7.光にとけてゆれる髪
ユキは、わたしの言葉に、ふしぎそうな顔をして、ほんの少し、左に首を傾げる。
ショートボムの彼女の髪が、まるで幻のようにさらりと光にとけてゆれてみえた。
思わず、わたしは、頬をゆるめる。
――ユキは、気づいていないのだ。……彼女は、自らがどれだけ嬉しそうな顔をしているのかを……。
わたしは、それ、の理由に、おもいたって、くすぐったい心地に。
――それは、あまりにも心地よくて、……あまりにも自意識過剰なわたしの想像と予感であったけれど、それは、わたしにとってとても、心地よい想像だった、から。
わたしは、ユキに手を借り、身体を起こす。
彼女の小さい白魚のような手は、とても頼りなかったけれども、彼女はよろけたりはしなかった。
彼女の腕は少しふるえていて、私は、またくすぐったくなる。
彼女はちからのないくせに、変なところでわたしに弱みをみせようとはしない。彼女はまるでちいさなおませなお姉さんだった。わたしのことをなんでもわかっているのよという顔をして、常になにかしら気にかけてくれるそのような空気を感じて、
……だから、なのかもしれない。わたしは、ユキにはすべてを話してしまう。
今まで……本当にだれにも話せなかったわたしのこころの奥の底の底まで、彼女にきづけば打ち明けてしまう。彼女は、そんな包み込むような心地よさを常にわたしにくれようとしてくれる。
彼女のかけひきのない純粋なやわらかな優しさが、わたしにはとてもくすぐったく、
そして、同時に、彼女にこころを赦してしまう、理由にもなっていた。
わたしは、先ほど思ってしまったことを彼女に尋ねようとする。
「――ユキは、わたしとお話するの、そんなに好き?」
そっと、ほんとうに、そっと、綿菓子がふんわりほどけるように、空気をしずかに揺らすようにそっと尋ねると、
ユキは、まるで、しっぽを掴まれた黒猫のように、目を見開いて、ビッ、と、毛を逆立てるようにした。
あ、これは聴こえなかったふりをするな。
と、わかった。ユキは聴かなかった風に装って、
くるりとわたしに背を向けた。
細く、小さなユキの肩が強ばって見えた。