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大分、背丈の伸びた、藺連イズ


 中学生となった彼は、寮生活をしながら、通っていた為、実家に帰るのは久しぶりだった。久しぶりに目にする実家の庭は、いつ見ても見事な幼い頃から変わらない藺連の好きな景色のまま。


 手入れの行き届いた庭木と、澄んだ池を悠々と泳ぐ鯉。見事な日本家屋。枝垂れるような藤の花がさらさらと風に揺れる。さらっと風が抜けたように思えて、藺連は、何度もそのような光景に見惚れる。ここは、藺連にとって、とても好きな場所であり、胸の痛い思いをする場所でもある、藺連の大切な場所。


 ぼんやりしている藺連が、ふと人影を見たように思って、吸い込まれるように一点を見つめる。



 ……其処には、いつ、実家に帰ってきても目を奪われてしまう人物が居た。


 日を置いて、見る度に、透明さを増すかのような、藺連の大切な人。



 「姉さん」


 藺連が声をかけると、まるで透き通るかのような表情で、ふわりと笑う。


 まるで、今にも消え去ってしまうかのような彼女は、じっと、枝垂れた藤の花を見つめていた姿のまま藺連の方に顔を向けてそっと笑みをつくった

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