66.それは、空のように(9)
白い格子の窓枠から覗く、明るい緑色の色彩は、よく見ると、そのすぐ傍に設置された、窓枠と同じ高さのグラスハウスの中に植え付けられているようで。ぁ、と、思う。この感じ。……やっぱり、燃えてしまった家を彷彿とさせる。
計算されつくした、窓からの景観に、改めて、目を見張って。
白い格子状の窓枠に合わせたように、すこし青が混じったような白い籐の椅子に腰かけて、小さな丸いガラスのテーブルの上に青年は、熱い紅茶を置く。フルーティな香りの中に、甘いリンゴの甘酢っぱい香りが重なるように広がって、一気に、リンゴに囲まれてしまったみたいだ。
シンプルで小さなティカップには、美しい白百合が描かれていた。ガラスのテーブルの下にも、白百合は描かれていて。こんなところも、……やはり、燃えてしまった家を彷彿とさせて、わたしは、すこし、落ち着かない気になる。
「……ふふ、さ、どうぞ。僕は、どうも、甘い香りが好きみたいでね。紅茶は良いね。香りがとても豊富だから。……さて、……君からは、まだ何も聞いていないのだけれど……僕は、きっと君がどうして、ここに来たのか、……知っていると思う。……そして、君がたとえ名乗らなくとも、僕は、君がどういう人なのかを知っているよ。……君は、あまりにも、姉さんにそっくりだ。……面影どころの話じゃない。……まるで、姉さんの生き写しのようで。……これでは、……兄さんが、君に様々な思いを抱き、苦悩するのも解らないことじゃない。……僕ですら、……なのだから」
青年の言葉の最後の方は、小さくすぼみ、わたしには聞き取れない。
--けれど、そうか、とも思った。
--わたしは、それほどまでに……母に、そっくりなのか、と。
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