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第6話、修学旅行-前編

気が付けばさらに時は流れ、秋になっていた。

紅葉がすごく綺麗で、周りの景色も色づいてく中、ものすごいイベントがやってきた。


「というわけで明日から修学旅行です。先生の立場からならしっかり真面目に学んでくださいとか言うんだけども、個人的には思い切り楽しんで、忘れない思い出にして欲しいなと思います」


私は教壇の前で話をしていた。明日からついに修学旅行が始まる。私ももちろん楽しみにしていた。

引率とは言え、しっかりと旅行に行けるのは嬉しい。何より藍と一緒だというのは嬉しい。


「まぁ明日は、朝早いから、バスの中では寝ててもいいので、遅刻だけしないように、それじゃあまた明日ね」

私はそう言って教室をでた。職員室に戻ると修学旅行のしおりを見返した。


明日から京都へと2泊3日の旅行が始まる。スーツではなく、前に買った服を着ていける。

藍と一緒に選んでよかったな、でも藍と2人では回れないのは少し残念だ。

あの子はクラスでも人気があるので、班を決めるときに困らなかった。


今日は部活もなしにしたので家に帰ってのんびりできる。帰ってゆっくり休もう。

私は荷物をまとめ職員室を出た。そしてそのまま帰宅した。


次の日の朝、私は目が覚めると学校まで向かった。生徒よりも早くというのは少しだけ辛い。

先生たちで集まって打ち合わせをした。そして生徒達が来るのを待った。


「夢野先生、おはよう」


「おはよう、ゆっくり眠れた?」


「はい、バッチリです」


「じゃあ楽しんでこうね」


そんな感じで生徒たちは次々と集まってきた。そのうち、藍達もやってきた。

なんか少し疲れた感じの顔をしてる。私は藍のいるグループに入っていった。


「やぁ、昨日はみんなでお楽しみだったのかな?」


「あ、わかります?昨日藍の家にみんなで泊まったんですよ」


「いいなぁ楽しそうで、私も混ぜてほしかったなー」


「あー夢野先生も誘えばよかったね」


「うんうん、次から誘ってねー」


そんな感じで生徒たちと話していたら、時間となった。

みんな各クラスのバスに乗り込んだ。そして2泊3日の京都の旅は始まった。


バスに揺られて、外の景色を見る、特に面白くはなかった。

ただの高速道路だから当たり前だ。後ろではワイワイ楽しんでいる。

みんなが楽しんでるみたいで嬉しかった。私はやることがなく、静かに目を閉じた。


そして次に目を覚ましたときは、目的地についていた。私は少しだけ体を伸ばすと、バスを降りた。

まずは金閣寺を見ることになっていた。中へ入ると少しこじゃれた感じになっている。

池の中にそびえ立つ、その建物は見事に金だった。ただ、1分も見てれば飽きてくる。正直寺とかは好きではない。


「あ、夢野先生、一緒に写真撮ろう」


「うん、いいね、一緒に撮ろう」


そしていろんな女子生徒たちと金閣寺を背景に撮った。見てるよりこっちのが楽しい。みんながはしゃいでキラキラ輝いてる笑顔

私には貼り付けてある金よりも眩しい。旅行は何処へ行くかより誰と行くかの方が重要なんだと改めて認識した。


みんなの後ろをついて回る、数年前は私も一緒に輝いた瞳で走り回ったけな。ここも1つ思い出の場所だった。

藍の方をチラッと見ると楽しそうにしていた。こちらを振り返らずにみんなと一緒に

その横顔にふとさみしさを覚えた。この頃私と一緒にいてくれた時あるけど、やっぱり同級生の方が楽しいよね。

一緒にお泊りする仲だし、藍がこちらを振り返ると、私は小さく微笑んだ。

楽しんでるねとそんな表情で、少しだけ微笑んだ。やっぱり藍に話しかけられないのは少し辛かった。


それを紛らわすように、周りの子達は私に話しかけてくる。さみしさは少しだけ埋めることができた。


時間が過ぎて、ようやく初日に泊まるホテルへと着いた。

気が付けば藍からメールがいくつか来てた。一番最後のメールを開いた。


「一緒に回ろう?」

そういえばマナーモードにしていて気付かなかった。ついつい目の前のことで手一杯だった。


私は謝ろう、そう思って一言のメールを打った。つい短文ばっかになってしまう。


「ごめんね」

その一言だけだった。言葉がわからない、何を言えばいいのか、何を贈ればいいのか。

メールを送ってから1時間、2時間過ぎても返信はなかった。みんなが揃う夕食の時、私は藍とすれ違った。

でも、下を向いてた私は藍と顔を合わせることがなかった。


私には昔から好きな言葉がある。


「たった一言が人の心を傷つける、たった一言が人の心を温める」

私はこの言葉に惹かれた。だけど温め方はまるでわからなかった。

いずれ誰かを温めたいそう思ったけど、私にはとても無理な話だったのかもしれない。



「あれ?夢野先生どったの?」


「うん、少し疲れたのかな、移動とか多かったし」


「そっか、晩ご飯食べないからどうしたのかなって」


そう言って女生徒はデザートのゼリーをくれた。

ありがとうと言って一言言うと楽しく夕食を食べ始めた。


「ねぇ食べ終わったら部屋で一緒にトランプやろうよ」


「いいね、やろうやろう」

私は単純なのかな、一緒にトランプをやるときにはすっかりご機嫌になっていた。

修学旅行といえばやっぱりこれだ。すごい楽しい。

私は目の前のことに、夢中になった。夢中になればすごく楽しかった。



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