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 「桃の缶詰でも食うかい?」


 そう、茶目っ気っぽく笑って、わたしの顔を見つめる。わたしは、思わず笑顔で頷くと、青年は嬉しそうに立ち上がった。


 お洒落なキッチンカウンターに立って、青年が缶詰から硝子の器に盛った桃を受け取る。


 準備をしながら、青年はまるで歌うように口にした、その後の青年の歩みは、ひどく簡潔で。わたしは、あんまりにもあっさりしたものだから、ふっ、笑みを浮かべた。


 ——それは、つまり、青年はがんばって、そののち、一級建築士になりましたとさ。と


 青年が茶目っ気たっぷりにそういったからだった。


 そう。彼は、夢をかなえたのだ。


 青年は、謡うように言う。僕は、その方が良かったのだと。


 そして、一瞬で顔を暗くして、青年は言った。


 「……そして、姉さんは、壊れていったんだ……僕は、今でも思うよ。僕が姉さんの傍をあの時離れていなければ……と」


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