!全然ノートに書けなかったよ!」
ルナが嘆くとライトが後ろから答えた。
「ルキエル先生の能力は記憶、あらゆる物事を記憶する事が出来るんだ。だけどこの能力のデメリットは記憶した情報が一気に放出されてしまう事なんだよ」
「ライト、良く知ってるな。先生の能力の事」
「うん、僕の友人に情報通がいてね。そうだ王国建国以前の歴史を調べたいんなら図書館に行けばいいよ!」
「図書館?」
「この城兼学校に併設されている国立図書館だよ。学生なら誰でも入れるし、一度行ってみたら?」
国立図書館か、まぁ一度ぐらい行ってみるか。
「ありがとう、今度暇なときに行ってみるわ」
「ああ。話は変わるけど、もう昼だし三人でご飯食べに行かない?次の授業1時からだし」
「行く行く!」
「(食べる必要無いけど)あぁ行こう」
食事シーンは割愛