表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/89

78


ふと、藺連イズは、不安な気持ちになる。今、辺りを見渡せば、そこは暗い廊下で……藺連は、パニックを起こした。


 母から叱責を受けて、その日を何とかやりすごして、自分を殺して、眠りについた筈だった。自分の寝具にくるまった感触を藺連は、覚えている。


 ——それなのに。


 ……一体、ぼくは、どうしてしまったんだろう。


 記憶が途切れてしまったり、夜中に知らずに歩きだしてしまったり……おかしくなっていく自分を敏感に感じ取っている藺連は、そのようなことを誰にも相談出来なくて……ただただ、怖くなる。


 すっとひんやりする夜の空気を吸って、こつんっと、背中を壁に押し付けた。そのままずるずると座り込む。


 その時、だろうか……カチッとする音がして、壁だと思っていた空間が突然開いたと思うと、そのまま藺連は、床にひっくりかえって、すんでのところで誰かに支えられた。……その匂い。藺連の好きな姉さんの匂い。


 そのまま目線を上げると、驚いた顔をした、姉さんの目とぶつかる。髪を下ろし、寝間着をまとった姉さんは、湿った髪をしていた。ふわりとシャンプーの香りがする。



 「……まぁ、おどろいた。藺連、こんな真夜中にどうしたの……?」


 藺連は、思わず安心したのか、涙がこぼれて、頬を伝っていくのを感じて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ