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第2話、再開

不思議な出会いから数日が過ぎた。あの日アドレスを聞き忘れた。そのおかげで彼女の情報が井ノ原藍しかなかった。

また、会えるよと、彼女は言ってくれたが根拠なんてなかった。またあの場所で会えるかな、そう思って春休みの間は無駄に外出した。

しかし気が付けば時は過ぎて、始業式を迎えた。今日からまた仕事かと思い久しぶりにメイクをして、メガネをかけた。私がメイクするのは仕事の時だけだ。

メガネもかければさらに頭がよくみられる気がする。よくあるあの動作をしたくてかけてるだけだ。


今年は3年生のクラスを受け持つ側として、今日は気合入れて行こうと思った、今年のクラスはどんな人がいるのか楽しみにしていて、クラスで何を話そうかいろいろと考えていた。

みんな就職や受験で忙しくなりそうだし、クラスで何か思い出に残ることとかしたいな等と考えているうちに始業式が終わった。


教室へ行くと、話し声が聞こえてくる。私は教室へ入り教卓の前に立つ。

小声で可愛いみたいな反応がちらほら聞こえてくるのは気分がいい。気合い入れてメイクした甲斐がある。

メイクをすれば可愛いは作れるのだ。一味違う私になれるのだ。


「えっと、みんな席について」

その一言を発するとみんな黙って自分の席へと戻った。逆らう人がいなくて一安心だ。みんなが席に着いたのを確認すると、私は話を始めた。


「今日からみんなの担任の夢野です。去年一緒だったことかもいるけど今年もよろしくね。今年は受験とか就職で大変かもしれないけど、1年間頑張ろうね。困ったらいつでも相談に乗るからね。それじゃあ自己紹介行ってみよう」

そう言って右端の子を指名した。普通に自己紹介が始まった、問題なのは2人目の子だった。


「はい、井ノ原藍です。進路は大学に進学したいなと思います。1年間よろしくお願いします。」


ん?井ノ原藍?私は目を疑った、やっぱりこの前会った藍だ。少しだけ目が合った気がした。

私より大人びて見えた彼女が、まさか生徒だなんて思ってもみなかった。肩先より少し長い髪を今日は2つに結んでいる。

すらっとして私より背が高い彼女は間違いなく藍だと私は確信した。


放課後呼び止めようかなと思った。まさかここで会えるなんて驚きだ。私よりしっかりしてて、気さくで明るくて奇麗で、手が温かい人。

「また、会えたね」そう、心の中で呟いた。

みんなの自己紹介が終わると、私は配るものを配り、話しは短めにきりあげてホームルームを終わらせた。


「じゃあ明日から授業始まるから、みんな頑張ろうね」

学級委員が号令をかけ、クラスは放課後の雰囲気となった。私は井ノ原さんに声をかけようと思ったが、さっそくクラスの女子と話していた。

どうやら彼女は人気者らしい。このまま何も話せないのは辛いので、さりげなく近寄って会話に加わろうとした。

でも先生としてあまり近寄ってはいけない気がした。でも少しくらいならいいよね、そう思った。


私は井ノ原さんの背後から両腕を首に回した。それに気づくとさりげなくその上から手を重ねてくれた。

今日は化粧してるけど、私のこと気づいてるのかはわからなかった。


「や、これからみんなで遊びに行くの?」


幸いにも、井ノ原さん以外、去年同じクラスだったり、吹奏楽部の子だったりで知らない人はいなかった。

「はい、そうなんですよ、先生も行きますか?」


「行きたいけど、先生まだやることあるのよ、また今度行こうね」


「え、ってか先生を誘うのにビックリしたんだけど」

井ノ原さんは驚いていた。それを見て私は少し笑った私は生徒からの信頼は厚く、たまに誘われて食事したりとかはしてきた。

悩みとか個別の相談とかも受けてきた私は信頼されてる自信があった。



「私は吹奏楽部で一緒に出掛けることもあったな、可愛いし相談にも乗ってくれるし」


「へぇそうなんだ、ところで夢野先生、そろそろ離してくれませんか?」


「あぁごめんごめん、じゃあ私そろそろ行くね」


そう言って私は教室を出た。藍は多分気づいてないだろう。なんかそんな予感がした。私は職員室に戻ってくると書類の整理を始めた。

ふと、さりげなく名簿を眺めた。近いうちに、担任として、クラスの子と面談しなければならない。その時を楽しみに待った。


なぜか、楽しみというものは、あっという間にやってきて、あっという間に過ぎるものだ。気が付けばその日を迎えていた。

ガラッとドアを開けて、藍は入ってきた。


「さぁ座って座って」


私はニコニコしながら井ノ原さんの背中を押すふりをして。そのまま肩に手を置いてギュっと抱き寄せるする。


「ちょっなにすっ、んっ」

藍は思い切り振り返った。私はそれを狙って背伸びをした。そのまま目を閉じた。

見事に二人の影は一瞬だけ重なった。感じた、私は今、青春してるなって感じた。

重なった影が離れて、深呼吸をした。


「また2人きりになれたね」


「えっ?」


「気づいてないみたいだけどさ、姫だよっ」


「ほんとに?」

そう言いながら藍は私の胸をもんできた。そこは弱いから急にはやめてほしい


「やぁ、こんなとこで、くすぐったいって、もぉ」


「やっぱり姫なんだね」


「もうどんな確認の仕方よぉ、まぁ藍らしいけどさ、好きだもんね」


そう言って私は自分の胸を強調した。藍は少し戸惑うと思いついたように言った。


「あ、先生、面談しないと、面談の時間だよ」


そういえばいちゃつく時間じゃなかったっけ。またいちゃつきたいときは放送で呼べばいいかなと心の中で思った。私はじゃあ始めようかと言って席に着いた。

そこからは2人で見つめあって面談をした。進路はどうするのとか部活は何をやってるのとか当たり前のことを聞いた。聞くことは聞いたし、もっといろんなことが知りたい。そう思った


「ついでに聞いておくけど気になってる子とかいないの?」


「先生がそれ聞きますか?質問違うでしょ」


「えぇ、そうかなぁ、じゃあ付き合ってる子は?」


「い、いないけどさぁ、そんなこと聞かないでよ、もぅ」


そういうと藍はむくれた。私はごめんごめんと言いながらほっぺたをつついた。

本当にむくれるとか可愛いな、彼氏とかいなくて一安心した私はなぜだかすごく気分がよかった。


「そっか先生もいないんだよねぇ」


藍は驚いたように振り返った。どうやら信じられなかったみたいだ。

そしてもう一つ信じがたいことが起きていた。頬をつついてたものだから、思いっきり藍の口の中に人差し指が入ってしまった。

私は面白がってそのまま奥まで入れて、藍の中で激しく動かした。


「どう?おいしい?」


「んっーんっー」

藍はバタバタと慌てていた。女の子を静かにする方法、それは耳元で囁くことだ。

私はそれを試してみた。そっと顔を耳元に近づけた。


「藍の中あったかいね、少しざらざらしてて気持ちいい」


藍は一気に真っ赤に染めた。ずっと悶えてる姿が面白い。いつも以上に可愛い姿が見れて楽しい。

私が抜くと藍は力なくその場に崩れ落ちた。


「ちょっとやりすぎちゃったかな、大丈夫?立てる?」


「はい、なんとか」


その時、チャイムが鳴り響いた。どうやら時間切れのようだ。

「また、面談しようね、2人きりで」

藍はその言葉を聞くとわずかに頷き、出ていった。私はその背中を見て楽しかったぞと誰にも聞こえない声で呟いた。


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