1.誕生日
前回の続きです
物語がやっと始まります
最後まで読んでいただけたら嬉しいです
―世の中には能力を持った様々な人がいる。例えば、スポーツ感覚に長けている人、コミュニケーション能力に長けている人など人々は何かしらの能力を持って生まれてくる。その中でも常人とはかけ離れている能力を持って生まれてくるものもいる。彼らは人々にこう呼ばれている。アンフィニと…
Now Roading…
5月20日、気温20℃のほのかに暖かく、見上げれば晴天の空に包まれている。周りを見れば、歩道橋の下を忙しそうに走る車たち、それを歩道で包むようにたたずんでいる生い茂っている木々、広い土地なのに狭そうに並んでいるビルなどの建造物。いつもの風景だ、あることを除けば…
「緊急速報!緊急速報!」
街にあるスピーカーが壊れるのではないかと思わせるくらいに鳴り響いた。
「Bクラスの鬼が2体出現!繰り返します、Bクラスの鬼が2体出現!直ちに避難を開始してください!」
ここら辺一帯の都市には鬼という生物が不規則に現れるゲートと言う黒い輪っかから出てきて、人々を食べ、殺し、残虐を繰り返す。それを防ぐために都市の町などに守護者を任命し、日々鬼退治が行われている。
「あーあ、せっかくの有給だってのに出動命令出ちゃったよ」
立ち並んでいるビルの上を飛び越えている2人の男女の男性がだるそうに話している。年は26、7くらいだろうかどちらにしても20代後半の顔にはかわりはない。
「仕方ないですよ、Bクラス2体なんですから。もっとシャキッとしてくださいよ柊さん」
男性の隣にいた女の子が注意する。なぜそのような刀を持っているのかと訪ねたいぐらいの年の少女だ。
「というか柊さんお子さんが生まれたらしいですね!おめでとうございます!」
「お!ありがとうなぁ!そうなんだよぉ!えへへぇ!可愛い娘なんだよぉ!っていつも思うけど彩沙ちゃん5歳なのにそんなに話せるよね!おじさんびっくりだよぉ」
子供のことを言われ少し嬉しそうに照れている20代後半のおじさんが驚きの表情を同時に浮かべた。
「私の家は由緒正しき武士の家なので礼儀作法及び大半の能力は5歳で身につかされます」
彩沙は満更ではない表情をして自慢して言った。
「そんなこと言っているうちに目的地に着きますよ。気をつけてくださいねなんたってBクラス2体ですから」
「了解了解、早く娘に会いたいからさっさと片付けよ〜!」
そう言って柊は羽織っている薄い黒いコートを翻した。
Now Loading…
ここは彗星町ざっくり言うと人外生命体の鬼が出現する場所。
今日もここで鬼が出たので柊という20代後半のおじさんと彩沙という5歳の幼女が退治しに向かっている。
「ここか」
柊が電柱の上から鬼を遠目に見ていた。
「柊さん、電柱に乗るのはいいですが転んで感電しないでくださいよ」
彩沙が呆れながらため息をついた。そして顔を引き締め
「確かにいますねさすがBクラスと言うべきでしょうか大きいですね…」
2人の目の先には大きな病院があり、その中に全長3mだろうかそのぐらいの大きな暗い色の物体が奇妙な声を上げてさ迷っている。
「けどまぁ、避難はすんでいるから大丈夫なんだろ?」
「はい、そのように連絡は来たので好きなようにやってもいいですよ!」
今のこの世の中になってしまったので人類も色々と試行錯誤し短距離瞬間移動装置、通称モーメントを開発した。これは簡単に言うと、近くにある絶対安全な広大な空間に瞬間移動するということだ。
「おーやってやるぜw、うん?」
病院のなかをよく見ると2体の鬼が同じ場所に向かっているように見えた。
おかしいな、鬼は団体行動はあまりしないはずだが、
「どうしたんですか柊さん、珍しく考えてますけど」
柊が考えることは珍しいので、少し心配した様子で彩沙は訪ねた。
「まさか!!」
柊はなにかに気づいて全速力で鬼のいる階の上の階にある窓に突っ込んだ。
「ひ、柊さん!?」
「彩沙ちゃん!急いでくれ!!多分人が残っている!」
「人ですか!?」
彩沙は驚きの表情を浮かべ焦りながら柊の後に続いた。
病院のなかに入り、
「柊さんなんで中に人がいると思ったんですか?」
不思議そうに尋ねると、
「鬼は人の発する生命エネルギーに反応して人を襲う、そして今回出た鬼は2体とも同じ場所に向かって歩いているように見えた。そして基本的に鬼は知力が低い種が多いから複数で行動することは考えにくいということだ」
柊の決定的な見解を聞き、焦りだした彩沙
「多分、手術中で手術室にこもっていた人達が連絡に気づかず残ってしまったのだろう、急ぐぞ!」
「は、はい!!」
Now Loading…
「Djtdjdgdjdt'dtdtgdgdtmt'tdgaj@,j'jgjtdjdtd...」
「気味悪いな何言ってるんだよ」
柊と彩沙の2人は鬼の後に忍び込んで近づいていた。
そして、鬼の向かっていたところは柊の思った通り手術室だった。
「柊さん!」
「分かってる、よし行くぞ!」
―キイィィィ
柊が手から不思議な光を発している。
そして、鬼が手術室のドアに手をつけ開けようとした瞬間。
ズガン!!!!!
2体の鬼の上半身と下半身が真っ二つにわかれた。
「Pdptdtdgat'pag@jgjpd8md4jdpagb......」
鬼は奇妙な声を上げ砂漠の砂のようにパラパラと消えてしまった。
「さすがです!柊さん!」
「まだ終わってないよ手術室の中の人を助けなきゃね」
柊と彩沙は、急いで手術室のなかに向かった。
中には女性と医者が赤ん坊を守るかのように囲っていた。
「もう、大丈夫ですよ」
女性はその声を聞き安心したのか崩れるように泣き出した
「ありがとうございます、ありがとうございます」
女性は赤ん坊を抱えながら柊たちに感謝をした。
「わぁ、赤ちゃんだ可愛いですね。うちの子も生まれたばかりなんです」
その穏やかな優しい声に安心したのかまた女性は泣き出してしまった。
「大丈夫です、大丈夫ですよもう鬼は来ませんから」
そう言って柊はにこやかに微笑む、
「わああ、かわいい赤ちゃん!かわいい!お名前はなんですか?」
医者たちと話していた彩沙が赤ん坊に気づきパアァとした表情をしながら聞いてきた、
「この子はクロムって言うんです、黒星クロム、亡くなった夫と一緒に決めた名前なんです」
「あ、すみません夫さんお亡くなりになられてたんですね…」
そう彩沙が言うと
「いや大丈夫ですよ、私の夫はなくなったというのかそ…」
「ん?」
柊がなにかに気づいた。
「これは、まずいな彩沙ちゃん急いでお医者さんと女性とそのお子さんを連れて入口にある、モーメントにいって!まずいのが来る」
その場にいた柊以外の人がどよめいた。
「え、なにが怒ったんですか?」
1人の医者が少し動揺しながら柊に尋ねた
柊は少し焦ったような素振りをして、
「鬼が来ます、多分あと2分でここにゲートが開きます、今ならまだ間に合います早くモーメントに行ってください!」
Now Loading…
彩沙たちは急いでモーメントのある1回の入口へ向かった
「あと少しですので頑張ってください!」
モーメントまであと100mちかくまで迫っていた
柊さん足止めをするって言ってたけど大丈夫なのかな、そのとき
「いそげーーー!」
後ろから柊の叫ぶ声がする、彩沙が後ろをみると…
人がおってきていた、黒い肌、2本の角を生やし…いやあれは鬼だ!鬼が人の姿をしている!!
「みなさんあと少しです!」
柊をよく見ると片腕が無くなっている、彩沙は目に涙を浮かべながら走っていた、
「ぐわああぁ!」
「きゃああぁぁ!」
医者たちが人型の鬼にどんどん倒されていく声がした。
残ったのは彩沙と女性とその赤ん坊。
3人はモーメントから1mくらいの距離にいた、そのとき
「え…!?」
3人のすぐ横に鬼の姿があった
そして女性が、血を流した
その衝動で赤ん坊を手放してしまった
彩沙は赤ん坊を拾おうとした時
ガン!!
なにかに頭をすごい勢いで押し付けられた
鬼の手だ
「ぐぐぐぅ、ぅぅ」
彩沙は動こうとするも力が強すぎて動くことが出来ない
「うおおおお!」
柊の声がした
ズガン!!!!!
と鈍い音がしたそれと同時に鬼が吹っ飛ばされた
「彩沙ちゃん鬼はすぐに戻ってくる早くその赤ん坊と一緒にモーメントに!」
柊が声を荒らげて言った、きっと立っているだけで精一杯だろう
「あや…さちゃん」
その声のする方向に顔を向けると、赤ん坊の母親だった
「その子…をクロ…ムを、よ…ろしく…ね」
精一杯の微笑みだった
「はい…分かりました…」
彩沙は涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらモーメントで赤ん坊と一緒に移動した
「さぁて、鬼さんよぉ、いっちょいきますか!」
柊はそう言って鬼のいる方向へ向かっていった
Now Loading…
「彗星町主守護者 柊 将斗は私とこの赤ん坊を守るために身を呈してモーメントまで移動させました」
彩沙は涙で溢れた顔を下げながらある会議室である男性と話していた
「そうか…柊が…」
その男性は各町の守護を統率する人物で町の会議長という役職をしている
「ところで彩沙ちゃん、その赤ん坊は?」
「クロム、黒星クロムが名前です、今回出現した人型鬼に殺された女性のご子息です」
「なるほど、ではその子はこれからどうするんだい?」
「これからは家で預からせていただきます」
「わかった、戦力になるように頼むよ」
「はい…」
クロム…
彩沙はなにがあったか分からないであろうクロムできる限りの笑顔をしてみせた
そうしたらクロムは無邪気な笑顔を返してくれた
クロム、これから…
Now Loading…
あれから今日で15年の歳月がたった
今日は5月20日、気温は23℃、温かさと涼しさが混ざったようなけれどすごい暑い訳では無い気温だ
「彩沙姉さんおはよう」
「おはようクロム」
クロムは15歳になっていた、そして彩沙は20歳
あのあと彩沙の家へ養子という形で戸籍登録され、性名は黒星クロムのままで、とても大きな家にすんでいる
血の繋がりはもちろんないが実の姉弟のように仲がいい
「クロムは今日何かあるの?」
「なんか俺宛に手紙が来てたから見てみたら『今日の午後3時に彗星町のCafe なめらか まで来て欲しい』って書いてあった」
不思議そうに手紙をみるクロムを何故か嬉しそうにみる彩沙
「じゃあ、私も一緒にいこうかな?」
すこしニヤニヤしながら冗談をいった
「いや、これは俺にとってなにか大切なことでもあるような感じがするから、彩沙姉さんには悪いけど1人で行かせてもらうよ」
「うん、それがいいね、頑張ってきなさいよ!」
頑張ってきなさいよ?彩沙姉さんなにかしってるのかな?
クロムはそう思いながらも既に午後1時だったので、家を後にした
「クロムあれからあなたはつよくなったよね、だから今度はその強さを守るために使いなさい」
彩沙はクロムが去った後独り言のように呟いた
その日は15年前とおなじく晴天に包まれていたという
最後まで読んでいただきありがとうございました!コメントなどのアドバイスよろしくお願いします!