61.それは、空のように(4)
多恵、この手紙をとうとう、君は見つけてしまったのだね。……僕は、きっと、君がこの手紙を見つけてくれることを、恐れもしながら、待ち望んでもいたのだよ。……僕の、愛しい愛しい、……雪の忘れ形見の、……そして、雪の命を奪った男の命を分けたともいえる、僕の全ての君。
……僕の可愛くも愛しく、美しくも残酷な、苦しい存在であり続ける君。
……君は、嘘だと僕を糾弾するかもしれない。……けれど、とても、面と向かっては言えない……けれど、
このような形でしか、君には伝えることが出来なかった、臆病な僕の精一杯の言葉で
……僕は、君を愛していた。君は、僕の全てで、君は僕の全てをなげうってでも足りない、大事な君に、どうしても、言えなかった。……憎しみと愛しさの狭間で、……僕は、ずっと、苦しんでいた。
このような言葉を君に告げるのは、あまりにも、自分勝手なことなのだろう、けれど、
僕は、どうしても、君に
どうしても、君に謝りたかった。
僕は、憎みながらも、僕は、君を本当に、本当に愛していた。
それだけは、疑わないで欲しい。
それだけは、真実だと、君にはわかって欲しい。
僕も、そして、君の母、……雪も、それを、望んでいたのだから……。
……多恵、申し訳ない、
……僕は、……僕は、雪が今日、逝ってしまったことを、とても、胸に受け止めきれない。
……僕は、雪がいつでも元気でこちらに帰って来れるように、ずっとずっと、雪の場所を雪の好きな花で埋め尽くして、多恵にも、雪がそこにずっといるかのようにふるまって、……ずっと、雪の帰りを待っていたのに……。
……君は、もう、逝ってしまった。
……多恵、すまない、
君を見ていると、辛くてくるしくて、僕は、君を殺してしまいそうになる
誰よりも愛しい君に手をかけてしまいそうになる。
もう、こんな自分には耐えられないんだ。
……僕は、一足先に、雪の居る場所へ行くことにするよ。
多恵、すまない、
本当に、すまない
僕の全て。多恵、君をもっと優しく愛おしみたかった。
君を、本当に、僕は愛していた。