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67 それは そらのように


 青年は、明るく微笑んでいた顔を徐々に崩して、複雑な顔をつくると俯いた。俯くと青年のほつれ毛がほろりと顔にかかる。


 「ふふ、……君がこんな場所に来た、ということは、兄さんが僕に託したことを聞きに来たんだって、僕も解っているはずなのに、……どうも、君を前にすると、僕の心臓が早鐘のようになって――耐えきれなくなりそうだよ。――君は、血の繋がっていなかった僕の愛した姉さんにほんとうに瓜二つだ。――まるで、姉さんが生まれ変わってしまったかのように……はは、――君が、男の子、なんて、僕は信じられない……信じたくない、そう思えてしまう程には、僕は君に惹かれ始めているのに」


 「えっ」


 わたしは、俯いた青年の言葉の意味が上手く呑み込めずに、少し不安げな声を出す。青年は、私の声を聞くと理知的な額をくっともちあげて、ほんの少し上目遣いにわたしを見上げた。切れ長な青年の瞳は、最初の快活な印象も子供のようななつっこい印象の光もともさずに消えてしまい、ただただ、潤んだ熱のこもった視線を投げかける。


 そこまで口走って、青年は、そのまま形の良い手で頭を抱えるとそのままに顔を俯けた。青年のほつれ毛がぱらぱらと額に落ちて青年の顔に影をつくる。


 「……いきなり、すまない。――僕の時は、姉さんが居なくなってしまってからずっと止まってしまっているから。――君に会った時、――堪らなくなった……忘れて欲しい」


  ……そして、そのままに青年は話始めた。わたしの知らなかったそれを。

 わたしは、そこに張り付いたように動けない。その話を。

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